軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 8

【逆転裁判】国からの立ち退き命令? 「あら、私が相手になりますわよ」

リベラが「理事長」就任を決意した翌日。

カイト分校の正門前に、王家の紋章が入った黒塗りの高級馬車が止まった。

降りてきたのは、いかにも神経質そうな銀縁眼鏡の男。

王国の国土管理局長、ガイウスだ。

彼は背後に数名の憲兵を引き連れ、ハンカチで鼻を押さえながら周囲を見渡した。

「臭う……臭うぞ。違法の臭いがプンプンする!」

ガイウスは校門(サルバロスの石垣)を見上げ、ヒステリックに叫んだ。

「おい! ここの責任者は誰だ! 即刻出てきなさい!」

「はーい。僕ですけど」

農作業の途中だったカイトが、 鍬(くわ) を持ったままのんびりと現れた。

隣には、不安そうな顔をした事務長ルーベンスがいる。

「貴様か、この違法建築の主は!」

ガイウスはカイトに書類を突きつけた。

「王国国土法第13条違反! ここは未登録の荒野だ! 勝手に建物を建てるなど言語道断! さらに、危険生物の無許可飼育、納税の不履行……数え上げればキリがない!」

「えぇ……でも、ここ誰も住んでなかったし、みんなで頑張って作ったんだよ?」

「問答無用! 即刻この施設を解体し、立ち退きなさい! さもなくば、軍を動員して強制執行する!」

「えぇ~……困ったなぁ」

カイトは頭をかいた。

軍が来ても返り討ちにする(ワンパン)のは簡単だ。だが、それでは「学校」が「戦場」になってしまう。子供たちを怖がらせたくはない。

ルーベンスも顔面蒼白だ。国を敵に回せば、物流が止まり、給食の食材(調味料など)が入手できなくなる。

「ふん、田舎者め。法には逆らえんのだよ。さあ、今すぐサインしろ!」

ガイウスが勝ち誇った顔で、立ち退き承諾書をカイトに押し付けようとした、その時。

バシィッ!!

横合いから伸びた白い扇子が、ガイウスの手を叩き落とした。

「――お待ちなさい」

「痛っ!? な、何奴だ!」

そこに立っていたのは、純白のスーツに身を包み、優雅に扇子を開いたリベラ・ゴルドだった。

彼女は冷ややかな瞳で役人たちを見下ろした。

「あら、ご存じありませんの? 私、ゴルド商会のリベラと申しますけれど」

「なっ……ゴ、ゴルド商会だと……!?」

ガイウスが息を呑む。

大陸の経済を牛耳る最大財閥。その令嬢がなぜここに?

「国土管理局長さん。貴方、勉強不足ですわね」

リベラは六法全書を片手に、流れるようにまくし立てた。

「まず『未登録の土地』とおっしゃいましたが、民法第162条『取得時効』をご存じ? カイト様はこの土地を平定し、長期間占有・耕作しております。よって所有権は既に発生していますわ」

「な、なんだと……屁理屈を……!」

「次に『危険生物』? あれは生物ではなく『当校の職員』です。これが彼らの雇用契約書(労働基準法準拠)。労働者を差別するおつもり?」

リベラはポチやフェンリルの雇用契約書(※昨日徹夜で作成)を突きつけた。

「そ、そして税金だ! これだけの施設、固定資産税が払われていない!」

「あら、笑わせないでくださいまし」

リベラはクスクスと笑い、校舎の屋上を指差した。

そこには、日光浴をしている創造神ルチアナの姿があった。

「ここは『創造神ルチアナ様を奉る宗教施設(神殿)』でもあります。宗教法人法に基づき、境内建物および境内地は『非課税』ですわ!」

「し、宗教施設……だと……!?」

「ええ。御神体(本人)がそこにいらっしゃいますもの。疑うなら、 天罰(ブラックホール) でも食らってみます?」

完璧な論理武装。

法の抜け穴どころか、神の実在を利用したウルトラC。

ぐうの音も出ないガイウスに、リベラは扇子で口元を隠し、トドメの一撃を放った。

「それとも……ゴルド商会を敵に回して、法廷で争います? 裁判になれば、我が家の顧問弁護団100名と、私(スキル持ち)が徹底的にお相手しますけれど。……貴方の『天下り先』が消し飛ぶまで、ね?」

「ヒィィィッ!!」

ガイウスの顔色が土気色に変わった。

ゴルド商会と全面戦争になれば、一介の役人など社会的抹殺(あるいは物理的消滅)は免れない。

「お、覚えてろぉぉぉ! 今日のところは勘弁してやるぅぅ!」

ガイウスたちは蜘蛛の子を散らすように馬車に逃げ込み、砂煙を上げて去っていった。

「……ふぅ。口ほどにもないですわ」

リベラはパチンと扇子を閉じた。

その背中を、カイトとルーベンスが呆然と見つめていた。

「す、すげぇ……」

ルーベンスが震える声で呟いた。

軍隊でも魔法でもなく、「言葉」と「法律」だけで国を撃退した。

これこそが、カイト農場に欠けていた最後のピース。

「リベラちゃん! すごいよ!」

カイトが目を輝かせて駆け寄った。

「魔法使いみたいだった! 悪い役人さんをやっつけちゃったね!」

「ふふ、お褒めにあずかり光栄ですわ」

リベラは少し頬を染め、微笑んだ。

「カイト様は農業と教育に専念してくださいまし。……外野の『雑音』は全て、この私が黙らせて差し上げますから」

そう言って胸を張る彼女の姿は、まさに『最強の盾』。

カイト農場は今日、物理的にも社会的にも「難攻不落」の要塞となったのだった。