軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 5

【制裁】傲慢な騎士団と、地獄のハバネロ再び

前回の『魔王卵のTKG騒動』から数日後。

全村民が物理ステータスカンストを果たし、もはや魔王軍の拠点より防衛力が高くなったポポロ村に、空気を読まない来訪者がやってきた。

「ふん、相変わらず小汚い辺境の村だな。おい貴様ら、我々を誰だと心得る! 王都より遣わされし、栄光の『第一徴税騎士団』であるぞ!」

銀の鎧をチャラチャラと鳴らし、傲慢な態度で馬から降りたのは、顔に「小者」と書いてあるような騎士団長と、数十人の部下たちだった。

彼らの目的は一つ。この辺境の村から、難癖をつけて食料と金を搾り取ることだ。

「おい、そこのババア! 今年の税として、村の備蓄をすべて差し出せ!」

騎士団長が、ホウキで道を掃いていた村の老婆(御年82歳)を怒鳴りつける。

「あらあら、お客さんですかぁ? 今、ちょうど『S級魔獣の骨』を砕いてお掃除してたところなんですよぉ(ウフフ)」

老婆がホウキでポンッと叩いた大岩が、豆腐のように真っ二つに割れた。

「……は? いや、見間違いか。それより、まずは腹ごしらえだ! この村で一番いい飯屋に案内しろ!」

騎士団長たちは、老婆の物理カンストに気づかないまま、村の裏通りにある一軒の店へとズカズカと押し入った。

そこは、ポポロ村の聖域――小料理屋『鬼龍』。

「おい亭主! 王都の騎士様のおなりだ! 酒と一番高い肉を持ってこい! もちろん『視察』だからタダだぞ!」

ドカドカと土足で上がり込み、カウンターを剣の柄で叩く騎士たち。

奥で静かにうどんを啜っていたリリスが、「ふぇ? ガラの悪いお巡りさんですぅ?」と首を傾げる。

厨房の奥。

まな板の前で仕込みをしていた鬼神 龍魔呂の手が、ピタリと止まった。

「…………」

龍魔呂は無言のままエプロンのポケットから角砂糖を取り出し、ガリッと噛み砕いた。

そして、真鍮製のオイルライターを取り出す。

カチッ。

その瞬間、『鬼龍』の店内から「光」が消えた。

騎士たちの足元から、這い上がるような**【赤黒い闘気】**が立ち込める。

「な、なんだこの尋常じゃない殺気は……!? 息が、できな……ッ!」

騎士団長が喉を押さえて後ずさる。

(……カタギの店で、タダ飯を要求するダニ共め。この場で『 四分割(クァルテット) 』にして、豚の餌にしてやる……!)

龍魔呂が、鈍い光を放つ【牛刀 210mm】を逆手に構え、完全なる殺人鬼『DEATH4』の目をした、その時だった。

「ストーップ! たつまろ、やめろやめろ! 店が血で汚れたら、明日の営業に響くだろ!」

バンッ!と引き戸を開けて飛び込んできたのは、麦わら帽子姿のカイトだった。

「チッ……カイトか。俺の仕事の邪魔をするな」

龍魔呂が舌打ちをして闘気を少しだけ緩める。

「お前はすぐ殺そうとするからダメなんだよ。……おい、騎士のオッサンたち。うちの 親友(ツレ) が怒っちまったみたいだが、俺がとりなしてやる。その代わり、この村の『最高級特産品』を使ったパスタを食ってくれないか? もちろんタダでいい」

カイトはそう言うと、ポケットからゴトリと**「真っ赤な果実」をカウンターに置いた。

それは、S級ダンジョン【絶望の深淵】の最下層、マグマの近くでカイトが品種改良して育て上げた狂気の作物――『 致死量(デス) ・ハバネロ』**だった。

「……カイト。お前、こいつらを殺す気か?」

龍魔呂が呆れたように呟く。

「バカ言え、ただの野菜だ。お前の腕で、極限のペペロンチーノにしてやってくれ」

数分後。

真っ赤に染まった地獄のパスタが、騎士たちの前に運ばれた。

「ふ、ふん! 田舎者の飯などたかが知れているが、食ってやろう!」

騎士団長がフォークに巻き付け、一口でパスタを飲み込んだ。

「――――――――ッ!?」

騎士団長は一切の声を出すことなく、両目を見開き、全身の毛穴から滝のような汗を噴き出した。

S級ダンジョンの瘴気とマグマの熱量を内包したハバネロが、彼の痛覚を完全に焼き切り、やがて脳内の中枢神経で**「異常な量のドーパミン」**を強制分泌させた。

「あ……あひぃ……! か、から……からひぃぃぃぃ! でも、なんだこれ、全身の細胞が歓喜の歌を歌ってるぅぅぅ!!」

「だ、団長!? う、美味そうだな、俺たちも……アヒィィィィィン!! 神様ァァァ!!」

ドサッ、バタッ!

一口食べた騎士たちが次々と床に倒れ伏し、激辛の苦痛と限界突破した快感の狭間で、恍惚の表情を浮かべてピクピクと痙攣し始めた。

「……見ろ、たつまろ。手を汚さなくても、こうやって丸く収まるんだよ」

カイトが満足げに腕を組む。

「……お前の育てた野菜は、俺の包丁よりよっぽどタチが悪いな」

龍魔呂が呆れながらライターを鳴らした。

翌日。

カイト農場には、銀の鎧を脱ぎ捨て、クワを片手に一心不乱に畑を耕す騎士団長と部下たちの姿があった。

「カイト様ぁ! 10ヘクタール耕しました! お願いです、あの『デス・ハバネロ』をもう一口、私にお恵みくださいぃぃ!」

「おう、頑張れよ! 収穫が終わるまでハバネロはお預けだ!」

こうして、王都の威信を背負ってやってきた第一徴税騎士団は、完全に「激辛ドーパミン中毒」の奴隷(優良な農業労働者)へとクラスチェンジを果たしたのだった。