軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 7

【添削不可】最強のソロキャン女帝と、究極の「ととのい」

創造世界『エターナル』、魔王城・氷の領域。

農業トラクターと化した雷土魔将軍ドスンダを畑に放置し、カイトは息巻いて次なる標的の部屋へと乗り込んだ。

「おい氷魔将軍スアイ! てめぇのその『無意味なエロス』の設定を修正してやる! そもそも極寒の氷魔法使いが、防御力ゼロのビキニアーマーを着てるなんて狂気の沙汰だ! 読者に媚びただけのセクハラ装備なんか、俺の赤ペンで――」

バーーーンッ!!!

カイトが極太の赤ペンを握りしめて氷の扉を蹴り破る。

しかし、その部屋の中に「ビキニアーマーの妖艶な魔族」の姿はなかった。

代わりにそこにいたのは――。

「あぁ、ちょうど良かったカイトさん。私も今、全く同じことを思っていたところですわ」

美しい銀髪をポニーテールにまとめ、絶世の美貌を持つ永遠の17歳、スアイ。

彼女が着ていたのは、露出度の高い鎧などではない。撥水・防風・透湿性・ストレッチ機能に優れた、ガテン系ホームセンター『タローマン(TAROMAN)』の【イージス・プロ防寒ツナギ(上下セット4900円)】だった。

「……え? お前、そのクソダサ……いや、めちゃくちゃ機能的で暖かそうな服はどうした?」

カイトが赤ペンを持ったままポカンとする。

スアイは部屋の隅にあるゴミ箱を指差した。そこには、リリスが初期設定で用意したビキニアーマーが、ズタズタに引き裂かれて捨てられている。

「なぜ寒いのにビキニを着なければならないのですか? 私はB:95 W:58 H:88という、リリス様が設定した異様に生々しいスリーサイズ指定にも嫌悪感を抱いていました。無意味なエロスは色気ではなく、ただのセクハラですわ」

「ふぇぇ……すいませんですぅ、当時そういうのがウケると思って適当に入力しちゃいましたぁ……」

カイトの後ろで、リリスが『タローマン』のカタログを見ながら小さくなっている。

「世俗が鬱陶しいですわ。勇者だの魔王だの、馬鹿馬鹿しい。……ということで、先ほど魔王ゴウマの机に『退職届』を叩きつけてきましたの。私は今日から【最強の女帝】に自らクラスチェンジし、自由なソロキャンパーとして生きていきます」

スアイはそう言うと、背中に巨大なバックパックを背負い、自身の武器である【無限鎖の 片手斧(インフィニティ・アックス) と片手盾】をガチャリと腰に装着した。

「おい待て、退職って……お前、これからどうする気だ?」

「決まっていますわ。ポポロ村の山を切り拓いて、私の氷魔法で『年中パウダースノーが楽しめる最強のスキー場』を建設します。この武器をご覧ください」

スアイが片手斧を振り回すと、どこまでも伸びる絶対に切れない鎖が、部屋の太い氷の柱に巻き付いた。

「この鎖と斧は、大木を切り倒し、丸太を牽引するための完璧な『林業用ウインチ』です。そしてこの頑丈な盾は――」

スアイが盾を構えて突進のポーズをとる。

「山の斜面を平らに整地するための『ブルドーザー』として使いますわ」

「完璧じゃねえか……!!」

カイトの目に、先ほどの怒りは完全に消え去り、代わりに「開拓者へのリスペクト」という熱い涙が浮かんでいた。

「さらに、です。先日転職された炎魔将軍グレンさんに、サウナストーンを極限まで熱してもらいます。そこで極上のロウリュを行い、火照った身体を、私の氷魔法で作った『絶対零度の水風呂』で締める……。大自然のDIYサウナで【ととのう】こと。それこそが究極の 平和(エターナル) ですわ!」

「素晴らしい……! まさか俺が手を下す前に、自らの意志で『開拓農業とアウトドアの真理』に辿り着く奴がいたとは……!」

カイトは震える手で赤ペンを握り直すと、スアイが着ているタローマンのツナギの背中に、特大の【ハナマル】を全力で書き込んだ。

「よし! スアイ、お前はもう合格だ! 今日からお前は『ポポロ山スキー場・代表取締役社長』兼『カイト農場・林業サウナ部門長』だ! 好きに山を拓け!」

「ええ、言われるまでもありませんわ。では、お先に失礼します(シュタッ)」

スアイは風のように魔王城から去っていった。

その直後、リリスの持つ『エンジェルすまーとふぉん』から、けたたましい通知音が鳴り響いた。

「アバババババ!! カイトさん、大変ですぅ! エターナルのゴッドチューブPV率が、見たこともない速度で跳ね上がってますぅ!!」

「なんだと?」

リリスが震える手で見せた画面。

そこには、『【タローマン女子】元魔王軍幹部がソロキャンとDIYサウナでととのってみた【開拓】』というスアイの配信チャンネルが、天界の神々からのスーパーチャット(投げ銭)の嵐で埋め尽くされていた。

『ビキニよりツナギ着て汗かいてる方が圧倒的にエロい!』

『斧と盾を重機代わりにするの実用性高すぎワロタ』

『サウナ行きたくなってきた……神聖業務休も』

「……時代はテンプレエロじゃねぇ。機能美とDIY(開拓)なんだよ。リリス、お前のクソゲーもようやく軌道に乗ってきたな」

カイトが満足げに頷く。

「ふぇぇ……スアイちゃんが一人で勝手にバズっただけですけど、結果オーライですぅ!」

一方その頃、魔王城の最上階。

炎(焼き畑)、雷・ 土(トラクター) 、そして氷(林業・サウナ)と、すべての四天王を失い、さらに机の上に叩きつけられた『退職届』を見つめる魔王ゴウマは、一人ポツンと玉座で涙を流していた。

「……ワシ、これから誰と世界を征服すればいいんじゃ……?」