軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 11

再会と、時空改変の『儀式』

暖かで優しい、半透明の光。

カイトが地獄のシステムそのものを上書きして作り上げた【 極大生命温室(アルティメット・ビニールハウス) 】の中は、先程までの凄惨な血の雨が嘘のように、穏やかな空気に満ちていた。

「……にい、ちゃん……」

崩れた石の塔のそばで。

実体を取り戻した小さな男の子、ユウが、泥だらけの顔を上げて呆然と呟いた。

ズズン……。

真紅に染まり上がった機神ラビークが膝をつき、プシューッと音を立ててコックピットのハッチが開く。

そこから飛び降りた龍魔呂は、武器も、咥えタバコも放り捨て、ただ真っ直ぐに弟の元へと駆け寄った。

「ユウ……ッ!」

龍魔呂は、震える両腕でユウの小さな体を力強く抱きしめた。

「にいちゃん……! にいちゃん、こわかったよぉ……! ずっと、石を積んで、叩かれて……っ!」

「あぁ……ごめんな。遅くなった。もう大丈夫だ……絶対に、俺が離さない」

冷酷無比な処刑人【死を呼ぶ四番(DEATH4)】として裏社会を震え上がらせてきた男の漆黒の瞳から、大粒の涙が溢れ落ち、弟の泥だらけの頬を濡らす。

その光景を、カイトは麦わら帽子を深く被り直して静かに見守り、キャルルとリーザは目を潤ませていた。

【神界セレスティア —— 女神のコタツ部屋(生配信中)】

『うわぁぁぁん! よかったなぁぁ!』

『龍魔呂の涙でこっちまで泣けてきた(号泣)』

『全宇宙が泣いた。赤スパ全ツッパだ!!』

ゴッドチューブのコメント欄も、感動の涙(と大量の投げ銭)で埋め尽くされていた。

これでハッピーエンド。誰もがそう思った。

——だが。

龍魔呂は、ユウを優しく抱きかかえながら、ゆっくりと立ち上がった。

その顔には、涙痕が残るものの、神すらも恐れおののく『底知れぬ 狂気(エゴ) 』が再び宿っていた。

「……龍魔呂?」

カイトが怪訝な顔をする。

「ユウの魂は取り戻した。だが……これだけじゃダメだ」

龍魔呂は、ユウの背中に残る痛々しい鞭の 痕(トラウマ) を見つめ、ギリッと歯を食いしばる。

「ユウは地獄の恐怖を味わった。殺された時の痛みも、絶望も、その魂に刻まれてしまっている。……そんな記憶を抱えたまま生き返ることを、俺は『救済』とは認めない」

龍魔呂の視線が、宙を浮遊する小さな竜——ポチへと向けられた。

「俺は、ユウが死んだという『事実』そのものを、この宇宙から消し去る。……頼むぞ、ポチ」

「……おう。任せとけ、ダチ(マスター)」

ポチは、ルナイーツの保温バッグを下ろし、カイトから貰っていた極上の角砂糖をボリボリと一気に噛み砕いた。

ゴクン、と甘い塊を飲み込んだ瞬間。

「オレはルナイーツの配達員。……だが、同時に世界を喰らう『始祖竜クロノ』だ。ダチの願い(オーダー)、完璧に届けてやるよ!!」

ゴァァァァァァァァァァッ!!!!

ポチの小さな体から、宇宙の星々を飲み込むほどの圧倒的なオーラが爆発した。

背後には、かつて神々を恐怖のどん底に陥れた【始祖竜クロノ】の巨大な幻影が浮かび上がり、地獄の空を覆い尽くす。

「権能解放——【世界時計の 逆行(タイム・リバーサル) 】!!」

ポチが両前足を天に向かって突き上げると、ビニールハウスの天井の向こう、宇宙の空間そのものに『超巨大な時計の文字盤』が出現した。

ギギギギギギ……ッ!!

けたたましい歯車の音と共に、巨大な時計の針が【逆回転】を始める。

【宇宙管理センター(生配信中)】

その瞬間、全宇宙のシステムに異常が発生した。

『えっ!? ちょ、待って! コメントが……逆流してる!?』

『wwるいてっや! ろ魔龍(龍魔呂! やって?るww)』

『!?んかかだんナ(なんだかン!?)』

神界のゴッドチューブの配信画面が、ノイズと共に「巻き戻し再生」のようになり、コメントの文字まで逆から流れ始めたのだ。

「ひぃぃぃぃっ!! 宇宙の因果律が! タイムラインが物理的に巻き戻ってるわぁぁ!」

宇宙神ユニーバが、デスクのパソコンから噴き出す火花を避けながら絶叫する。

「死んだという過去」を無かったことにする。

それは、現在の宇宙の形を根本から破壊し、再構築するという【最大の禁忌】。

巨大な時計の針が逆回転を続ける中、カイトの作ったビニールハウス(概念の膜)の周囲で、凄まじい雷鳴と空間の軋み——【タイムパラドックスによる宇宙の崩壊】が牙を剥き始めたのであった。