作品タイトル不明
EP 5
炎上の緊急釈明会見と、呆れる村の面々
「——以上の通り、今回の電波ジャックおよび不適切放送につきましては、全て『ゴルド商会』側の責任において発生したものであり……」
翌日。ルナミス帝国の国営放送局にて、大々的な【緊急釈明会見】が開かれていた。
無数のカメラのフラッシュが瞬き、何百人もの記者たちが殺気立ってペンを構えている。
会見場の長机。
中央に座っているのは、少しだけ色を抑えた(しかし純金ネックレスは外していない)スーツ姿のオロチ。
そしてその隣には、なぜか【芋ジャージに健康サンダル姿】のリーザが、ちょこんと座らされていた。
「オロチ会長! アイドルと癒着し、カネの力で強引に番組枠を奪ったというのは事実ですか!?」
記者の鋭い追及が飛ぶ。
「ですから!」
オロチがマイクを握りしめ、カメラを真っ直ぐに見据えて言い放った。
「先日の取材でもお答えした通り、私は一切、報告を受けておりませんでした!! 全ては現場の独断と、私の 秘書(ニャングル) の事務的なミスが重なって起きた事故なんだわ!!」
ダァァァン! と机を叩くオロチ。
見事なまでの「秘書への責任転嫁(トカゲの尻尾切り)」である。
「なるほど、秘書のミスですか! では、隣に座っているリーザ氏とのズブズブの関係は——」
「ズブズブじゃにゃあて!! 面識はございますが、一般的な——」
「もぐもぐもぐ……。このお水、高級なミネラルウォーターですの。ペットボトル持って帰ろっと」
オロチが必死で言い訳している真横で、リーザが会見用に置かれていた水をガブ飲みし、さらには懐から『ずっ友ロコシ』の残り(食べかけ)を取り出して、カメラの前で堂々と囓り始めたのだ!
「な、なんだあのアイドル!? 謝罪会見中にトウモロコシ食ってるぞ!?」
「反省の色ゼロじゃないか!!」
記者たちが一斉にざわめき、フラッシュの嵐がリーザに集中する。
***
【ポポロ村 —— 村長宅のリビング】
「……はぁ。アホくさ」
ルナミスTVの生中継を見ながら、ポポロ村の財務担当・ニャングルは、スパーッと煙管を吹かして紫煙を吐き出した。
だが、その目は全く笑っていなかった。
「……ワイのせいにしよったで、あのクソ成金。事務的なミス? 報告受けてない? ……ええ度胸やないか」
パチパチパチパチッ!!
ニャングルの猫耳が怒りでピーンと立ち上がり、相棒である【算盤】を神眼の動体視力で弾き始める。
「ワイを怒らせたらどないなるか、骨の髄まで教えたるわ。……ルナミス帝国のL-Payシステムにバックドア(裏口)からアクセス。ゴルド商会のメインバンク、 全部凍結(ショート) させてもらいまっせ! 【 経済封鎖(スキル・アウト) 】!!」
カチャッ! と最後の珠を弾いた瞬間、大陸全土に広がるゴルド商会の口座が、全てエラーコードを吐き出して完全凍結された。
「……村長の権限において、あのバカ人魚を物理的に回収(ヤキ入れ)する必要がありますね」
TVの画面を見つめながら、キャルルが特注の安全靴の紐をギリギリと締め上げていた。
彼女の持つ『相手の心音から嘘を見抜く力』が、オロチの心臓の音を拾っている。
「最悪なことに、あの成金社長……『本当に自分が被害者だ』と思い込んでます。心音に一切の乱れがありません。……あのトウモロコシ、相当ヤバい洗脳アイテムですよ」
「おやめください、キャルル様。今あの場に突入すれば、村の品位が疑われます」
執事のリバロンが、完璧な所作で淹れた超高級紅茶をテーブルに置きながら、冷徹な瞳で画面を見据えた。
「主君(ポポロ村)に泥を塗った罪は万死に値します。……私が裏から手を回し、合法的に、そして徹底的に社会から抹殺しましょう」
ヤンデレ武闘派村長、極悪インテリ執事、そしてブチギレた天才財務猫。
ポポロ村の【政治・経済・暴力】のトップ3が、完全にゴルド 商会(オロチ) とリーザを「 敵(ターゲット) 」としてロックオンした瞬間であった。
***
【再び、ルナミス帝国 釈明会見場】
「会長! ネット上では大炎上しています! ゴッドチューブの同接が500万人を超えていますよ!!」
「ええい、うるさいわ! 全ては秘書のミスだて!!」
オロチが怒鳴り散らした、その時。
彼の胸ポケットに入っていた 魔導通信機(スマホ) が、けたたましい警告音を鳴らし始めた。
『ピピーッ! 警告! ゴルド商会メインバンク、全口座凍結! クレジット決済不能! 株価ストップ安!』
「……は? な、なんやて!?」
オロチの顔面から、一瞬にして血の気が引いた。
「オロチおじ様? どうしたんですの? 顔が真っ青ですわよ?」
食べかけのロコシをモグモグしながら、リーザが不思議そうに首を傾げる。
「お、おみゃあ……口座が……ワシの口座が……ッ!」
さらに、記者たちの中に紛れ込んでいた「リバロンが手配したルナミス内務省の査察官」たちが、冷ややかな目でオロチに歩み寄り始めた。
(アカン……! これ以上ここにいたら、カネも地位も全部むしり取られる!!)
極限のストレスと、ずっ友ロコシの魔力(絶対防衛システム)が、オロチの脳内で化学反応を起こした。
「ウッ……! ゲホッ、ゴホォォォォッ!!」
突如、オロチは胸を押さえて大袈裟に咳き込み、机の上にバタァッ! と突っ伏した。
「か、会長!? どうされました!?」
「あ、あかん……急激な体調不良だわ……! 胃潰瘍と十二指腸潰瘍と、あと痛風が同時に併発したて……ッ!」
「ええっ!? オロチおじ様、死なないでくださいの! 私のパトロン(ずっ友)!!」
「現在、当局が捜査中の案件でありますので……これ以上のコメントは……ウッ! 救急車! 救急車を呼べぇぇ!」
フラッシュが激しく焚かれる中、オロチとリーザは「急病」という名の最強のカードを切り、会見場から逃走(強制入院)を図るのであった。