作品タイトル不明
第三十一章 地獄開拓・神界戦争編
雷帝のブチギレと、宇宙神の『責任転嫁』
【超次元・宇宙管理センター —— ユニーバの執務室】
「ふふふ……やっぱり猫ちゃん動画は最高ね。激務の疲れが溶けていくわぁ……」
第1種 宇宙創造神格公務員にして、全宇宙の神々を束ねるトップ官僚、ユニーバ・オリジン。
彼女は今日も執務室のデスクに高級お菓子の山を築き、マイタンブラーに入れた激甘のアップルティーを啜りながら、空中に展開したモニターで動物動画を堪能していた。
平和だ。宇宙の運行は滞りなく進み、神界(GOD)のヒエラルキーは盤石である。
——そう、彼女が思っていた、その時だった。
ピシャァァァァァァァァァァンッ!!!!
突如として、宇宙空間のど真ん中にあるはずの執務室に、あり得ないほどの【雷鳴】が轟いた。
空間そのものがガラスのようにひび割れ、強引に次元をこじ開けて「それ」は現れた。
「……ッ!? な、ななな、何事ぉぉ!?」
ユニーバがマカロンを喉に詰まらせて咽せ返る中、次元の裂け目から姿を現したのは、純白の神衣を纏い、全身から一億ボルトの『黄金の雷』をバチバチと放つ美しい女神——【雷帝神ユイ】だった。
(僕が、たつまろを守る)
かつて、たった一人の男のために神の権能すら投げ打つ覚悟を決めた、ヤンデレ気質全開の僕っ娘の神様である。
「ゆ、ユイちゃん!? ちょ、ここは全宇宙のトップの執務室よ!? 事前アポなしでの次元突破は服務規程違反——」
「黙れ、トップ」
ユイの瞳は、絶対零度よりも冷たく、そして狂おしいほどの決意に満ちていた。
彼女は右手に極太の雷槍を発生させ、それをユニーバのデスク(猫動画が再生されているモニターの真横)にズドンッ! と突き立てた。
「ヒィィィィッ!!?」
「単刀直入に聞く。龍魔呂の計画(地獄のゲート開放と時空改変)に、協力するのか、しないのか? 秒で答えろ」
ユイから放たれる圧倒的な殺気と電圧が、執務室の高級家具を次々と黒焦げに変えていく。
「……さもなくば、この部屋ごと、アンタを消し炭にするぞ」
ガチだ。
こいつ、トップである自分を本気で殺しに来ている。
全宇宙神であるユニーバは、その圧倒的な地位とは裏腹に、本質的には「事務方の限界OL」である。戦闘力など皆無に等しい。
雷帝のガチのカチコミを前に、彼女の脳内コンピューターは光の速さで【最適な保身ルート】を弾き出した。
「い、いやぁぁん! ガチのカチコミだわ! わ、私、戦闘職じゃないから! む、無理無理無理!」
ユニーバはタンブラーを抱きしめながら、椅子ごと部屋の隅まで後ずさる。
「秒で答えろと言ったはずだ」
ユイの雷槍が、さらに眩い光を放つ。
「ま、待って! ストォォォップ!! あのね、そういう『特定の惑星における地獄のゲート管理』とか『因果律の現場調整』はね、私の管轄じゃないの!!」
ユニーバは涙目で、空間モニターをスワイプし、ある一人の『部下の顔』を大写しにした。
「第3種(世界神)の、ルチアナ! そう、ルチアナが現場責任者なの! 詳しいことは全部彼女に聞いて! 私は承認ハンコ押すだけだから! ねっ!?(よし、全てルチアナに責任を押し付けよ〜っと!)」
宇宙のトップによる、見事なまでの丸投げ(責任転嫁)であった。
「……なるほど。現場責任者はルチアナだな」
「そ、そう! 彼女ならきっと、お望み通りにしてくれるわ! だから私を消し炭にしないでぇぇ!」
ユイは雷槍をスッと消滅させると、小さく頷いた。
「そうか。分かった。……時間を取らせたな」
バチィィッ!!
一瞬の閃光と共に、ユイの姿は執務室から完全に消え去った。
後に残されたのは、黒焦げになったデスクと、腰を抜かしてへたり込む宇宙神だけ。
「……は、はわわ……助かったぁぁ……。ごめんねルチアナちゃん、後でボーナス弾むから、死なない程度に頑張ってね……」
ユニーバは震える手でアップルティーを煽りながら、心の中で部下の冥福を祈った。
【神界セレスティア —— 女神のコタツ部屋】
その頃。
ユニーバから全ての責任を押し付けられた哀れな世界神・ルチアナは、そんな悲劇が迫っているとも知らず、平和にコタツでみかんを剥いていた。
「あーあ。今日もカイトの農場は平和ねぇ。……ん? ゴッドチューブの配信、繋ぎっぱなしだったわ。まぁいいか、どうせ過疎時間帯だし」
ルチアナの隣ではカグヤが扇子を磨き、見習いのリリスが床の掃除をしている。
カメラは、コタツでダラダラする女神たちの日常を、全世界に向けて垂れ流していた。
——そして、運命の瞬間が訪れる。
ピシャァァァァァァンッ!!!!
コタツ部屋の空間が、突如として黄金の雷鳴と共に弾け飛んだのだ。
「えっ!? きゃあああっ!?」
「な、何事ですの!?」
世界中の視聴者(ニート神たち)が見守る生配信のカメラの前。
舞い散るコタツ布団とみかんの皮の真ん中に、一億ボルトの電流をバチバチと纏った【ブチギレ状態の雷帝神ユイ】が、音もなく降り立ったのである。