軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 5

【添削】炎魔将軍と、究極の焼き畑農業

創造世界『エターナル』、魔王城の奥深く。

薄暗いオフィスで、一人の魔族がデスクに向かい、山積みの書類と格闘していた。

炎を自在に操る両手剣使い、魔王軍四天王の一角――炎魔将軍 グレンである。

「ええと、来月のスケルトン部隊の有給申請が3件……。スライムの備品補充費が……って、なぜ私がこんな事務整理ばかりやらされているのだ。私は将軍だぞ……」

グレンが胃薬を水で流し込み、深いため息をついたその時。

オフィスの堅牢な扉が、バーンッ!!と凄まじい音を立てて蹴り破られた。

「遅い!! 遅すぎる!!」

「な、なんだ貴様は!? ここを魔王軍の拠点と知って――」

侵入者――麦わら帽子にクワを背負ったカイトは、グレンの言葉を遮り、デスクの上に『極太の赤ペン』を叩きつけた。

「お前が炎の将軍グレンだな!? なんで1話目で勇者の村を焼き払いにこない! もう作中時間で6話目だぞ! 序盤のヘイト稼ぎと勇者の覚醒イベントをサボって、なぜ書類のハンコ押しなんかやってるんだ!!」

「ひぃっ!? い、いや、私としては組織としての方向性の違いというか……急に『現場に出て村を焼け』と言われても、私は根っからのデスクワーク派でして……」

「言い訳するな! 読者は待ってくれないんだよ! 村を焼くのが遅いってだけで、ブラウザバックされるんだぞ! さあ、今すぐ出撃して村を焼け! 炎魔将軍の意地を見せてみろ!!」

カイトは有無を言わさず、グレンの襟首を掴むと、窓ガラスを突き破って魔王城から飛び降りた。

「ぎゃあああああ!! 高所恐怖症なんですぅぅぅ!!」

――数十分後。

カイトに引きずられ、始まりの村『テンプレッタ』に到着したグレン。

しかし、彼の目に飛び込んできたのは、平和な村の風景ではなかった。

「フンッ! ハッ! 大地の呼吸を……感じる!!」

「ユート! 鍬の振り幅が1ミリずれてるわよ! 減給10%!」

「師匠(龍魔呂)! ゴブリン3匹、完璧にみじん切りにしました!」

村の広場は、筋骨隆々になった勇者が超高速で畑を耕し、聖女が電卓を叩き、スリの少年が魔物をオーガニック肥料に変えるという、完全に「狂気の農場」と化していた。

「な、なんだこれは……。これが勇者パーティー……? 完全にヤバい宗教施設ではないか……」

グレンがドン引きして後ずさる。

「さあグレン! お前の炎で、この村(畑)を焼き払ってみろ!」

カイトが背中をドンと押す。

「や、やってやる! 炎魔将軍の恐ろしさ、その身に刻め! くらえ、インフェルノ・フレア!!」

グレンが両手を突き出すと、灼熱の業火が広場の畑に向かって解き放たれた。

だが、カイトは全く動じず、むしろ目を輝かせた。

「ユート! シオン! 今だ、炎を囲い込め!!」

「おうっ!」

「はい、カイトさん!」

勇者ユートのクワによる超高速の土木工事で防火堤が一瞬で形成され、シオンの絶妙な風圧コントロールによって、グレンの放った炎は「畑の不要な雑草と害虫」だけを焼き尽くし、あっという間に鎮火した。

後に残ったのは、灰が混ざり合い、完璧に殺菌された極上の「栄養満点な土」だった。

「す、素晴らしい……!!」

カイトが感極まって叫ぶ。

「グレン! お前の炎は温度管理が完璧だ! 土の微生物を殺しすぎず、雑草だけを灰にする絶妙な火力コントロール! これぞ最高の『焼き畑農業』だ!!」

「や、焼き畑……?」

グレンがポカンとする。

「ああ! この灰はカリウムを豊富に含んだ最高の肥料になる! 事務仕事なんかでくすぶってる場合じゃないぞ! お前の炎は、世界中の大地を豊かにするためのものだ!」

カイトが特大の赤ペンで、グレンの胸当てにババンッ!と【ハナマル】を書き込む。

「私を……認めてくれるのか……? 魔王様でさえ、私をただのハンコ押しマシーンとしか見ていなかったのに……」

グレンの目から、ポロリと涙がこぼれ落ちた。

「グレンさん! 一緒に世界一のキャベツを作りましょう! 素晴らしい炎でした!」

ユートが泥だらけの手で握手を求める。

「……ああ。私、やってみるよ! 書類じゃなくて、大地を焼いてみせる!」

こうして、魔王軍の恐るべき四天王の一人は、勇者と戦うことなく、カイト農場エターナル支部の「焼き畑・土壌殺菌担当」として、圧倒的なやりがい(と筋肉痛)を見出してしまったのである。