軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二十七章 エターナル大改修編

【添削】みかんとコタツ、そしてクソゲー(エターナル)へのログイン

ポポロ村、カイト農場。

季節外れの吹雪が吹き荒れる外の景色とは裏腹に、母屋の居間は天国のような暖かさに包まれていた。

「……ふぅ。やっぱ冬はコタツで『極甘みかん』に限るな」

ドテラを着込んだカイトが、コタツに深々と潜り込みながらみかんを頬張る。

その対面では、黒のタートルネックを着た鬼神 龍魔呂が、真剣な眼差しでみかんと対峙していた。

「鬼神流 絶花・包丁術――『蜜柑剥き(ミカン・ストリップ)』」

シャシャシャッ! と、龍魔呂の手元で【ペティナイフ 120mm】が神速の瞬きを見せたかと思うと、みかんの皮と白いスジが「0.01ミリ」の狂いもなく完璧に削ぎ落とされ、宝石のような果肉だけが皿の上に鎮座した。

「……食え。白いスジは舌触りを悪くするからな。極限まで甘味を引き出しておいた」

「お前、暗殺の技術を果物の皮剥きに使うのやめろよ……美味いけど」

世界最強の農民と死神が、コタツでみかんを食いながら平和の極みを満喫していた、その時。

バーーーンッ!!!

居間のふすまが勢いよく吹き飛び、涙目になった上級女神ルチアナがスライディング土下座で突っ込んできた。

「カイトぉぉぉ! 助けてぇぇぇ! このままだとリリスが、マグローザ漁船にドナドナされちゃうわぁぁ!」

「あ? なんだ急に」

カイトが怪訝な顔をすると、ルチアナの後ろから、ピンクの初心者ジャージを着たリリスが、みたらし団子を齧りながらズビズビと鼻をすすって現れた。

「ふぇぇぇ……カイトさぁん。私がファミレスの『ルナキン』に3日間こもって、予算100万ゴールドで作った創造世界『エターナル』が、大ピンチなんですぅ……」

リリスが差し出したエンジェルすまーとふぉんの画面には、神々の動画配信サイト『ゴッドチューブ』の管理画面が映し出されていた。

そこにはデカデカと【現在PV率:0.001%(打ち切り圏内)】の文字が点滅している。

「あのね、天界のテンプレ保守派の神々が『こんな面白くない世界、サーバーの無駄だ!』ってブチギレてて……。このままだとエターナルは強制削除! 責任者のリリスは借金全額一括返済&遠洋漁業行きなのよ!」

ルチアナが頭を抱えて叫ぶ。

「……知るか。自業自得だろ。そもそも『予算100万』で適当に作った世界なんて、中身スッカスカに決まってんじゃねえか」

カイトが冷たく言い放ち、コタツに潜り直そうとする。

「お願いですぅ! カイトさんのその『赤ペン』で、エターナルの世界をテコ入れ(編集)してほしいんですぅ! カイトさんなら、あのクソゲー……いえ、素晴らしい世界を救えます!」

「断る。俺は明日、冬キャベツの収穫があるんだよ」

「……カイトぉ、お願いよぉ! ちなみにその世界、『農業の概念』が未発達で、村人はみんなカチカチの黒パンと塩水ですすり泣いてるわよ!」

ピクッ。

カイトの動きが止まった。

「……なんだと?」

コタツの布団が、バサァッ!と跳ね上げられる。

「農業が、未発達だと……? 土の匂いも知らない、自分で育てたトマトの丸かじりも知らないまま、テンプレな魔王討伐なんてやってるってのか……!?」

カイトの目から、ドス黒い【農業への狂気】が漏れ出し始めた。

傍らでみかんを食っていた龍魔呂が、「……チッ。火が点きやがったな」と呆れ顔で角砂糖を噛み砕く。

「許せねぇ。農業の喜びを知らない世界なんて、存在価値がねぇ! おいリリス、そのスマホ貸せ!」

カイトは麦わら帽子を被り直し、背中に愛用の【超硬度クワ】を背負うと、胸ポケットから『極太の赤ペン』を取り出した。

「いいだろう。俺がその『エターナル』とやらに出張して、中身スッカスカの連中に『本当の欲望』ってやつを叩き込んでやる。たつまろ、留守番頼むぞ」

「……長引くなら弁当を持っていけ。向こうの飯は不味そうだからな」

龍魔呂が、さきほど剥いた極上みかんと、特製のおにぎりをタッパーに詰めて放り投げる。

「サンキュー! よし、リリス、ルチアナ! 案内しろ!」

リリスがエンジェルすまーとふぉんの『管理者権限・ダイブ』のアプリを起動すると、居間の空間がぐにゃりと歪み、デジタルな光のゲートが出現した。

「行きますよぉ! 創造世界『エターナル』へ、強制ログインですぅ!」

光に包まれ、次元の壁を越えるカイト。

目を開けると、そこは――ポリゴンが粗く、空の色もどこか薄っぺらい、見渡す限りの「テンプレ平原」だった。

「……ひどいな。土のグラフィックが手抜きすぎる。これじゃあ大根一本育たねぇぞ」

カイトは足元の乾いた土を蹴り飛ばすと、極太の赤ペンを天に向かって突き上げた。

「さあ、始めようか。このクソゲーを、最高の『農業世界』に書き換えてやる!」