軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 12

パラドックスの特異点と、最強農民の『宇宙接ぎ木』

ギギギギギギギギ……ッ!!!

ポチ(始祖竜クロノ)が召喚した『巨大な時計の文字盤』が逆回転を続けるにつれ、地獄の空に赤黒い稲妻——いや、空間の「エラー(バグ)」が走り始めた。

「……にいちゃん、お空が割れてるよ……」

ユウが龍魔呂の胸の中で怯えた声を上げる。

「チッ……! 過去を無理やり上書きしようとしてるせいで、現在の 宇宙(システム) が矛盾を起こしてやがる!」

龍魔呂が舌打ちをし、ユウを庇うように抱きしめた。

【タイムパラドックス】。

死んだはずのユウが「生きていた」ことになれば、龍魔呂が復讐鬼(DEATH4)になる理由も、この地獄に来る理由も消滅する。因果律の致命的な矛盾が、特異点となって現在の宇宙そのものを『バグ』として消去しようと牙を剥いたのだ。

【宇宙管理センター —— 絶賛崩壊中】

「ひぃぃぃぃっ! エラー! 宇宙のシステムがブルースクリーンになっちゃうぅぅ!」

宇宙神ユニーバの目の前で、空間に浮かぶ無数のモニターが次々と「ERROR 404」の真っ赤な警告画面に切り替わっていく。

神界のサーバーからは火柱が上がり、ゴッドチューブの配信画面はモザイクと逆再生が入り乱れ、まさに宇宙の終焉(サービス終了)が秒読み段階に入っていた。

『ダメだわ! ポチちゃんの時空改変と、現在の因果律がぶつかり合って、タイムラインが完全に破綻してる! このままじゃ宇宙ごとデータが飛んじゃうわぁぁ!』

ユニーバが頭を抱え、全宇宙の神々が終末を覚悟した、その時である。

「……何言ってんだ。ただの【 連作障害(れんさくしょうがい) 】じゃねぇか」

バグとノイズの嵐が吹き荒れる地獄のド真ん中で。

S級農民・カイトが、麦わら帽子を指で押し上げながら、呆れたように鼻で笑った。

「カ、カイト!? 何言ってんだ! 宇宙が消えちまうんだぞ!」

ポチが時計の針を回しながら叫ぶ。

「いいか、お前ら。同じ土地(現在の宇宙)に、違う性質の種(新しい過去)を無理やり植えようとするから、土壌が拒絶してエラーを起こすんだ。農業の世界じゃ、それを連作障害って呼ぶ」

カイトは、手にした超硬度クワを肩に担ぎ直し、ニヤリと笑った。

「だがな、俺はすでにこの地獄を【極大ビニールハウス】で覆い、極上の土壌に耕し直してある! あとは、この新しい種(過去)が土に馴染むように……強引に『接ぎ 木(つぎき) 』してやるだけだ!!」

カイトがクワを天高く振り上げる。

その全身から、宇宙の因果律すらもねじ伏せる圧倒的な『農民のオーラ(生命力)』が爆発した!

「よく見とけ! 【農民奥義・宇宙接ぎ 木(コズミック・ツギキ) 】!!」

ドッゴォォォォォォォォンッ!!!!

カイトが振り下ろしたクワが、空間に発生していた巨大な「バグ(パラドックスの裂け目)」に深々と突き刺さった!

通常なら宇宙ごと消滅するはずの矛盾の亀裂。しかし、カイトのクワから放たれる生命力が、古い因果律と新しい因果律を、まるで植物の断面を合わせるように強引に繋ぎ合わせていく!

「根を張れェェ!! 俺が耕した極上の土壌(世界)だ! どんな無茶な過去だろうと、俺の畑が全部受け止めてやる!!」

カイトの咆哮と共に、クワの先端から眩い新緑の光が放たれ、バグだらけだった地獄の空間を、そして宇宙のタイムラインを緑色の光のネットワーク(根)でガッチリと固定し始めた。

『ファッ!?!?』

モニターを見ていたユニーバの目が、文字通り点になった。

「う、宇宙のタイムラインの崩壊が……止まった!? カイト君が、クワ一本でサーバー(宇宙)の矛盾を物理的に繋ぎ止めてる!? 謎技術すぎるゥゥゥ!!」

【神界ゴッドチューブ —— コメント欄(正常化)】

『コメント直ったァァ!』

『農民がパラドックスを「連作障害」って言ってクワで殴って直したww』

『農業は宇宙の物理法則を凌駕する(確信)』

『カイト農場、ついに宇宙の 因果律(タイムライン) を買収』

神々の絶望は、完全な大爆笑と熱狂へと反転した。

矛盾は解消された。いや、カイトという絶対的なアンカー(特異点)によって「強引に正当化された」のだ。

「……フッ。まったく、無茶苦茶なダチを持ったもんだぜ」

龍魔呂が、ユウを抱きしめたまま、呆れたように、しかし最高に誇らしげに笑った。

ポチの放つ時計の逆回転が、ついに目的の地点——「ユウが死んだあの日」へと到達する。

カァァァァァァァァン……。

世界を書き換える、優しい鐘の音が鳴り響く。

「……さぁ、帰るぞ。俺たちの『新しい世界』へ」

龍魔呂の言葉を合図に、カイト、ポチ、キャルル、リーザ、そしてユウの体が、眩い光に包まれていく。

地獄の底から、彼らはついに、理不尽な死が「最初から存在しなかった」ポポロ村の日常へと帰還を果たすのだ。