軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

79.鑑定士、巨大化したイオアナと戦う

ユーリと昼食を食い終た直後。

レーシック領内の草原にて。

「……なんだ、あれは?」

最初それを見たとき、俺は新しい山か何かかと思った。

だがその山は、突如動いた。

ドドゥッ! ドドゥッ!

山は頂上から、何かを噴き出したのだ。

『……アイン君。敵』

アリスの【千里眼】が発動していた。

俺は精霊の剣を出現させる。

『アインよ。敵は溶岩を射出しておぬしを攻撃した。精密射撃の能力を持っているらしい。逃げても意味が無い』

アリスの千里眼が、攻撃が着弾する未来を見せてくれる。

敵の放った溶岩は、かなりの……いや、とてつもない大きさだった。

溶岩1つで、ベヒーモスやヒュドラなどの、古竜と同じ大きさを持っていた。

『どうやらあの巨大な山は、魔族イオアナのなれの果てらしい』

「どういうことだ?」

『わからん。ゾイドの時と同様、隠蔽の術式が施されてるようじゃ』

ようは、敵はイオアナってことか。

『そろそろ敵の撃った溶岩が来るぞ』

頭上から古竜並みにデカい溶岩が、降り注ぐ。

思った以上に早かった。

俺は剣の腹で、溶岩を弾く。

パリィイイイイイイイイイイイイン!

精密射撃の能力が発動。

弾き飛ばした溶岩は、 山(イオアナ) めがけて飛んでいく。

ずずぅー………………ん。

『まるでダメージが通っておらぬ。どうやら体表が岩のように硬くなっているみたいじゃ』

そのとき、俺の脳内にイオアナの声が響く。

『どうだ見たか! ボクのこの威容! この巨体! まさしく強者にふさわしい姿だと思わないかええおい!?』

アリスが【千里眼】を発動。

今のイオアナの姿は、肉が極大までに膨れ上がり、山になったようなイメージだ。

山肌には血管や内臓が浮かび上がり、所々できもののようなものがあって、ボコボコしている。

『ごらんよこのあふれんばかりの闘気を! さっきの溶岩攻撃にも闘気が乗せてあるんだぜ!? 一撃で国が滅ぶほどの衝撃を起こせるんだ!!』

狂ったようにイオアナが笑う。

『劣等種が! 魔族を越え、神に等しい力を得たボクの実力を、思い知れ!!!』

俺は天竜からコピーした【高速飛翔】を発動。

ふわり……と体が浮く。

『アインよ、どうやらイオアナは溶岩攻撃を放つようじゃ。地中の溶岩を使っているから無限に攻撃してくる。注意せよ』

俺はうなずいて、 山(イオアナ) めがけて、高速で飛翔する。

『ハエが! 燃え死ね!!』

ドバァアアアアアアアアアアアアア!

山頂から、溶岩が噴き出す。

それは放物線を描き、俺目がけて飛んでくる。

『飛んでくる無数の溶岩を! 避けられる物なら避けてみなよ!』

俺は剣に闘気を込める。

【斬撃拡張】を使用。

高速で飛翔しながら、俺は渾身の一撃を放った。

ズッバァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!

闘気の乗った斬撃は、雲を切り裂いた。

上空に無数に飛んでいた溶岩群。

飛翔する斬撃が、その全てを飲み込み、消し飛ばした。

『はぁあああああああああああああ!? な、なんだよそれぇえええええええ!?』

イオアナが驚愕している。

俺は構わず、山となったイオアナへ向かう。

『く、来るな! 来るな来るな来るなぁああああああああああ!』

ドドゥッ! ドドゥッ! ドドゥッ!

イオアナが連続で、噴火を起こす。

だが数を増やしたところで何の意味も無い。

俺はまた闘気の乗った剣を振る。

ズバンッ! ズバンッ! ズバァアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!

飛翔する斬撃は、溶岩の全てを消し飛ばす。

「どうした? 他に攻撃手段はないのか?」

『う、ううぅうるさぁあああああい!』

バカの一つ覚えのように、イオアナが溶岩を射出する。

「ああ、そうか。おまえそんな体じゃ、他に何もできないのか」

『黙れ黙れ黙れぇええええええええ!』

ドドゥッ! ドドゥッ!

ズバンッ! ズバァァアアアアアアアアアアアアン!

俺はヤツの攻撃を、すべて見切り、消し飛ばした。

ややあって、俺は山となったイオアナの麓までやってくる。

「これで完璧に詰み、だな」

この間合いで溶岩による遠距離攻撃は、できない。

山になったイオアナは、移動することができない。

『これで勝ったと思うなよぉ! ボクにはまだこれがあるんだぁ!』

その瞬間……。

ドッガァアアアアアアアアアアアアン!

大量のマグマが、噴火口から吐き出される。

ドロドロになったそれは、山肌を走りながら、俺に押し寄せる。

『溶岩の温度は軽く1000度! チリも残さず消えちまいなぁああああああ!』

凄まじい速さで、マグマが麓に居る俺へと押し寄せる。

『逃げてもいいんだぜ!? この領地にすむ全員をマグマで皆殺しにするだけだけどなぁ!』

俺は精霊の剣を仕舞う。

片手を天に伸ばし、【準備】をする。

「……ここのみんなはさ、ユーリに優しくしてくれるんだ。村の子供たちは、みんなユーリの友達なんだ」

俺の手のひらに、莫大な量の魔力が集まってくる。

魔法を発動してないのに、俺の周りが凍り始める。

「正直俺は領主としての自覚なんてほとんどない。けどな……」

俺はイオアナをにらみ付けて言う。

「俺の大切な人を、大切にしてくれる人たちに、手は出させない」

『氷の魔法かっ? ハッ……! やってみろ!? ボクはマグマに闘気を混ぜた! 魔法なんて絶対効くもんか!』

だろうな。

だから……俺は左手を天に突き出す。

闘気を……魔力に、混ぜる。

闘気は体だけでなく剣も強化できた。

当然、魔法も闘気で強化できる。

詠唱を破棄し、俺は【極大魔法】を発動させた。

「【 絶対零度棺(コキュートス・ゼロ) 】」

その瞬間……周囲一帯が、凍り付いた。

森まるごと、山まるごと、そして、噴き出した大量のマグマ……まるごと。

あっという間に、辺り一面が氷の世界となった。

「これで自慢のマグマ攻撃は、俺には効かない。もう溶岩も射出できない。俺の勝ちだ」

『ふっ……ふざけるなぁあああ!!!!』

イオアナが狂ったように叫ぶ。

『ぼ、ボクは人の形を捨て最強になったはずなんだぞ!? なのにどうして!? こうまでしてボクはおまえに勝てない!?』

俺は精霊の剣を取り出す。

「簡単だ」

闘気を、剣に纏わす。

今まで屠ってきた、大量の魔族たち。

そいつらから吸い取った、膨大な量の闘気を……この一撃に込める。

「おまえが、 人(おれ) を 侮(あなど) ったからだ」

俺は、剣を、凍り付くイオアナめがけて、振り下ろした。

ズッバァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

闘気を纏わせた斬撃は、黄金色のエネルギー波となって、イオアナを完璧に飲み込む。

斬撃が通った後……そこには、草も、木も、そして、山も。

何も、残っていなかったのだった。