作品タイトル不明
EP 5
凄惨なる 記憶(フラッシュバック) と、死を呼ぶ四番
(——熱い。家が燃えている。——)
脳髄を焦がすようなフラッシュバックが、龍魔呂の視界を明滅させる。
(——「うぅっ、兄ちゃぁぁん!」首筋に刃物を当てられたユウの悲鳴。——)
(——「たつまろの為なら、もう怖くないや」眩い光の中、神の生贄となって消えていくユイの笑顔。——)
(——「オラッ! 殺せ!」闘技場の観客たちの下劣な歓声。——)
そして。
(——冷たくなったユウの小さな体が、ゴミ捨て場に投げ捨てられる音。——)
『ハハハハハハ……! 楽しいなぁ。殺すのがこんなに楽しいなんて、知らなかった』
血の海に沈んだ闘技場。
己の手で千切り飛ばしたゴロツキの首を足蹴にし、返り血で真っ赤に染まった15歳の自分が、狂ったように笑っている。
——ピタリ、と幻聴が止んだ。
ポポロ村の郊外、うっそうと茂る森の奥に打ち捨てられた廃教会。
そこが、人攫いのゴロツキどものアジトだった。
「ギャハハハ! カイトの野郎がいない日に当たるなんて、俺たちゃツイてるぜ!」
「このガキ、上玉だ。帝国の貴族に売れば一生遊んで暮らせるぞ!」
「ひぐっ、うぇぇぇん……! ママぁ……!」
縛り上げられた子供が泣きじゃくり、男たちが下劣な笑い声を上げていた、その時。
ドゴォォォォォォンッ!!!
分厚いオーク材の扉が、爆薬でも仕掛けられたかのように粉々に吹き飛んだ。
「な、なんだァ!?」
「カ、カイトか!?」
粉塵が舞う中、逆光を背負って現れたのは、麦わら帽子の農民ではない。
黒をベースにした赤のレザージャケット。ワインレッドのタートルネック。
身長190cmの巨躯から、空間が歪むほどの異常な殺気——『赤黒い闘気』を立ち昇らせた男、龍魔呂だった。
「……てめぇ、何者だ! ぶっ殺されてぇのか!」
ゴロツキの一人がシミター(曲刀)を抜き放ち、怒鳴る。
龍魔呂は何も答えない。
ただ、静かに真鍮製のオイルライターを取り出し、口元の『マルボロ赤』に火を点けた。
——カチッ。
冷たく、重い金属音。
それが、処刑開始のゴングだった。
「鬼の龍儀。死を呼ぶ四番の掟……その一」
紫煙を吐き出しながら、龍魔呂の姿が『ブレた』。
「……カタギの者には、手を出さない」
「消え——ガハッ!?」
琉球古武術の極意【縮地】による神速の接近。
ゴロツキの視界から龍魔呂が消えた次の瞬間、男の顎に強烈な掌底(発勁)が直撃し、頸椎がへし折れる嫌な音が響いた。
「な、何ィ!?」
「てめぇ! やっちまえ!!」
残りのゴロツキ5人が、一斉に武器を振り上げて襲いかかる。
だが、龍魔呂の動きは人間をやめていた。
右から振り下ろされた斧を、詠春拳の【 黐手(チーサオ) 】でヌルリと受け流し、相手の関節を古流柔術で完全に 破壊(ロック) する。
「ギヤァァァァッ! 腕が、俺の腕がァ!」
そのまま男の体を盾にし、背後から迫った槍使いの喉仏を、ガジェット特製の折りたたみ式フォールディングナイフで躊躇なく掻き切った。
「ヒィィィッ!? ば、化け物だ! こいつ人間じゃねぇ!!」
「撃て! 魔法だ! 魔法を撃ち込め!!」
生き残った頭目格の男がパニックを起こし、炎の魔弾を連射する。
だが。
「掟……その四。悪は、根絶やしにする」
龍魔呂の全身から噴き出した『赤黒い闘気』が、炎の魔弾に触れた瞬間、ジュワッ……と音を立てて魔法そのものを「喰らい、無効化」してしまったのだ。
「ま、魔法が消えた……!? ひ、ヒィィ! 来るな! 来るなァァァ!!」
頭目が腰を抜かし、後ずさる。
ゆっくりと歩み寄る龍魔呂の瞳には、一切の慈悲はない。
あるのは、悪党という「害虫」を機械的に処理するだけの、完全なる【DEATH4(死神)】の目。
「や、やめろ……俺には金がある! 金を払うから——」
龍魔呂のナイフが、頭目の心臓を貫こうと振り上げられた、その瞬間。
『——警告! 警告! マイ・マスター(龍魔呂)! 敵の増援多数! アジトの地下から、重武装の悪党共が30人以上湧いてきます!』
龍魔呂の耳に装着された超小型インカムから、ポップで狂気じみた男の声が響いた。
マッドサイエンティスト・ガジェットからの通信だ。
ズズズズズ……!
廃教会の床が開き、全身を機械装甲で覆った重武装のゴロツキ共が、ガトリング砲や魔導ランチャーを構えて一斉に姿を現した。
「ハハハ! 楽しもうぜ、龍魔呂! 俺の作った【最高のオモチャ】、今すぐそっちに届けてやるよ!!」
上空で、空間(次元の壁)がガラスのようにひび割れ始めた。
凄惨な殺戮劇は、次元を超えた『狂気のオーケストラ』へと移行しようとしていた。