作品タイトル不明
第14話 居場所がない第六王女
第六王女は王族ではない。
この言葉を言ったであろう人物は誰か予想できます。
王妃ヘラメイラ様。
それが貴族の中で周知の事実となるには、さほど時間は掛かりませんでした。
「それ、私の功績を妬んでのことです」
「そのように私も理解しております」
私が五歳のときに、父王からもらった荒廃した土地が、たった五年で穀倉地帯に変貌したのです。
それは戦線を支えるほどにまでなりました。
この功績は父王には喜ばしいことでしたが、王妃ヘラメイラ様には面白くないことでした。ええ、当時第一王子の母であり、第二王子の母だったのです。
次期王位を継ぐ者がそのような功績をあげていれば、王妃様もさぞ喜んだことでしょう。
しかし、後ろ盾がない第六王女。それは不快だったでしょうね。
やることがなくなって王城に戻った私は、王妃様の不要なほどの呼び出しに応えなければならなかったのです。
直接的には何もせず、言葉や他の者たちをつかって責めたてるのです。
クスクスと笑う声が耳にこびりつくほど。
なので、私は遠く離れた南の戦場に逃げたのですけど。
冬は寒いからと王妃様は王城から離れるので、そのときに王都で私の商会の商品を大いに売り出すというのを繰り返していたのでした。
「ですが、ティア姫の功績をよく思わない者が多いのではないのですか?」
「ええ」
第六王女など気にせずに放置しておいても問題ないといいますのに。
「しかし、私に何かしてくる者などいませんよ」
幼い頃の第一王子と第二王子で懲りたので、致死的な行為や悪意を持って近づく者は、そもそも私に近づけませんし、事故を装っても無駄に終わるのです。
昨日のように、ただ閉じ込めるという行為は、危機回避と致死の反転の隙間に入るのです。
例えばふと思い立って、この背中を押せば階段から突き落とせるのではという思考に落ちれば、致死の反転の影響を受けるのです。
ですが、閉じ込められるのではとなれば、致死に当たらないので、昨日のような状況になるのです。
「言葉というものはときに凶器にもなるのですよ。それに先日のように、ワザと敵意がある者の前にでていくかもしれませんからね」
「……」
これは私の構築した魔法条件の隙間です。
私がその意思をもって、自ら動いた場合は忌避回避は起こらないと。
そこまで見抜かれていましたか。
私は大きくため息を吐き出し、両手を上げます。
「敗戦国の者である私は、レインアルド皇帝陛下の意に従います」
「そのようなことを言ったつもりはないのですが……私と行動を共にしていただけるのであれば、ティア姫に不快な思いはさせないとお約束いたします。あと、リヒトと呼んでくださいと言っているではないですか」
……私が閉じ込められた原因は、私にあるかもしれません。しかし、皇帝のこの態度から、私を皇帝の目の前から排除しようという行動だったのではと、思ったのでした。
二時間後、私はテターニア王国の王都ベルセリアの街の中を馬車で移動しています。
転移でテターニア王国で行けるのであれば、そのまま王城に転移すればいいのです。しかし、ラスデニア帝国の者がやってきたと国民に知らせるために、わざわざ王都の郊外に馬車ごと転移してきたのでした。
昨日の夜に、ライラに通信の魔道具を出してもらい、私が運営する商会の会長と話をしたのです。
もちろん事前にリヒトに通信の魔道具の許可は取りましたよ。商会と連絡を取りたいと言えば、快く許可を出してくれました。
見張りのクオン付きで……。
連絡を取った者によると、王都から逃げる者が多いということでした。
それをいざ目にすると、やはりいつもの王都の姿ではありません。閑散とした王都の中で、不安そうな表情を浮かべた者たちが、この馬車を見ているのです。
「あ……」
「どうかされましたか?」
「いいえ、何も……」
何故か私の隣に座っているリヒトから声をかけられましたが、私が気になっていることなど些細なことです。
セレス商会。私が運営する商会の前に王都の従業員が店の前に出て、こちらに向けて頭を下げていたのです。
昨日、王都から撤退していいと言いましたのに、残ると決めたのでしょうか?
「馬車を止めろ」
「はっ!」
リヒトの言葉に馬車が止まりました。
あの? 王城に行くのではないのですか?
外から馬車の扉が開けられました。
「あの……」
「別に急ぐことはありませんので、ゆっくりとお話をされてきていいですよ」
……王族の方々を待たせている状態で、ゆっくりは無いと思います。が、商会のことは気になっていたので、お言葉に甘えて少し話をしてきます。
私はライラの手をとって馬車を降り、足早に商会のほうに向っていきました。
私の姿を見た者たちからざわめきが起こります。
いつもは目立つ白い衣服を身にまとっていますが、今日は黒一色のドレスなのです。
髪も黒くドレスも黒いので、本当に黒一色です。あ、目だけは赤でしたね。
「セレスティア様!」
「姫様!」
「ご無事で何よりです」
商会の従業員から次々と言葉をかけられました。私はそれを笑顔で受け流します。
「店長のトラメリスは?」
「ここに」
声がする方に視線を向けると、白髪の壮年の男性がスッと前に出てきました。
「王都から撤退していいと許可はだしましたわよ」
未だに従業員たちと共に王都に残っていることを尋ねます。
この状況で王都に残りたくない者もいるでしょう。
「撤退してもいいということは、残っても良いと解釈いたしました」
「ええ、そうね」
「ここにいる者たちは、セレスティア様の意を汲んで王都に残ることを決めた者たちです」
……私の意ですか?
そんなもの私は持っていませんわよ。