軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

196.使徒ビビア

196.使徒ビビア

地下神殿の暗がりより突如気配なく現れ、俺を攻撃してきたのは、

「ビビアか」

「なれなれしく俺の名を呼ぶんじゃねえ! この人間風情がぁ!!!」

「人間風情?」

唇をいやらしく歪めたビビアの攻撃を、とっさに弾いた俺は疑問を口にする。

ビビアは不意打ちという機会を逃す。とはいえ、追撃の絶好のチャンスに見えたが、なぜか俺の疑問に饒舌に答えはじめた。親切心だろうか?

「ああ、そうだぁ、俺は今、神に使える身。たかだか人間の王ごときが選んだ『勇者』なんてものを超えた存在。使徒ビビア・ハルノア様になったんだからなぁ! ゆえにいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

彼は血走った目をしつつ、唾を飛ばす。

「お前らみたいな下等生物の上位存在になったわけだ! くはっ! くはははあははあは!!! ひざまづけ! 神の前にひざまづけえええええ!!」

まるで狂ったかのように叫ぶ。

「どうやら、操られて理性を失っているようだな」

俺は彼の狂態を見てすぐに判断する。

「いや、旦那様、そうじゃないと思うのじゃが?」

「我も同意見よのう。元からあんなもんだったと思うがのう。ちょっと力を与えられて、図に乗っておるだけに見えるが……」

「信じられない気持ちも分かるが、仮にも勇者だ。力に溺れたからといって、あそこまで落伍する訳があるまい」

「「……」」

二人は理解してくれたようでそっと目を閉じて首を横に振る。

「誰が落伍者だ!!! 神の御使い! 偉大なる存在だと言ってんだろうがぁ!!! おおおおおんんん!!!!???」

まるでただの荒くれ者だ。これほどまでに理性を失っているとは、

「視界に入れるのもはばかられる……」

「なにげに先生の言葉が一番辛辣なような気もしますけど……」

キュールネーがなぜか苦笑していた。

そんな俺たちのやりとりには構わず、ビビアは改めて唇を歪めて言った。

「まぁ、俺の力に驚くのも無理はねえ。今や俺はワイズ神様の加護を受けた、神の御使い。そして、教主ジャルメル様はこれから神になられる存在だぁ。ジャルメル様が神になった暁には、俺もその働きを評価していただき、ゆくゆくは教主の座を継ぎ、そして将来的には俺も神になるのさ!!」

「お前、神になるつもりなのか?」

「そうだ! 俺こそが神に相応しい! 俺の格を考えれば、勇者なんて身分でおさまるもんじゃねえ! ひと昔前は、殊勝にもグランハイム王国の王になることを画策してたが、そんなしょうもない身分は俺には不相応なことは自明! 神! 神だ! 神の身分こそが俺に相応しい!! すべての人間、種族が俺のもとに跪き、崇拝の言葉を捧げるんだ。んんんんんんんんんんん! たまんねええええええええええ! くはあああああああああああああ!!」

使徒ビビアは興奮しきった様子で、まくしたてた。

「使徒ビビアよ! もう口上はいいであろう! ここでの働きで、儂が神になった後に、お前の扱いが決まる! 魔族と和解した今、勇者の地位は、地に落ちた。しかもこれまでの悪評のせいで、歩けば石を投げられ、罵倒の声を聞く日々。そんな毎日から救い上げ、しかも神になるチャンスまで与えた儂の厚意に今こそ報いる時だぞ!」

「ぐぎぎっぎぎぎぎっぎいいいいい!!! そうだ! 俺様を不当にしか評価しない社会なんて壊してやる! そして! 新たな世界を神となった俺が作りなおしてやるんだ! そのためには! アリアケえええええええ! お前が邪魔なんだよおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

使徒ビビアは、凄まじい連撃を俺に向かって繰り広げてきた。

俺はスキルを使って、その猛攻をしのぐ。

「ほう。確かにいつもよりも技のキレと威力がある。ルギの力も著しく増大しているが、それと同じものを摂取したか、ビビア」

「はーっはっはっはっは! そうだぁ! 神の雫(ソーマ) を摂取した俺に、今や敵はいねえ! 誰にも負けねえ! アリアケ! お前にもだ! いつも偉そうにしやがって、絶対に許さねえぞ! 許さねえ! 積年の恨み、くらえええええええええええええええええええ!!!」

ビビアは聖剣を振りかざしながら絶叫する。

「超必殺の一撃いいいいいいいいいいい!!! 神撃究極乱舞(ゴッドロンドミア・ワルツ) ぁあああああああああ!!!」

神の加護を受けた、必殺の攻撃を放つ。

「一撃ではないだろう? 乱舞なのだから」

「うるせええええ! くたばれ! くたばれ、アリアケ・ミハマ!! 無に還れえええええええええ! この疫病神があああああああああああああ!」

「旦那様!」

「主様!」

「せ、先生!!???」

使徒ビビアの必殺の一撃が俺へと届こうとする。

それはいみじみくも神の加護を受けた一撃。

万能たる俺に相応しい究極の攻撃といえるだろう。

だが、

「あっぶなーい! アリアケえええええ! おっらああああ!! 死ねコラああああああああああああああ!!!!」

「ひげぶええええええええええええええええええええええ!!!!」

俺への攻撃に一点集中していた使徒ビビアの死角から、

『≪祝福された拳≫極拳! ≪ 火流星の渦(メテオ・シュトローム) ≫!!!』

『 世界崩壊(アザエル・) 狂熱地獄(インフェルノ) !!』

『ハァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアド・アタック!!!!!』

ゴーレムすらも粉々に粉砕するであろう、重たい一撃が同時に降り注いだ。

その攻撃を受けて、ビビアは胃液を吐き散らしながら吹き飛ばされ、地をえぐるようにすべり、最後は神殿の壁に激突して止まった。

「う、うげええええええええええええええええええええ」

だが、攻撃の衝撃は内臓へ多大なダメージを与えたのか、壁に激突した後も、激しく、また情けなく餌付いた。

涙とよだれをとめどなくこぼしながら、恨みがましい怨嗟の声を上げる。

「で、でべえだぁああああああ……あああ……あああ……」

そして、憎々し気ながらも信じられないものをみたかのように目をみはり言った。

「なんで裏切りやがっだあああああああああああああああ!!!!」

絶叫する。

「でりああああああ! ぶららあああああああああああ! え”っえ”っ」

彼は息もたえだえになりながら、

「エルガアアアアアアアアアアアアアアア」

そう叫んだのだった。

そう、ビビアの不意を突き、ボロボロの状態へと追い込んだものたち。

それは、

「ふ、待たせたな」

「ビビア、助けに来たよ!」

「仲間のピンチですもの。助けにくるのは当然ですわ」

かつての、勇者パーティーの仲間たち。闇に堕ちようとする勇者を救いに来た本当の英雄たちであった。