作品タイトル不明
EP 9
炎上神の『 異常気象(デス・ウェザー) 』と、見習い女神の宇宙規模ポチり
【神界セレスティア —— 炎上神ワイズの配信ルーム】
「……物理がダメ。魔法もダメ。機械兵器すら『 食材(エビ) 』にされる……」
薄暗いモニターの光に照らされたワイズの顔には、もはや余裕のインテリスマイルは欠片も残っていなかった。
目の下にどす黒いクマを作り、爪を噛みながら、【エンジェルすまーとふぉん・無限】の画面を異常な速度でスクロールしている。
「分かりましたよ……。あの農民の強さは、『 大地(フィールド) 』に依存している。ならば、フィールドごと焼き払えばいい! 農業にとって最大の絶望……それは『 天候(インフラ) 』の崩壊だ!!」
ワイズは狂ったように笑い声を上げ、スマホの『天界気象コントロール・アプリ』を起動した。
無限の 資金力(ブラックカード) に物を言わせ、神界の絶対ルールすら金で突破し、ポポロ村の直上の『太陽』の出力を強引にイジり始めたのだ。
「フフフ……日照りです。雨雲を完全に消去し、局地的に地表温度を80℃まで引き上げる! 農作物は瞬く間に灰になり、土はひび割れ、あの忌々しい農民も干からびる! さぁ、絶望の 炎上配信(デス・ウェザー) の始まりです!!」
本来なら、このような星の命脈を脅かす環境破壊は、絶対監査機関である【聖獣機神ガオガオン】の第2法(環境・衡平法の完全執行)に触れ、即座に焼却対象となるはずだった。
「ワイズ! あんたバカァ!? ガオガオンのAIに焼き殺されるわよ!」
コタツから飛び出したルチアナが青ざめて叫ぶが、ワイズは鼻で笑った。
「問題ありませんよ。現在、ガオガオンのAI(ガオン丸)は、朱雀と青龍のドロドロの浮気問題のせいでメンタルを病み、新橋のガード下でヤケ酒を飲んで 出社拒否(ストライキ) していますからね。今の神界のセキュリティはガバガバなんですよ!」
【地上 —— ポポロ村・カイト農場】
「あッッッッつぅぅぅぅ!!?」
ポポロ村の中央広場で、元・勇者ゼロスが悲鳴を上げて地面を転げ回っていた。
空からは、目が痛くなるほどの異常な太陽光が降り注ぎ、空気はサウナのように歪んでいる。
「カイト様! 異常事態です! 気温が急激に上昇し、水路の水が沸騰し始めています!」
「……チッ、俺の 闇魔法(ブラックホール) で日傘を作っても、この熱気は防ぎきれんぞ……!」
リバロンが汗だくになりながら報告し、ミラースが自身の魔力を総動員して村の作物を影で覆おうとするが、限界が近づいていた。
強烈な直射日光により、収穫間近だった『太陽芋』の葉がチリチリと焦げ始め、『月見大根』の頭が干からびていく。
「……あわわわわ! 私の、私のみたらし団子の蜜が、熱でカチカチのべっこう飴に……ッ!」
たまたまルナキン(ファミレス)の帰り道でポポロ村に寄り道していた見習い女神・リリスが、ジャージ姿で涙目になっていた。
だが、誰よりも静かに、そして誰よりも深い怒りを湛えている男がいた。
カイトである。
彼は干からびかけた畑の土をすくい上げると、ギリッ……と歯を食いしばった。
「……土の水分が飛んでる。 微生物(いのち) が、人為的な『熱』で殺されかけてやがる」
カイトの全身から、これまでとは比にならない——空の異常な熱気すら凍りつかせるほどの【極黒の農業オーラ】が立ち昇った。
その怒りは、ゼロスを殴った時や、機械兵器をエビ天にした時の比ではない。「土を殺す」という行為は、S級農民にとって絶対に許されない大罪なのだ。
「……おい、初心者マークの女神」
「ひゃいッ!?」
カイトの低く冷たい声に、リリスがビクッと直立不動になる。
「てめぇの持ってるその『エンジェルすまーとふぉん』。あれで、天界のシステムにアクセスできるな?」
「え、あ、はい! 月額1万円課金してる『賢者君(AI)』がサポートしてくれますけど……」
「そうか。なら……あのイカレた『太陽』の所有権、今すぐ俺の名義で買い取れ」
「……………………はぇ?」
あまりにもスケールのデカいカイトの言葉に、リリスの思考が数秒フリーズした。
「た、太陽の……所有権!? カイトさん、何言ってるんですか! さっきアプリで調べましたけど、恒星太陽の全所有権(宇宙概念規模)なんて……【1000億ゴールド】もするんですよ!? 私の限度額、100万円(ルチアナ先輩のクレカ)ですよ!?」
リリスがパニックを起こして首をブンブンと振る。
「そんなのポチッたら、強制リボ払いで一発破産です! 天界の黒服レスラーに身ぐるみを剥がされて、遠洋宇宙マグローザ漁船にドナドナされちゃいますぅぅぅ!!」
「ごちゃごちゃ言ってねぇで買え。俺の農場の『経費(ビニールハウス用ヒーター)』として落とす。後の支払いのケリは俺がつけてやる」
「ム、ムリですぅぅぅ!」
「いいから貸せ!!」
カイトが強引にリリスのスマホを奪い取る。そして【極太の赤ペン】のペン尻で、画面に表示されていた『太陽恒星の所有権(1000億G)』の【購入】ボタンを、親の仇のように強くタップした。
『ピローン♪』
AI賢者君の、ひどく間の抜けた電子音がポポロ村に響き渡った。
『ご購入ありがとうございます。お支払いは「36回払い・年率15%の強制リボ払い」が適用されます。ルチアナ様のカードは限度額超過により、爆発しました。まもなく、所有権の証明として【現物】が配送されます』
「……現物?」
ミラースが怪訝な顔をして空を見上げた。
ドズゥゥゥゥゥンッ……!!!!
次の瞬間、ポポロ村の広場の中央に、見上げるほどの超巨大な漆黒のコンテナが音速で降臨した。
コンテナの表面には、天界の紋章と共に『恒星太陽(所有権)~ご購入ありがとうございます~』というポップな 熨斗(のし) が貼られている。
「あ、あばばばば……っ! クレカが……ルチアナ先輩のクレカがぁぁ!」
リリスは健康サンダルを脱ぎ捨て、大地に額を擦り付けて泡を吹き、完全に気絶した。
「よし、太陽は俺の 農場(モノ) になった」
カイトは麦わら帽子を深く被り直し、1000億Gの 請求書(コンテナ) の前に立った。
「神の台本だか異常気象だか知らねぇが……農家を怒らせたらどうなるか、 宇宙規模(スケール) で教えてやる」
最強農民の【究極の添削】が、ついに惑星の概念すら覆そうとしていた——。