作品タイトル不明
EP 10
【ハナマル】エターナル大豊作! 害虫駆除と特大の赤ペン
創造世界『エターナル』の空を覆い尽くす、数十億の「デリート・イナゴ(初期化バグ)」。
それに立ち向かうのは、世界最強の農民カイト率いる、農業に脳を焼かれたエターナル支部の面々だった。
「ヒャッハー! 畑の害虫は一匹残らず肥料にしてやるぜ!!」
先陣を切ったのは、スリの少年シオン。
「鬼神流 絶花・包丁術――『瞬殺・微塵切り(害虫駆除モード)』ッ!」
シオンが神速で【ペティナイフ】を振るうと、空から迫る数万のイナゴが一瞬にして極小サイズのポリゴンの塵と化し、畑の土へと還っていく。
「どけぇぇぇ! 害虫ごと畑を耕すドスンダァァ!」
凄まじい轟音と共に、雷土魔将軍ドスンダが時速150キロで大地を爆走。左手のハンマーでイナゴの群れを叩き潰し、右手の双剣で土ごとミンチにしていく。
「スアイ! グレン! 食材(イナゴ) の鮮度が落ちる前に下処理をしろ!」
後方で巨大な中華鍋を構えた鬼神 龍魔呂が、タバコを咥えながら指示を飛ばす。
「お任せを。絶対零度の氷魔法で、細胞を瞬時に瞬間冷凍しますわ!」(スアイ)
「からのぉぉ! 炎魔法による絶妙な 焙煎(ロースト) ! 臭みを完全に飛ばしてやる!」(グレン)
氷と炎の将軍による完璧な連携。ローストされ、香ばしい匂いを放つようになったイナゴの群れが、パラパラと龍魔呂の構える大鍋へと吸い込まれていく。
龍魔呂はそこに、天界ネットスーパー級の極上醤油と砂糖、そして自身の【赤黒い闘気(旨味)】を注ぎ込み、豪快に鍋を振るった。
『バ、バカな!? 我ら天界コンプライアンス委員会が放った最強のデリートプログラムが、ただの「 佃煮(つくだに) 」に調理されているだと!?』
上空のホログラムで、お堅い神々が泡を吹いて驚愕している。
「さあ勇者ユート! ワシの作った【究極の腐葉土】の 魔力(バフ) 、すべてお主に託すぞい!」
魔王ゴウマが、両手剣を杖のように掲げて叫ぶ。
「うおおおおおっ! 筋肉の細胞一つ一つに、大地の栄養が満ちていくぅぅぅ!!」
腐葉土の超絶バフを受けたユートの大腿四頭筋と広背筋が、限界を超えてパンパンに膨れ上がる。彼が構える【超硬度クワ】の切っ先が、黄金のオーラを放ち始めた。
「行け、ユート! この世界の『収穫』の力、神様どもに見せつけてやれ!!」
カイトの号令が響く。
「S級農業奥義――『天地開闢・ 大耕耘(グランド・プラウ) 』ッッ!!!」
ユートが渾身の力でクワを天に向かって振り抜いた!
その瞬間、大地から放たれた黄金の斬撃(耕耘のオーラ)が、空を覆っていた残りのデリート・イナゴをすべて一掃し、上空の「ブルースクリーン(青空のバグ)」すらも真っ二つに切り裂いた。
エターナルの空に、本来の澄み切った青空が戻る。
『ひぃぃぃっ!? バ、バグが……我々のプログラムが、ただの筋肉とクワの力で完全に消滅した!? こんな非常識な世界、やはり今すぐサーバーの電源ごと落として――』
「おい、てめぇら」
上空の神々(ホログラム)の目の前に、いつの間にかカイトが跳躍していた。
その右手には、極太の【赤ペン】が握られている。
「テンプレだの規約だの、くだらねえ事ばかり気にしやがって。いいか? 世界を作るってのはな、ただ用意された箱庭で遊ぶことじゃねえ。種を撒き、泥にまみれ、自分の手で『新しい命(作物)』を育て上げるってことだ!!」
カイトは赤ペンを構え、天界の委員会に向かって吠えた。
「このエターナルの連中はな、自分たちの意志で剣を捨ててクワを持ったんだ! 己の欲望で大地を耕し、読者(視聴者)の心を震わせる世界を自らの手で作り上げたんだよ! それを『規約違反』の一言で消そうとするてめぇらは、編集者失格……いや、神様失格だ!!」
カイトは空をキャンバスに見立て、超極太の赤ペンで、エターナルの空全体を覆うほどの巨大な、巨大な――
【特大のハナマル】を描き切った!!
「この 世界(エターナル) は、100点満点だ!!!」
ドッゴォォォォォン!!!
カイトの【赤ペンの波動】が神々を直撃。
同時に、龍魔呂が完成させた『イナゴの極上佃煮』の暴力的なまでに美味そうな匂いが、天界の委員会の鼻腔を直撃した。
『あ……あぁ……。な、なんというハナマルの温かさ。そして、この下界から漂ってくる、甘辛く芳醇な香りは……』
『ダメだ……規約など、どうでもよくなってきた……。白米……アツアツの白米と、あの佃煮を食べさせてくれぇぇ!!』
神々は涙を流しながらホログラムの向こう側で白旗を揚げた。
「ふぇぇぇ! 天界コンプライアンス委員会から、『エターナル世界の完全公認』及び『ゴッドチューブ・殿堂入りチャンネル認定』の通知が来ましたぁぁ!」
リリスがスマホを見て歓喜の声を上げる。
「カイト社長! 殿堂入りによる特別ボーナスと、これからの農作物の先物取引で、数千億ゴールドの利益が確定しましたわ! これでこの世界は 永遠(エターナル) に安泰です!」
聖女(CFO)リリナが、電卓を天に掲げて叫んだ。
広場では、勇者、魔王、元四天王、そしてスリの少年が、龍魔呂の作った『イナゴの佃煮』をつまみに、自家製ビールで祝杯を挙げていた。
かつて中身スッカスカだったクソゲーの世界は、宇宙一熱くて美味い「農業ユートピア」として、完全に生まれ変わったのだ。
「……終わったな、カイト。帰るぞ。コタツのみかんが干からびちまう」
龍魔呂がエプロンを脱ぎながら言う。
「ああ。最高の出張だったぜ」
カイトは麦わら帽子を直し、エターナルの青空と、笑い合う住人たちを見上げて、満足げに笑った。