軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第16話 皇帝レインアルドとは

ちょうど、太陽が中天から傾き始めた頃に、ラスデニア帝国の皇帝が乗った馬車が、王城ティラメイスに到着しました。

予定より大分遅れています。

馬車が止まり扉が開かれ、私はライラの手をとって降りました。

大きなざわめきの声に視線を上げると、見覚えのある兵たちがいます。

南の戦線で指揮官をしていた者たちですね。

今は階級が上がり王都勤務になったと耳にしています。

おそらく私が、ラスデニア帝国の皇帝が乗る馬車から出てきたことに驚いているのでしょう。

そして私の後からリヒトが降りてきました。

「ラスデニア帝国の皇帝陛下自ら足を運んでくださるとは、恐悦至極に存じます。私はこの国で宰相を務めております。ディレイス・マストーリアと申します」

宰相と名乗った者の姿に私は目を細めて見ます。

姑息な手を使いましたわね。

「ほぅ。お前が宰相か?」

温度が感じられないリヒトの声が背後から聞こえてきました。思わずビクリと肩が揺れます。

これが噂の人の心がないと言われているレインアルド皇帝陛下ですか。

……私と話しているときと全然違うではないですか!

それは皆さん目を丸めて二度見しますわよ!

「は……はい」

「おかしなものだ。私の記憶では別の者だったはずだが?」

「……ぜ……前任の……ファルグレド元宰相は心労で倒れ療養中のため、代わりに私が宰相を拝命いたしまいた」

……拝命ですか。誰からと聞いていいかしら?

でも、こういうことをする人物は一人しか思い浮かびませんが。

「まぁいい、さっさと案内をしろ。時間が惜しい」

「は……はい!」

あの?思いっきり時間を無駄にしていましたが?

案内するように言う、リヒトに手を繋がれ王城の中に入る私。え?これ、手を繋ぐ必要あるのですか?

そんな私に王城に入ったところで声をかける人物に足を止められてしまいました。

「セレスティア第六王女様はこちらに」

王妃ヘラメイラ様の侍女ですか。

どうしても私に第二王子の治療をさせたいのですね。

「クオン」

「はっ!」

皇帝の行く手を阻んだ侍女は、皇帝の護衛であるクオンの剣により物言わぬ姿になってしまいました。

それを目撃した者たちから、悲鳴やざわめきが立ち上ります。

「レインアルド皇帝陛下。無用な死はお止めください」

ここで剣を振るってしまえば、帝国への憎悪は更に増してしまいます。

「私の時間を奪う者に、価値があると?」

リヒトが冷たい金色の瞳を私に向けてきました。

あの? だから皇城内でもこの姿で良かったのではないのですか?

「失礼いたしました」

私は、軽く頭を下げ謝罪する。

皇帝に逆らわないという意を示すためです。

すると、何故か右手がギュッと力を込めて握られました。

なんですか?

視線を上げるとリヒトとはもう視線は合わず、先に進むリヒト。

手を引っ張られ歩く私は、意味がよくわからず、視線を足元に向けて前に進むのみでした。

通された場所は謁見の間と呼ばれる広い部屋でした。

壇上にはこの国の国王が座す玉座があり、その背後には王家を示す獅子の紋章が入ったタペストリーが壁に飾られている……はずだった……のですが……。

私の目には帝国の紋章の竜のタペストリーが飾られているのが映り込んできます。

これを見て、本当にテターニア王国は帝国の手に落ちたのだと思わされました。

そして何故か私は玉座に座る皇帝の隣に立っているというおかしな位置にいます。

了承はしましたが、これはおかしいです。

私の眼下には冷たい石の床に伏して頭を下げている王族の方々の姿があります。

その周りには帝国の兵たちが囲っているのです。

絶対に私はあちら側ですわよね。

そんな私を睨みつけてくる者がいます。

厳つい鎧を身に着けた大男です。頭を覆うフルフェイスを被っていないので、その眼光の鋭さがビシビシと突き刺さってくるのです。

しかし、何かうらまれるようなことをした記憶がないのですが、これはよく目にした私を嫌っているという者の目です。

「カイヴァザール将軍。この度の勝利は貴殿の活躍によるものだと皇帝陛下も大いに称賛されておられた。この貢献に準じ伯爵の地位と、ハメスレアドの地を与えることとする」

えっと、誰だか知らない方が、その私を睨んでくる男性に褒美を与えると言っています。

しかし、称賛するほどリヒトがこの将軍の名を出していた記憶がないのですが。

「はは! ありがたき幸せ!」

床に跪き頭を下げるカイヴァザール将軍。

その背後ではプルプル震えている赤いドレスを身に着けた女性がいるのです。

あの? リヒト、そろそろ王妃ヘラメイラ様の限界のようです。

凄く不満そうな気配を放っています。

しかし、夫である国王陛下と息子の王太子が亡くなったというのに、赤いドレスを身に着けているとは、私は感心してしまいました。