軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 10

1000億Gの『超絶添削』と、炎上神の強制アカウントBAN

ズドォォォォォンッ……!!

ポポロ村の広場に突き刺さった、天界からの超巨大コンテナ。

その表面には『恒星太陽(所有権)』というふざけた 熨斗(のし) が貼られ、その横で借金の恐怖に耐えきれなくなった見習い女神・リリスが完全に泡を吹いて気絶していた。

「あわわ……ルチアナ先輩のブラックリスト入りが確定しましたわ……」

キャルルが青ざめ、元・勇者ゼロスと元・悪役ミラースは、宇宙規模の荷物を前に農作業の手を止めてガタガタと震えている。

だが、麦わら帽子を被ったS級農民・カイトだけは、呆れたようにコンテナに貼り付けられた『 請求書(カンペ) 』をベリッと剥がした。

「……1000億ゴールドの36回払い? 年率15%? 宇宙概念規模?」

カイトの目が、再び農業に対するド黒い狂気に染まる。

「恒星を一つ丸ごと買うなら、まずは土壌検査と日照権の確認からだろうが! それに、この太陽……『自家発光』ばかりで、土を育てるための『波長』の調整機能がついてねぇ! なにが宇宙規格だ、設計した神は素人か!」

「えっ……カイト様? 怒るポイント、そこですか……?」

リバロンが思わず素でツッコミを入れる。

カイトはドテラの懐から、神すら震え上がる【極太の赤ペン】を抜き放ち、キャップを吹き飛ばした。

そして、1000億Gの請求書と、コンテナの『所有権』の項目に、親の仇のように巨大な【バツ印(✖)】を書き込んでいく。

キュキュキュキュッ!!!

「請求金額1000億G? 却下だ! こんな欠陥品、農業従事者への『日照環境改善・特別補助金』として全額免除(経費)にする! 太陽の所有権? そんなもん俺の農場の『ビニールハウス用・全自動ヒーター(特大)』として仕様変更だ!!」

カイトが赤ペンで強引に書き換えた瞬間、宇宙の法則がねじ曲がった。

気絶しているリリスのポケットから落ちたエンジェルすまーとふぉんから、AI賢者君の間の抜けた音声が響く。

『ピローン♪ カイト農場からの補助金申請が受理されました。債務は全額相殺されます。また、恒星太陽のアクセス権限は、カイト農場へと完全に移行しました』

「……はぇ?」

リリスがむくりと起き上がる。

その瞬間、ポポロ村を覆っていた致死的な80℃の 異常気象(デス・ウェザー) が、ウソのようにスッと引いていった。

代わりに、空に輝く太陽から「カイトの畑」に向けてのみ、極めて心地よい、光合成に最適な温度と波長の光(ポカポカ陽気)がピンポイントで降り注ぎ始めたのだ。

「す、すごい……! 枯れかけていた『太陽芋』の葉っぱが、一瞬で息を吹き返しました!」

キャルルが歓喜の声を上げる。

「よし、 太陽(ヒーター) の調整は完璧だ。……さて、あとはこの『無断で設定温度をいじった害虫』の駆除だな」

カイトは、赤ペンで天界への【請求書】を新たに書き起こした。

【神界セレスティア —— 炎上神ワイズの配信ルーム】

「な、なんだとォォォッ!?」

ワイズは、手元の【エンジェルすまーとふぉん・無限】を血走った目で見つめていた。

画面には、真っ赤な文字で『ERROR: Permission Denied(アクセス権限がありません)』の警告が乱舞している。

「た、太陽のコントロールが効かない!? 私の……私の無限の 資金(ブラックカード) からのアクセスが弾かれているだと!? 相手はただの農民だぞ!」

ワイズが発狂しながらキーボードを叩きまくっていると、突然、彼のPCモニターに「麦わら帽子を被った男のド黒い笑顔」がポップアップで全画面表示された。

『おい、クソ神』

「ヒィッ!?」

『勝手に俺の農場のヒーター(太陽)の設定温度を上げてくれたな。おかげで土が乾燥しちまったじゃねぇか』

「か、カイト……! 貴様、神のシステムにどうやって……!」

『あ? 所有者なんだからアクセスして当然だろうが。……で、お前がさっきまでガンガン炊いてた【無駄な熱気(排熱)】が行き場をなくして余ってんだよ。エコじゃねぇからな、 操作主(おまえ) の部屋に 全部還元(リサイクル) してやる』

