作品タイトル不明
EP 6
VIP病室の恐怖! 怒れるヤンデレと天然エルフ
ルナミス帝国、最高級VIP病棟。
「急激な体調不良(=世間からの逃亡)」を理由に入院したオロチとリーザは、豪奢なベッドの上で仲良く並んでポポロシガーを吹かし、キャビアを食べていた。
「ガハハハハ! 逃げ得だわ、リーザちゃん! しばらく入院しとれば、国民も忘れてくれるて!」
「そうですわね! 病院食は飽きますけど、ここはデリバリーが充実してますの!」
外の世界がどれほどの大炎上を起こしていようとも、二人には【ずっ友ロコシ】のバグによる「無敵の幸福空間」が広がっていた。だが、その平和は、突然の【無礼なノック音】によって破られた。
ドンドンドンドンドォォン!!!
「入りますよぉ。村長のキャルルです」
ガッシャァァァンッ!!
鍵がかかっていたはずのVIPルームの重厚なドアが、一瞬にして粉々に砕け散った。
煙の中から現れたのは、特注の安全靴を履き、殺気(と慈愛)を撒き散らすキャルルと、ふわふわしたドレスで微笑むルナだった。
「ひ、ひぃぃぃっ!? な、なんや、この危険な女たちは!」
オロチがポポロシガーを落とし、リーザが芋ジャージを頭から被って震え上がる。
「オロチ会長。会見での『秘書のミス』発言、拝見しました」
キャルルが笑顔で歩み寄る。その足音は一歩ごとに大理石の床を陥没させていた。
「 秘書(ニャングル) は今、ポポロ村の村長宅で、貴方のせいで凍結させられた全口座の解凍と、損害賠償請求書の作成に血を流しながら取り組んでいますよ。……そんな中、あなたたちはここで『体調不良』ですって?」
「あ、あ、あああ……」
「大丈夫ですよ!」
キャルルは背後から月光薬をボトルごと取り出し、満面の笑みで宣言した。
「今ここで、その『汚い心と不摂生な体』を、私の月光薬で強制全回復させて差し上げますから! 痛みも疲れも、甘えも……全部、全部!! 殴って蹴って、私が癒してあげますね♡」
「いやぁぁぁっ! 治療って言ってるけど目が笑ってない! 暴力! 暴力ですよぉぉ!!」
「あらあら、お金に困ってるの?」
今度はルナが、キョトンとした顔で近づいてきた。
「リーザさん、そんなみすぼらしいジャージを着て……。私、すぐにお金を作ってあげますからね。えっと、近くに……あ、いいものがありました」
ルナが、オロチの隣に座っていたリーザの背中に、優しく手を添える。
「リーザさんの腎臓、すごく形が良さそうですね。今すぐ摘出して市場に売りましょう。大丈夫、私が『再生魔法』で一瞬で直して差し上げますから」
「コンプライアンス違反!! 臓器売買はBAN対象ですの!!」
リーザが本気の悲鳴を上げる。
「あら? 善意ですよ? ほらほら、植物たちも応援してくれています」
ルナが杖を振ると、床からヨダレを垂らした【 幻覚催眠植物(ハッピー・ドリーム) 】がズルズルと這い出し、二人の鼻先に触手を突き立てた。
「ヒィィィィィィィッ!!」
オロチとリーザは、強引に「超健康体」にさせられようとするキャルルの拳と、腎臓を奪われそうになるルナの善意に挟まれ、文字通り「生きた心地」を失っていた。
「……現在、当局が調査中の案件でありますので……ッ!」
オロチが最後の一言を絞り出すが、キャルルは特注の安全靴をオロチの腹部に押し当て、ゴリゴリと音を立てながら囁いた。
「あぁ、いいですよ。コメントは差し控えて結構です。その代わり、たっぷりと『村長からのご熱い指導』を味わってくださいね」
地獄よりも恐ろしいVIPルームの夜が、今、幕を開けたのであった。