軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 3

出発の刻と、予想外の『便乗組』

ゴゴゴゴゴゴ……ッ!!

ポポロ村の上空に、空を真っ二つに引き裂くように禍々しい『巨大な門』が出現した。

神界のルチアナが涙と鼻水に塗れながら強制開放した、【地獄へのゲート】である。

地上では、一台の無骨な四輪駆動車——龍魔呂の愛車である『トヨタ ランドクルーザー 70系』が、重低音のアイドリングを響かせていた。

「ゲートが開いたな。……行くぞ」

ワインレッドのタートルネックにレザージャケットを羽織った龍魔呂が、運転席に乗り込む。

助手席には、麦わら帽子にドテラ姿のS級農民・カイト。その後部座席(?)には、配達用保温バッグを背負った始祖竜ポチがちょこんと座っている。

弟・ユウを取り戻し、「死んだという事実」そのものを消し去るための、神への反逆の旅。

男たちの顔には、悲壮とも言える決意が宿っていた。

——だが、その重すぎる空気をブチ壊すように、ランクルの後部ドアがガチャリと開いた。

「はいっ! よっこらしょっと!」

「村長の巡回業務、出発進行です」

ドンッ! ドンッ!

荷台(後部座席)に無造作に乗り込んできたのは、芋ジャージに健康サンダル姿の【強欲貧乏アイドル・リーザ】と、特注の安全靴を履いた【ヤンデレ物理村長・キャルル】の二人だった。

「「…………は?」」

龍魔呂とポチが、完全に呆気にとられて二人を見る。

「お、おいお前ら! なんで乗り込んで来てんだよ! 行き先は地獄だぞ!?」

ポチが慌てて羽ばたく。

「決まってますわ! 地獄の 亡者(ファン) 相手に、ゲリラライブを決行するためですの!」

リーザはみかん箱(お立ち台)とマイクを抱え、瞳を札束(¥)の形に輝かせていた。

「地獄の底には、生前のお金を使い切れなかった亡者たちがたくさんいるはず……! 彼らの時間を奪い、極上の歌で癒して、地獄の 通貨(スパチャ) を根こそぎ稼ぎますの!!」

「私はポポロ村の村長です」

キャルルがダブルトンファーをクルクルと回しながら、極めて真面目な顔で続けた。

「村の重要人物(カイトと龍魔呂)が危険な場所に赴く以上、護衛と回復(血を吐かせながらの強制ヒール)の提供は当然の義務です。……それに、カイトさんの行く所なら、地獄の底だろうとついて行きます(ヤンデレ顔)」

「正気かお前ら……!」

龍魔呂が頭を抱える。神殺しのシリアスな旅が、完全に慰安旅行か巡業ライブのノリになっている。

「まぁ、いいじゃねぇか。乗せてやれよ龍魔呂」

助手席のカイトが、窓枠に肘をかけながらニカッと笑った。

「地獄の未開拓土壌を耕すには、人手が必要だ。それに、向こうの土(悪魔)は頑固そうだからな。キャルルの安全靴で砕いてもらって、リーザの歌で土壌微生物(亡者)の活性化を図れば、極上の『肥料』が手に入るって寸法だ」

「「農業の 論理(サイコパス) で地獄を解釈するな!!」」

ポチと龍魔呂の魂のツッコミがハモった。

しかし、カイトが了承してしまった以上、カイト農場の絶対ルールにより、彼女たちの同行は決定事項となってしまった。

【神界セレスティア —— 女神のコタツ部屋(生配信中)】

『ちょww 貧乏アイドルとヤンデレ村長が便乗してきたww』

『地獄でスパチャ稼ぐ発想は天才のそれ』

『カイトの農業解釈、ついに悪魔を「肥料」認定しやがった(震え声)』

ルチアナが強制開放したゲートに、下級天使キュララの操る【配信ドローン】がこっそりと追従し、その映像を全世界に垂れ流していた。

コメント欄は、シリアスとギャグの大渋滞に大歓喜している。

「はぁ……もうどうにでもなれ……」

ルチアナは焼け焦げた畳の上で体育座りをしながら、モニターの向こうの狂気の一団を見つめていた。

「フッ……まぁいい。誰が来ようと、俺のやることは変わらん」

龍魔呂はふっと息を吐き、真鍮のオイルライターを鳴らして『マルボロ赤』に火を点けた。

カチッ、という音が車内に響く。

「……行くぞ」

ランクルのカーステレオから、重厚なクラシック音楽——ベートーヴェン『交響曲 第7番 イ長調 第2楽章』が流れ始める。

龍魔呂がアクセルを深々と踏み込んだ。

ヴォロロロロォォォォンッ!!

ランドクルーザー70系が、重低音の咆哮と共に大地を蹴り、空に開かれた禍々しい【地獄のゲート】へと真っ直ぐに飛び込んでいった。

全宇宙の神々が見守る中、史上最狂の「地獄の 農業開拓(ドライブ) 」が、今ここに幕を開けたのだ!