作品タイトル不明
194.ルギの力
194.ルギの力
「簡単には死なないでくださいよ、 地獄の濃霧(カオス・ミスト) !!」
ルギが地下空間に濃霧を発生させる。
それは吸血鬼が血液を毒素に変えて、フィールドの全てにダメージを与えるある種の反則技だ。
もちろん、
「≪状態異常耐性アップ≫≪全体化≫。気にせずつっこめ、フィ……」
「ぬおりゃああああああああああああああああああああ!!!!!」
俺の言葉を聞かずに、フィネは猪突猛進する。
「おおー、あの旦那様の支援があることを完璧に信じて一顧だにしない感じ、なかなか高得点なのじゃ! よしよし、通信簿には『優』としておくのじゃ」
「なんの科目にあたるのであろうなあ」
コレットとフェンリルはのんびりとした口調でやりとりしながらも、その行動は無駄のないものだ。
フィネがつっこんだことで、放っておけないとばかりに、キュールネーとソラも攻撃を仕掛けている。
コレットとフェンリルはそのフォローにとっさに回っていた。
キュールネーが体内魔力を本気で高め、
「ルギ、あんた帰ったら肩もみだからね! あと、欲しいブラウスがあるから貢ぎなさい!」
軽口をたたきながらも、その魔力は増大していく。
彼女もまたゲシュペント・ドラゴンの王族の家柄。その力は甚大なものになる。
「ソラ! あなたの考えた、なんでしたっけ? 暗黒竜殺劇波(ゲシュペンスト・カオス・トルネード) でしたっけ!? それをやりますわよ!!!」
「私が考えたみたいに言わないで! 暗黒をつけたのはあなたでしょうに!」
そして、ソラはエルフきっての秀才であり、セラの肝いりの少女でもある。
その二人がフィネのバックアップとばかりに、攻撃を繰り出した。
「そういう本気なところがいいですね」
「あなたの力が分からないほど馬鹿ではないの。侮らないでね、ルギ」
「そうです! とりあえず叩きのめして、バケツを持って廊下に立たせます!」
「そうですね」
彼は微笑んでから、
「僕が邪魔な敵を全て排除したら、きっと平和な学校生活にまた戻れるでしょう。もう誰も死なないし、傷つかない。そんな世界が来るはずです。だから」
ルギは笑みを消すと、
「あなたたちは少し僕の影の中で遊んでいてください。安心してください、痛いのは一瞬ですよ」
その言葉と同時に、彼から伸びていた影が不自然に広がり始めた。戦闘による閃光が彼の影を揺らめかしたように見えたが、
「遅い! 隙だらけよ!!」
キュールネーたちが同時に魔法を発動する。
しかし、
「「あれ?」」
「取り込まれるぞ、キュールネーよ。お主が死んだらフレッドが悲しむじゃろう?」
「攻撃時が一番隙ができるゆえなぁ、よく覚えておくとよいのう、ソラよ」
コレットとフェンリルが魔法を放った彼女たちを背中に乗せて、一瞬にして大きく後退していた。影の範囲から外れている。
「あれ? 私たちのかっこいい攻撃魔法は……」
「キュールネー、お主、気に入っとったんじゃな」
コレットが苦笑しつつ、
「あの影に食われてしまったようじゃな。しかし、あの影の先はなんじゃろうか」
「さてなぁ。だが、我はつい最近、似たような光景を見たような気がするの。のう旦那様」
「いや、あれは邪神のような次元を操るものとは違うだろう。もう少し厄介なものだ」
何はともあれ、
「フィネ! お前の攻撃は届く! 一発くれてやれ!!!」
「まっかせろおおおおおおおおおおお!!!」
ルギの攻撃を全員で相殺し、フィネを無風状態でルギのもとに到達させることに成功する。
「力のないあなたに何ができますか?」
「だから言ってるだろ!! さっきから!! 何度も!!」
パーン!!!!!!!!
「え?」
一瞬の沈黙が地下神殿に広がる。
俺の最上級のスキルも、コレットやフェンリルたちの神がかった支援も、そしてキュールネーたちの攻撃も関係ない。
ただ、フィネは最初に宣言した通り、
「さあ、目が覚めたかよ! ルギ! こんな変なとこにいないで早く帰ろう!!」
一発とにかく殴って、目を覚まさせようとしたのである。
「ま……」
これにはルギも目を丸くして、
「まさか、本当に、一発殴るためだけに命がけでつっこんでくるなんて……」
そして同時に、
「ほう……。人と魔族が……。これもアリアケが作ったものか」
ワイズ神の影が何やら呟いていた。
ルギは続いて口を開き、
「フィネ。僕は……」
彼が真剣な表情の彼女に声をかけようとした。
その時である。
「いつまでそんな雑魚どもを相手に遊んでおる。穢らわしい器よ」
神殿の奥より、一人のでっぷりとした老人が、罵声を轟かせながら現れたのである。
それは、
「教主様……」
「ジャルネルか。くだらぬが、これもまた必要な儀式か」
なにごとかを、ルギとワイズ神はつぶやいた。
現れたのは教主ジャルメル・ギルメイザー。
ワイズ教の最高位であり、
「さあ、早く彼ら邪魔者をくびりころせ。儂を高みへと導くが良い」
人の欲望を凝集した忌まわしき存在であった。