軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 9

【厄災】飢饉の神、ポポロ村に降臨す

「ふぇぇ……今日もポポロ村は平和ですねぇ」

カイト農場の縁側。

リリスは、先日の魔王卵かけご飯からすっかり居着いてしまった元大天使・ザドキエル(現在は緑ジャージ着用)と共に、縁側でスイカを頬張っていた。

目の前の広大な畑では、 古代地獄竜(ポチ) がせっせと雑草を食べ、巨大機神ラビークが寸分の狂いもないトラクター作業を行っている。もはやファンタジーの欠片もない、異次元の農業風景である。

しかしその時、突如として上空の太陽がドス黒く変色し、世界から「水分」が急激に失われ始めた。

『愚カナル人間ドモヨ……。我ハ天界ヨリ遣ワサレシ、飢饉ト枯渇ノ神・カラミティウス……!』

空が割れ、枯れ木のような四肢と山羊の頭を持つ、禍々しい邪神が降臨した。

借金を踏み倒し、 監査官(ザドキエル) まで堕落させたポポロ村に対し、天界上層部がついに「村の完全なる物理的消滅(干ばつ)」を決定したのだ。

邪神カラミティウスが息を吐き出すと、周囲の草木が一瞬にして枯れ果て、大地がひび割れていく。

「アバババババ!! ガチのヤバい神様が来ちゃいましたぁぁ! 村の水分が全部吸い取られて干からびますぅ!」

リリスが干し柿のようにシワシワになりながら叫ぶ。

だが。

畑のど真ん中で、土の様子を見ていたカイトの顔は、かつてないほどの「ガチギレ」に染まっていた。

「……てめぇ。俺が徹夜で調整した、畑の『土壌水分量』と『pHバランス』を……たった一瞬で崩しやがったな?」

そしてもう一人。

仕入れのためにカイト農場を訪れていた、小料理屋『鬼龍』の店主・鬼神 龍魔呂。

彼は無言で角砂糖を噛み砕き、真鍮製のオイルライターを取り出した。

カチッ。

「……俺が今夜の刺身に使うために、極限の温度管理で熟成させていた高級魚……。その表面を0.1ミリ乾燥させやがったな。万死に値する」

龍魔呂の背後から、神のオーラすら食い殺す**【赤黒い闘気】**が天を衝く勢いで爆発した!

『ハハハ! 下等生物ガ喚イテモ無駄ダ! 我ハ概念トシテノ「飢饉」! 物理的ナ攻撃ナド――』

「鬼神流 絶花・包丁術――『神降ろし(三枚おろし)』」

カラミティウスが言い終わるより早く、龍魔呂が【柳刃包丁 330mm】を神速で振るった。

斬られたのは肉体ではない。カラミティウスが纏っていた「飢饉の 概念(バリア) 」そのものが、料亭の魚のように完璧な三枚おろしにされ、パパァン!と空中に弾け飛んだのだ。

『ガハァッ!? バ、バカな!? 我ガ絶対防御ノ概念ガ、タダノ調理工程トシテ処理サレタダト!?』

「カイト! 鱗(バリア) は剥がしたぞ。あとは好きにしろ」

龍魔呂がタバコに火をつけながら言い放つ。

「おうよ! 最高の『 有機肥料(オーガニック) 』にしてやるぜ!」

カイトは麦わら帽子を深く被り直し、漆黒の機神ラビークのコックピットへ跳躍した。

「喰らえ! S級農業スキル:【天地返し・極】× 機神ラビーク【全自動超精密ロータリー(神殺しモード)】!!」

ギュイィィィィィィィンッ!!!

凄まじい轟音と共に、背部の超硬度ロータリーを高速回転させた機神ラビークが、時速300kmで邪神カラミティウスに突撃した!

『ヒィィィィッ!? マ、マテ、我ハ神ダゾ! 命ヲ奪ウ飢饉ノ――』

ドゴガガガガガガガガガッ!!!

無慈悲な超硬度ブレードが、邪神の体を大地もろとも粉砕し、豪快に「耕して」いく。

カラミティウスの持つ膨大な神のエネルギーが、細かく砕かれて土と混ざり合い、これ以上ない極上の『神級有機肥料』として畑に還元されていった。

『ギャアアアア……! なぜ我ガ、土ニ栄養ヲ与エテイルノダァァァ……!(消滅)』

数分後。

そこには、神の魔力をたっぷりと吸い込み、黄金に輝く「フカフカの超絶極上土壌」が完成していた。

「よし! これで明日のキャベツは、糖度と魔力が3倍になるぜ!」

カイトが満足げにコックピットから飛び降りる。

「……手間をかけさせやがって。明日の店のお通しは、邪神の魔力漬けキャベツにするか」

龍魔呂が呆れたように包丁をしまった。

「ふぇぇぇ……。天界の最高戦力が、完全に『ちょっと高級な腐葉土』として処理されちゃいましたぁ……」

リリスとザドキエルは、あまりのカオスぶりに言葉を失い、ただただ光り輝く畑を見つめることしかできなかった。

こうして、ポポロ村を襲った未曾有の厄災は、最強の農民と最強の料理人(と巨大ロボ)によって、村の「生産力」をさらに底上げするための踏み台に過ぎなかったのである。