「は……?」

次の瞬間。

ワイズの配信ルームの空間が歪み、ポポロ村に降り注ぐはずだった『80℃オーバーの異常な熱気』が、圧縮された熱波となって部屋中に一気に逆流してきた。

ボワァァァァァァァァッ!!!!

「ギャアアアアアアアッ!? あ、あつぃぃぃ! 燃える! 私のハイブランドのオーダーメイドスーツがァァ!!」

最高級のインテリ眼鏡が熱でひび割れ、カプチーノのタンブラーがドロドロに溶ける。

さらに、ワイズの頼みの綱である【エンジェルすまーとふぉん・無限】が、異常な排熱に耐えきれず、バッテリーがパンパンに膨張し始めた。

「待って! 待ってくれ! このスマホには、私の今までのPVとスパチャの全データが……!!」

ワイズの悲鳴をよそに、世界中の視聴者が見ているゴッドチューブの生配信画面には、炎に包まれてタップダンスを踊るワイズの姿がバッチリと映し出されていた。

『ファッ!? ワイズ燃えてるwww』

『ヤラセ神のキャンプファイヤー配信キタ━(゜∀゜)━!』

『リアクション芸人だったのかよwww 100Gスパチャ!』

「笑うな! 課金しろ! 私を助け——」

チュドォォォォォォンッ!!!!!

バッテリーが限界を迎えた【無限スマホ】が大爆発を起こし、配信ルームが完全に黒焦げになった。

『ピローン♪ ゴッドチューブ運営よりお知らせします。当チャンネルは【過度な自傷行為・および室内での放火】の規約違反により、永久アカウントBAN(停止)となりました。収益は全て没収されます』

AI賢者君の無慈悲なアナウンスが響き、ワイズの画面は完全にブラックアウトした。

PV至上主義の炎上神は、自らが起こした熱(炎上)によって、文字通り全てを失ったのである。

【地上 —— ポポロ村・カイト農場】

「……よし、排熱処理も完了したな」

カイトが満足げに頷き、赤ペンをドテラの懐にしまった。

「ひぃぃ……神様を……神様を農業の理屈で物理的に燃やした……」

ゼロスがガタガタと震えながら草をむしり、ミラースは「俺は一生、この男の元で稲刈りをしよう……」と固く心に誓っていた。

「カ、カイトさん! 本当に借金、ゼロになったんですか!?」

涙目で縋り付いてくるリリスに、カイトはニヤリと笑った。

「おう。それどころか、あいつの焦げたチャンネルの残存収益を『違約金』として、お前の口座にぶち込んどいたぞ」

「えっ!? ほ、本当ですの!? ……ああっ! 残高が100万G(限度額MAX)に戻ってるぅぅぅ! カイトさん、一生ついていきますぅぅぅ!」

リリスが嬉し泣きしながら、エンジェルすまーとふぉんを天に掲げた。

「おい、龍魔呂! ポチ! このバカでかいヒーター(太陽)を使って、明日は『極炎・星涙トマト』の苗を植えるぞ! 宇宙規模の熱量だ、水やりは1秒遅れるだけで灰になるから気を引き締めろ!」

「承知した、相棒。まずは最高の土鍋を用意しよう」

「キュイイイッ!!(時間を巻き戻して発育を調整するね!)」

絶望の異常気象と1000億Gの借金地獄は、最強農民の『添削』により、あっさりと「最新鋭の農業設備」へと魔改造された。

ポポロ村の青空の下、カイト農場は今日も極めて規格外で、平和な収穫の時を迎えるのだった。