作品タイトル不明
188.お傍付き達のコミュニティへの参加条件が解放されました!①
188.お傍付き達のコミュニティへの参加条件が解放されました!①
さて、俺は俺なりの方法でロベックス大神官に神罰を下した関係で、衛兵の詰所で詰問を受けることになった。
だが、子供を殴ろうとする大人を止めることにいささかの躊躇もないし、後悔もない。
よって、このような詰問は俺にとってはどこ吹く風だ。
「では、暴力を振るったわけではないというのですね? アリアケ神官は?」
「もちろんです。暴力はワイズ教にて最も忌避されるべき行い。敬虔なる信徒たる私がそのような行いをするはずがないでしょう? むしろ何をもってそのようなことをおっしゃられるのか、逆に問わせていただくこともできますが、どうか?」
「い、いや……。しかし、ロベックス大神官の怯えようは何かあったと思わざるをえません。それを証言していただかなくては」
「彼なりの啓示を受けたのではないでしょうか?」
「は? 啓示ですか?」
目を白黒させる衛兵に、俺は語る。
「当時は不可解な霧が出ていたのでしょう?」
「え、ええ。門番からも突然霧が発生し、馬車から飛び出したアリアケ神官と、ロベックス大神官の間に何があったかは見えなかったと聞いています……」
「ならば、それが答えだ。あなたがたには分からないのか?」
「は?」
衛兵が首を傾げる。俺は彼らの思考がまとまらないうちに言葉を紡ぐ。
「私はロベックス大神官様に、何か見覚えのない虫がまとわりつくのを見て取り、慌てて馬車を下りたのです。そのことは無論、何ら問題のない行為でしょう。しかし、私が駆け寄った瞬間、唐突に濃霧が発生して、私も何が起こったのか分からない状況になった。気づけばロベックス大神官は怯えた様子を見せていたのです。おそらくですが、神の啓示を受けられたのではないか。あの虫は神の御使い、あるいはその予兆だったのではないか? 私はそう直感しています」
「み、御使いですか?」
「そうです。彼の普段の行いに呼応し、神が何かしらの啓示を彼に与えたのでは? その内容が何かは大神官に聞かねば分からないことですが、無論、それを問いただすことは神の怒りに触れることでしょう。ですが、彼が沈黙していることが啓示の内容を踏まえたものだとすればどうでしょう?」
「アリアケ神官。その神とはやはり……」
「名を呼ぶのは不敬にあたりましょう」
「なるほど。神の接触があったとおっしゃるのですね……」
「ええ。さすが大神官様です。無論、私のなど一介の神官にその内容をあずかり知ることは出来ようもありませんが、あれほどの怯え……。相当の神の御意思に触れた結果であると推察すべきだ」
「ともなれば、我ら衛兵がとかく言うべきことではありませんな。ロベックス大神官様も、その神の御意思に触れて、今や畏敬の念にかられ、ベッドで震え続ける始末だ。『話せば命はない』などと言っておられる」
「ふむ、まさに神のご意向ですな。また、彼が話さないと言うならば、私も、そしてあなたたちもこのことは胸に秘めておくべき事柄と言えましょう。何せ神のご意向がそうなのですから」
「わ、我々もですか? しかし、職務上報告を……」
「ふむ。あえて神意に反するというわけですか。結構。ならばあなたたちは異端審問にかけることとしたい。職務に殉じ、殉教するのもまた、ワイズ教信徒の生き方の一つだ。俺はそのことを非難しようとは思わない」
俺が微笑みながら言うと、
「い、いえ!!!」
衛兵は慌てた様子で首を振ると、
「神の御意思に逆らうつもりなど毛頭ありません。アリアケ神官のご説明で納得致しました。深淵なる神の御意思であるとは思いもよらず、大きな過ちをするところでした、お許しください」
「無論だ。ご存じの通り、神は過ちを認めるものを許す寛容さをもっている。あなたたちの職務の忠実さに微笑まれているでしょう」
俺が改めて微笑むと、衛兵たちも緊張した面持ちから、やっとぎこちない笑みを浮かべるのであった。
(しかし、まだロベックス大神官は寝込んでいるのか)
ちょっと脅し過ぎたかな?
ともかく、こうして連行された俺は、衛兵の詰所から解放されて、やっと自分にあてがわれた部屋に来ることができたのであった。
「戻ったぞ」
「早い!? 上級神官一人をボコボコにしたはずですよね!?」
フィネが驚愕の表情で俺を見るが、
「そうだったか? 神の神罰が下っただけだ。いわば神意なんだから、俺たちがとやかく言われることじゃないだろう?」
「神とは主様のことだろう?」
「確かに旦那様は神様よりももっと偉い存在じゃからなぁ」
「まぁ、別に神なんぞに興味がないがな」
俺はその話題をささっと終わらせると、
「あの少女は無事だったかな? 結局名前も聞かないうちに衛兵が来てしまったが」
「テールです」
俺の言葉にすぐに答えを返してくれたのは、孤児院出身のミハイルだった。
「顔見知りで、小さいときに一緒でした。優秀な少女でしたから、ちゃんとお傍付きとして上級神官に仕えることが出来たのでしょう」
「あんまり愉快な職場ではなさそうだけど」
キュールネーの言葉に、ミハイルは苦笑を浮かべるのみだ。
「でも、驚きました! いきなり子供を助けに飛び出すなんて!」
エルフのソラが腕を腰に当てて言った。
「ダメだったか?」
「いえいえ! もうなんというか、自分の常識が一瞬にして崩壊したので、評価不能と言う方が正しいです。でも、セラ姫がファンクラブ会長になった理由も分かった気がします!」
「そのファンクラブ、俺は全然認可していないが……」
といちおう前置きをしつつ、
「案外、ああいう人助けというのは大事なんだ。特にこういう新しい環境下では。でないと、アレが手に入らないからな」
「アレとはなんじゃ、旦那様? のじゃのじゃ」
コレットが首を傾げているので、俺は微笑見ながら言った。
「一言でいえば『情報源』かな」
「さすがアリアケ先生、深謀遠慮ですね」
「いや、別に計算してやったわけではないがな。あれは、正直勝手に体が動いた」
「うむうむ、分かる、分かるのう。我もうっかり孤児たちを助けてしまったからのう。やってしまってから、どうしようか考えたのう。うははははは」
「賢者パーティーなのに賢者っぽくない!」
フィネがつっこむが、俺は笑いながら、
「だが、善意は人の輪を広げる。個人の力がどうこうよりも、よほど強力な力だ。さあ」
俺は絞められたドアの方へ呼びかける。
「入ってくるといい。さっきも言ったが、名前も聞けていなかったからな」
俺がそう言うと、そっとドアが開いた。
そこには一人の少女が立っていた。
「あっ! あんたはさっき上級神官にいじめられてたっ……!」
フィネの声にびくっとしながら、
「助けて頂いてありがとうございました。神官様。ロベックス様が寝込んでいるので、御礼だけでもと思い、無礼を承知で伺わせて頂きました。あの……。あの時は本当に助けて頂きありがとうございました」
少女はおどおどとした様子で頭をぺこりと下げると、
「自己紹介が遅れて申し訳ありません。先ほどそちらのミハイルから聞いたと思いますが、私の名前はテール・ミル。ロベックス様のお傍付きです。そして」
彼女はそう名乗ってから、俺を見てから、
「お傍付き同士のグループの一つに所属させて頂いております」
と、そう言ったのであった。