軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

187.とりあえず子供に手を上げる神官をボコボコにするアリアケであった

187.とりあえず子供に手を上げる神官をボコボコにするアリアケであった

一旦、振り上げられた腕をねじりあげたが、大層な悲鳴を上げたので、手を離してやる。

「大丈夫か?」

「は、はい。あの、あなたは……えっと」

少女は10歳にも満たない子供だった。姿はみすぼらしく、ボロを着ている。

見たところ、今まさに俺を見上げ恨みがましい目を向けている神官の傍付きか?

「き、貴様! どの派閥所属の神官か知らんが、この私が誰か知っているのか!?」

と、少し考え事をしていると、地面にしりもちを付いていた男が青筋を浮かべながら立ち上がった。

表情は冷静さを装い、なんとか引きつった笑みを浮かべているが、内心で俺への殺意が蠢いていることが分かる。

「知らん。誰だ?」

「上級神官のロベックス様だ! お前ごとき普通神官が口をきくのもはばかられる存在なのだぞ!」

そう言うと、彼は余裕を取り戻したようだ。

自分の立場を思い出して、心の平穏を取り戻したのだろう。

「そうか。俺はアリアケ。普通神官だ。虫を取り除こうとしただけで他意はない。あと、子供には優しくしろ。分かったな?」

「なあ!?」

おっと、

自然と指示するような口調になってしまった。

だが、こういう不出来な存在をただすには、しっかりと正義が何かを伝えた方が良い。

「上級神官の私に向かってっ……!!!」

「階位など今は問題にしていない。人として正しいかどうかだけを問うている。子供に手を上げようとした。もとい、虫がついていたのでそれを取り払った俺に対して、お前のような存在が文句を言える筋合いはない。この理屈は分かるな?」

「先生って言う時ははっきりですね。ソラも見習わないと……」

「いや、あそこまですごいと逆に尊敬するわ~」

門に残した生徒のソラとフィネの声が聞こえた。

(いや、単に道理を説いているだけなのだが?)

俺が首を傾げていると、

「もう許さんぞ! ワイズ神よ、力を与えよ! この者に天罰を!! うおおおおおおおおおおお」

ますます激高した上級神官ロベックスが襲い掛かってきた。

どうやら、神聖力で強化した物理攻撃のようだ。

無論、当たってやる道理はない。というか、これを利用しない手はないな。

『ドンガラガッシャーン!!!!』

「ぐええええええええええええええええええ!??!?!?」

野太い声が響いた。

奴は建物の近くに置いてあった樽や木箱に突っ込んで、美しかった聖衣をボロボロにしていた。

「ははは、自分からこけて阿鼻叫喚とはどういう了見だ? お前には適度な運動をすすめる。それに聖職者より、大道芸のほうが向いているぞ。さっさと転職するといい」

「お、おのれえええええええええええ!!!」

「スキル≪ダメージ反射≫」

「んがああああああああああああああああああああああ!?!? い、いだい!! あ……あ……あ……」

バタリ……。

ダメージ反射で、奴の強化された俺の顔面への拳の一撃を、そのまま跳ねかえした。

案の定、奴はそのまま気絶してしまう。

「あ、あの助けてくれて、ありがとうございます。でもすごい。あんなにあっさりと上級神官様を……」

「いや、相手が勝手に倒れただけだ。君も見ていただろう」

「あー。は、はい。た、確かにそうでしたね。あ、あの、あなた様は……?」

少女が疑問符を浮かべている間に、他のメンバーも追いついてくる。

「なっ、キュールネーよ。儂の旦那様はかっちょええじゃろ!」

「ドラゴン並みの苛烈さですわ。コレット先生が惚れた理由もよく理解できました」

「じゃろ~♡」

「それよりどうするんですか? まだ寮への入居も済んでいないのにこんな騒ぎを起こしては、問題になって追い出されるのではないですか?」

「まぁ、それは問題ないさ。スキル≪サイレンス≫、スキル≪濃霧(範囲小)≫。おい、起きろ」

「ん……ぐ……あ……」

上級神官は涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔を上げると、俺の顔を見た。

悲鳴を上げようとするが、パクパクとするだけで、その声は出ない。そのことで更に混乱し、先ほどまでの激高は嘘だったかのように、今は俺を畏怖する対象として見ていた。

「どうやら、ショックで失語症になってしまったようだな。しばらく『療養』が必要なようだ。なぁ、ロベックスよ。俺の言うことが分かったら一度頷け」

俺の言葉に、ロベックスは恐怖のあまり何度も頷く。

まぁいい。

「今度子供に手を上げるようなことがあれば、獣の餌にする。なぁフェンリル?」

『ぐるるるるうるるるっるるるるるるうう』

「!??!?」

目をむいて恐怖の色を瞳に浮かべる。

「安心しろ。言葉を失ったお前の悲鳴は誰にも聞こえない。一人静かに神獣の餌になるんだ。良かったな」

「!?!?!?!?!?!」

濃霧の範囲の中では、視界不良で遠目からは何が起こっているか分からない。

フェンリルは本来の姿をさらして、大口を開く。

「!?!?!?!?!?!!??!?!?!(ガクリ)」

それが自分を咀嚼する様をまざまざと想像できたロベックスは、情けないことに体中の体液を漏らしながら気絶したのだった。

「気絶する姿まで醜悪だな……、まったく。うん、もういいぞ、フェンリル」

「そうかえ? まぁこのような者は喰らいたくもないがのう」

「ははは。暴力反対だ。平和に行こうじゃないか」

「平和ってなんだっけ? ソラ知ってる?」

「私も混乱しているので、キュールネーさんにお譲りしましょう」

「無理難問を押し付けないでちょうだい、ピノに譲るわ」

「暴力~はんたーい! でも必要悪かも~」

生徒達が困惑したり、好き放題言っているが、さて。

「スキル解除と。さて、そろそろ衛兵が来るだろう。門番たちからは、一瞬の出来事だ。スキルも使用したから、何が起こったかよく分かっていないだろう。的確な証言は出来ないはずだ。適当に話を合わせてくれれば問題は起こらんので安心しろ」

「うむうむ。なかなか幸先の良いスタートじゃな! 旦那様のかっちょいい姿を見れたのじゃ!」

「そうよなあ、しかも、子供を一人救えて何よりであるなぁ」

コレットとフェンリルはニコニコと上機嫌で答えた。

「賢者パーティーって、やっぱすげー」

霧が晴れボコボコになって失禁している神官の姿が現れた異様な光景を見ながら、フィネがちょっと引きぎみに言うのだった。

そして、まもなく衛兵がかけつけた。