軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 3

放送事故とポンポコ節(ゴッドチューブ炎上)

ピポパポポロロロ〜ン♪

ルナミス帝国全土のお茶の間に、軽快で可愛らしいオープニングテーマが流れ出した。

いつもなら、可愛いお兄さんとお姉さんが笑顔で踊り出す、子供たちが大好きな時間。しかし、画面に映し出されたのは、パステルカラーの風船の前に直立不動で立つ、紫のダブルスーツを着た強面のおっさんであった。

「ちびっ子のみんな、お待たせだわ。オロチおにいさんだて」

オロチはカメラ目線でニヤリと笑うと、首の純金ネックレスをジャラジャラと鳴らし、ギチギチにダイヤが詰まった超高級腕時計をわざとらしくアピールした。

「みんな、カネは好きかね? カネがあれば何でも買えるでよ。お父さんやお母さんが『カネより大事なものがある』なんて言い出したら、それは負け犬の言い訳だで、騙されちゃいかんわ」

教育番組の開始5秒で、資本主義のド黒い現実をちびっ子に叩き込むオロチおにいさん。

さらに、彼は当たり前のように懐から高級魔導葉巻『ポポロシガー』を取り出すと、指輪の魔石から直に火をつけ、紫色の煙をスタジオ内にふぅーっと吹き出した。

「ウワァァァァァァン!!」「お家帰るぅぅぅ!」「ママー!!」

スタジオの雛壇に座らされていたエキストラの子供たちが、恐怖と煙の臭さで一斉に大号泣し始める。

「ちょっとオロチおじ様! 番組進行が台無しですの! ここは私の【本気の歌】で、子供たちのハート(お財布)をガッチリキャッチするしかありませんわ!」

みかん箱の上に飛び乗ったのは、芋ジャージ姿のリーザおねえさんである。

彼女はおもむろにポケットから【5円玉】を取り出すと、何を血迷ったか、それを自分の鼻の穴にギチギチと詰め込み始めた。

「さぁ、ちびっ子のみんな! 一緒に元気に歌って踊りましょう! 『ハゲたぬきのポンポコ節』ですの!!」

ポコポコポコポコ……ッ!!

リーザは自分のぺったんこな腹を、まるで太鼓のように激しく叩きながら、白目を剥いて歌い出した!

「♪た、た、たぬきのお腹は ポンポコポンポン!」

「ガハハハハ! ええてええて! 景気がえりゃあわ!」

オロチが葉巻を咥えたまま、太ももを叩いて大爆笑する。

「♪月よ〜月で〜頭は ハーゲハゲでピーカピカ〜!」

「♪お尻はツールツル〜 ターマターマはマ〜ルマル〜!!(ソレ! ヨイヨイ!)」

鼻から5円玉を覗かせた元人魚姫が、子供たちの前で全力の「おっさんの宴会芸」を披露する。

スタジオ内は、子供たちの絶叫、リーザの腹太鼓、オロチの名古屋弁の高笑いが混ざり合い、完全に地獄のパチンコ屋の裏口のような惨状と化していた。

***

【神界ゴッドチューブ —— 天使キュララの突撃・裏実況枠】

この歴史的な放送事故は、TV局のキャットウォーク(天井の足場)に潜入していた下級天使キュララのドローンによって、リアルタイムで全宇宙に裏配信されていた。

『はいはーい! リスナーのみなさぁん! ルナミスTV局でとんでもない事件が発生してますぅ!』

画面の隅で、キュララが美味しそうに高級寿司を頬張りながら実況する。(※太客のリスナーからのデリバリーである)

ゴッドチューブのコメント欄は、1秒間に数万件のスピードで大炎上していた。

『通報した』

『放送事故wwwwwwww』

『これ日曜の朝の番組だろ!? コンプラ仕事しろ!!』

『子供の精神に致命的なデバフ(トラウマ)かかってるぞww』

『アイドルが鼻に5円玉詰めてタマタマ言うなwww』

神界のコタツ部屋では、宇宙神ユニーバが「ル、ルチアナ……今すぐルナミスTVの電波を遮断しなさい! 宇宙の倫理が崩壊するわぁぁ!」と半泣きで叫んでいた。

***

一方、ポポロ村の村長宅。

「……」

「……」

TV画面の前で、キャルルが特注の安全靴を履いた脚をピキピキと震わせ、ルナが「あらあら、コンプライアンス大爆発ですねぇ」と首を傾げていた。

財務担当のニャングルにいたっては、オロチが「秘書の事務的なミスだわ!」と言い訳する前段階として、すでに番組のクレジットに『協賛:ゴルド商会・ニャングル』という文字を発見し、泡を吹いて倒れかけていた。

「……あのアホ人魚。ポポロ村の面汚しですの……」

キャルルの瞳の奥に、ドス黒いヤンデレの炎が静かに灯る。

しかし、TV画面の中の「ずっ友」の二人は、そんな周囲の殺意に一切気づいていなかった。

「ガハハハハ! リーザちゃん、最高だわ! 次はワシがデュエットしたるでよ!」

「はいっ、オロチおじ様! 2番行きますわよ! ターマターマはユーラユラ〜!」

ルナミス帝国の電波ジャックから、全宇宙のタイムラインが大炎上へと包まれていく中、物語はついに、往生際の悪すぎる「あの謝罪釈明」のステージへと突き進むのであった。