軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 2

コタツ部屋の惨劇と、光の速さの『裏切り』

【神界セレスティア —— 女神のコタツ部屋(全世界生配信中)】

「……ひ、ひぃぃぃぃぃぃっ!?」

ひっくり返ったコタツ。宙を舞うみかん。

そして、部屋のド真ん中で一億ボルトの紫電をバチバチと放ちながら仁王立ちする【雷帝神ユイ】。

その圧倒的な殺気と、焦げた畳の匂い(オゾン臭)に、世界神ルチアナは腰を抜かし、涙目で震え上がっていた。

「ルチアナだな」

ユイの声音は、地獄の底から響くように低く、そして冷酷だった。

「全宇宙神ユニーバから言質は取ってある。お前が現場責任者だそうだな」

「えっ!? ユ、ユニーバ様!? あの限界スイーツ上司、私に全部押し付け——」

「黙れ」

バチィィッ!!

ユイが指先を鳴らすと、ルチアナの顔の横わずか1ミリの空間を、極太の雷撃が通り抜けて壁に大穴を開けた。

「ヒィィッ! ご、ごめんなさい! 殺さないでぇぇ!」

ルチアナは両手で頭を抱え、土下座の姿勢で平伏した。

そして、ルチアナは助けを求めるように、部屋の隅にいる親友と後輩に視線を向けた。

「た、助けてカグヤ! リリス! このままじゃ私、黒焦げの焼き鳥(女神)にされちゃうわ!!」

だが、二人の反応は【光の速さ】だった。

「あ、私、世界神じゃなくてただの 居候(ニート) なんで、関係ないですから」

カグヤはスッ……と扇子で顔を隠し、気配を完全に消して部屋の隅の観葉植物と同化した。

「わ、私はただの見習い(パシリ)ですからぁ! 権限なんて一切ありませんぅぅ!」

リリスに至っては、ルチアナを盾にするように襖の裏へとダイブし、ガクガクと震えながら完全に責任を放棄したのだ。

「あんたたちぃぃぃ!!」

ルチアナの悲痛な叫びがコタツ部屋に響き渡る。

一方、その光景を【切り忘れられた配信カメラ】を通して見ていたゴッドチューブの視聴者たちは、かつてない異常事態に完全に沸騰していた。

『ファッ!?ww 放送事故キタァァァ!』

『【悲報】雷帝様、世界神を物理で脅迫中ww』

『一億ボルトのパワハラは労基違反だろ!』

『カグヤとリリスの逃げ足早すぎて草』

『ルチアナ(中間管理職)の悲哀に全米が泣いた』

画面の隅の視聴者数カウンターが、普段の数万人から、100万、500万、そしてあっという間に【同接1,000万人】を突破。天界で親のすねをかじっているニート神たちが、「ヤバい放送事故が起きてるぞ!」と大挙して押し寄せてきたのだ。

そんなお祭り騒ぎのコメント欄など意に介さず、ユイは冷酷に宣告した。

「秒で答えろ。ポポロ村の龍魔呂の前に【地獄へのゲート】を開くか。それとも、ここで消し炭になるか」

「ひぐっ、うぇぇぇん! 開けますぅぅ! 開けますからぁ! 私の命とコタツだけは勘弁してくださぁぁい!!」

ルチアナは鼻水と涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら、震える手で『世界管理のタブレット』を操作し始めた。

「……よろしい」

ユイの全身から放たれていた紫電が、スゥ……と収まる。

「たつまろの道を阻むものは、神であろうと宇宙の理であろうと、僕が全て壊す」

(——たつまろ。……待っていて)

ユイは配信カメラの向こう側、地上にいる愛しい男に向けて静かに微笑むと、再び光となって消え去っていった。

『……ズビィィ。あんのヤンデレ女神、絶対に許さないんだからぁ……!』

黒焦げになったコタツ部屋で、ルチアナが一人咽び泣く。

『うぉぉぉ! 地獄のゲートが開くぞ!!』

『特級の祭りの予感! カメラ 班(キュララ) 仕事しろ!!』

『赤スパ投げるから地獄の映像映してくれ!!』

こうして。

宇宙神の丸投げと、世界神の涙(と、視聴者の爆笑)を代償にして、アナステシア世界の地上——ポポロ村の上空に、禍々しい【地獄への扉】が、その重い口を開こうとしていたのである。