軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 3

ヒモニート狼王の襲来と、最強農民の『急速冷凍庫』

【ルナミス帝国 —— とある歓楽街のマンション】

「……チッ。あのトカゲ野郎、なんで働き始めてんだよ。俺まで肩身狭くなるじゃねぇか……」

ルナミス帝国の高級マンションの一室。

昼間からブラインドを下ろした薄暗い部屋で、一人の青年がベッドに寝転がりながらエンジェルすまーとふぉんを睨みつけていた。

彼の名は【狼王フェンリル】。

かつてクロノを封印した三柱(調停者)の一人であり、世界を凍らせるほどの絶対零度の力を持つ神話級の存在……なのだが。

「あー、クソッ! 昨日もパチンコ『CR異世界王道トラックでドン!』で、激アツのルチアナ・コタツ背景を外して大負けしたばっかだってのによぉ!」

彼は苛立たしげに『マルボロのアイスブラスト』に火をつけ、紫煙を吐き出した。

バトルジャンキーで働くのが大嫌いな彼は、夜の街でナンパした裕福な女の家に転がり込み、舎弟たちから巻き上げたシノギで「飲む、打つ、買う」を繰り返す、完全なる【ヒモニート】と化していたのだ。

『ピローン♪ ユニーバ様から全体メッセージ:「ポチ君を見習って、みんなも勤労の喜びを知りましょうね♡(威圧)」』

「ゲッ!? 宇宙神(トップ) からの名指しに近い圧!? こりゃマズい、このままこの部屋でダラダラしてたら、天界の監査局に目をつけられる……!」

フェンリルは慌ててレザージャケットを羽織り、窓を蹴り破って空へと飛び出した。

「ええい、こうなったら憂さ晴らしだ! あのトカゲが飼われてる『カイト農場』とやらを、俺の力で絶対零度の氷河期に変えてやるぜェ!!」

【地上 —— ポポロ村・カイト農場】

その日のカイト農場は、かつてないほどの出荷作業に追われていた。

「おいリーザ! キャルル! 手を止めるな! 今日の『米麦草』と『激甘トマト』は、ゴルド商会への特大ロットだ! 鮮度が命だぞ!」

「ひぃぃん! 暑いですの! トマトが傷む前に箱詰めなんて無理ですのー!」

夏の厳しい日差しの中、麦わら帽子にドテラ姿のカイトは、額の汗を拭いながら山積みの野菜ケースを前に舌打ちをした。

「チィッ……この気温じゃ、王都に運ぶまでに鮮度が落ちちまう。何か、強力な『冷却材』があれば……」

「——ハァーッハッハッハ!! 泣き喚け、人間どもォ!!」

その時、上空からけたたましい笑い声と共に、猛吹雪が吹き荒れた。

空中に浮かぶフェンリルが、無数の『氷槍』を展開し、農場へ向けて放つ構えを見せていたのだ!

「俺は調停者・狼王フェンリル! 勤労のストレスは、闘争で発散させてもらう! さぁ、絶望しろ! 俺の『絶対零度ブレス』で、お前らの大事な畑ごと、全てカチコチの氷像に変えてやるァ!!」

ゴォォォォォォッ!!

フェンリルの口から、触れるもの全てを凍結させる神話級の吹雪が一直線にカイトたちへと放たれた!

「きゃあああっ! 凍らされますのー!」

リーザたちが悲鳴を上げて頭を抱える。

——だが。

S級農民・カイトは、迫り来る絶対零度の吹雪を前にしても、一歩も引かなかった。

むしろ、その瞳は「待ち望んでいた最高の機材」を見つけたかのように、キラキラと輝いていた。

「……ほう。お前、なかなか良い『冷却機能』してんな」

カイトはドテラの懐から、極太の【赤ペン】を取り出した。

そして、空気を斬り裂くように赤ペンを一閃させ、空間に浮かび上がったフェンリルの『設定(概念)』に直接、強引な添削を書き込んだのだ!

【神話級・絶対零度ブレス(広範囲破壊魔法)】

【鮮度保持用・高性能急速冷凍システム(-2度設定)】

「な、なんだァ!?」

フェンリルが驚愕の声を上げる。

放たれた絶対零度の吹雪は、カイトの持つ『超硬度クワ』で綺麗に受け流され……なんと、山積みにされた野菜の出荷用ケースの中へと、ピンポイントで「ふわっ」と優しく注ぎ込まれていった。

「よし! トマトの表面温度、マイナス2度! 凍結はせず、細胞の活動だけを完全に仮死状態にする完璧なチルド温度だ!」

カイトがガッツポーズを取る。

「はぁっ!? な、何勝手に俺の吹雪を『保冷材』にしてんだテメェ!」

「おい、そこのフリーザー(狼王)。突っ立ってねぇでさっさと降りてこい! 出荷待ちの箱がまだ1000個あるんだ! 一箱につき3秒ピッタリの吹雪を吐き続けろ!」

「誰がフリーザーだ! 俺は誇り高き狼……あ、おい! やめろ! クワで俺のケツを叩くな!」

「いいから吐け! 鮮度が落ちるだろうが!」

数分後。

そこには、ベルトコンベアの前で首にタオルを巻き、流れてくる野菜の箱に向かって、涙目で「フゥーッ(冷気)」と吹雪を吐き続ける、狼王フェンリルの姿があった。

「なんで俺が……大根とキャベツの箱詰めラインで、氷吐き続けてるんだよぉ……! パチンコ行きてぇ……」

「よし、いいペースだ! お前、ウチの専属『冷蔵ユニット』として雇ってやるよ。時給は冷えたトマト3個な」

「安すぎだろブラック企業!!」

【神界セレスティア —— 女神のコタツ部屋】

『アッハハハハハハハッ!! ひーっ、お腹痛い!!』

ルチアナがコタツの上を転げ回って大爆笑していた。

『あ、あのバトルジャンキーのフェンリルが! カイトの赤ペン一発でただの「業務用・冷凍庫」にされましたわーっ!!』

カグヤも扇子を叩いて涙を流している。

『コメント欄も「ヒモニート、出荷ラインのパートおばちゃん化ww」「時給トマト3個は草」「これで三柱の二人がカイト農場の労働力(ラーメン屋と冷蔵庫)に堕ちたな」と大盛り上がりですぅ!』

リリスが嬉しそうにスパチャの集計を読み上げる。

かくして。

調停者すらも農作業のシステムに組み込むカイトの規格外の力により、ポポロ村の平和は今日も守られた……かに見えた。

だが、このギャグのような日常の裏で。

ポポロ村で小料理屋を営む一人の男の心に、かつての『凄惨な地獄』がフラッシュバックしようとしている事を、この時の神々はまだ知る由もなかった——。