作品タイトル不明
EP 4
【美食】死を呼ぶ四番と、究極の魔王卵かけご飯
「たつまろ、極上の『卵』が入ったぜ。こいつで何か作ってくれ」
ポポロ村の小料理屋『鬼龍』。
カイトが白木のカウンターにゴトリと置いたのは、ソフトボールほどもある巨大で、黄金のオーラと禍々しい瘴気を同時に放つ【魔王の卵】だった。
「ふぇぇ……殻から『ギルルルル』って邪悪な鳴き声が聞こえる気がしますぅ……」
横でリリスが怯えているが、厨房に立つ鬼神 龍魔呂は動じない。
龍魔呂は無造作にポケットから角砂糖を取り出し、ガリッと噛み砕いた。
そして、魔王の卵を鋭い眼光で睨み据え、真鍮製のオイルライターを鳴らす。
カチッ。
店内の空気が一瞬で氷点下に達し、カウンターでお茶を飲んでいた村の奥様たちが「はぅっ」と身震いする。
「……圧倒的な『闇』の魔力。そして、お前の畑で育った異常なまでの生命力……。カイト、こいつは下手に火を通せば爆発するぞ」
龍魔呂がマルボロの煙を吐き出しながら言う。
「ああ、分かってる。だからお前の『腕』を頼りに来たんだ。素材の味を極限まで引き出す、一番シンプルなやつを頼む」
「……フッ。いいだろう」
龍魔呂はタバコを消すと、最高級の【ペティナイフ 150mm】を手に取った。
まな板の上に魔王の卵を乗せ、目を閉じる。
(この卵に秘められた致死量の魔力……俺の『殺気』で相殺し、旨味だけを抽出する!)
「鬼神流 絶花・包丁術――『 化勁(かけい) 割り』」
龍魔呂の背後に、**【赤黒い闘気】**が爆発的に立ち昇った!
その闘気をペティナイフの峰に集中させ、魔王の卵の殻を「コンッ」と叩く。
卵が内包していた世界を滅ぼすレベルの爆発エネルギーが、龍魔呂の完璧な化勁(力を受け流す技術)によって完全にゼロに抑え込まれ、純粋な「旨味成分」へと強制変換されていく。
パカッ。
炊きたての、カイト農場産『S級・神気米(白米)』の上に、黄金色に輝く黄身と、星空のように煌めく白身が滑り落ちた。
龍魔呂が特製の自家製出汁醤油を回しかけ、カウンターに差し出す。
「……食え。究極の『TKG(卵かけご飯)』だ」
「おおおおっ!! 輝いてる! ご飯が光り輝いてるぞ!」
「いただきまーすぅぅ!!」
カイトとリリス、そして匂いにつられて「私も一口……」と群がってきた村の奥様たち(龍魔呂のファンクラブ)が、一斉に究極のTKGを口に運んだ。
その瞬間。
ドゴォォォォォォォンッ!!!
『鬼龍』の屋根を突き破り、黄金と漆黒が混ざり合った巨大な光柱がポポロ村の上空へと立ち昇った。
「んんんんんんまァァァァァァァイッッッ!!!!」
リリスが両目から滝のような涙を流し、絶叫する。
「な、なんだこれは!? 魔王の深いコクを、たつまろの出汁醤油が完璧にまとめ上げている! 噛むごとに全細胞が爆発するような美味さだ!」
カイトも思わずクワを取り落とし、一心不乱に米をかき込む。
そして、異変は「村の奥様たち」に起きた。
「あら……? なんだか、身体の奥底から力が……あふれ……」
「奥様、お肌がツヤツヤ通り越して、発光してますわよ……!?」
魔王の卵(全ステータス限界突破)+カイトのS級米(超回復)+龍魔呂の闘気(戦闘狂バフ)。
この三つが奇跡の融合を果たした究極のTKGを食べた一般人の村人たちは、全ステータスが物理的にカンストしてしまったのだ。
「キャァァァ! 店の前にA級魔獣のオークがぁぁ!」
店の外から悲鳴が聞こえた。迷い込んできたはぐれ魔獣だ。
いつもなら逃げ惑う村の老婆(御年82歳)が、おもむろに立ち上がった。
その全身からは、龍魔呂に似た『赤黒い闘気』がシュウゥゥと漏れ出ている。
「おや、村を荒らしてはダメですよ」
老婆が、オークの巨大な棍棒を「人差し指と親指の2本」で白刃取りし、そのまま「フンッ」と軽く手首をひねった。
メキバキボギィィィッ!!
A級魔獣のオークが、空中を3回転しながら地平線の彼方へと吹き飛んでいった。
「あらやだ。私ったら、ちょっと力が入りすぎちゃったかしら(ウフフ)」
老婆が上品に笑う。
その隣では、八百屋の主婦が空を飛ぶドラゴンを「今日の夕飯ね」と石ころを投げて撃墜していた。
「……ふぇぇ。ポポロ村が、北斗の拳みたいな『修羅の国』になっちゃいましたぁ……」
リリスがドン引きしながら卵かけご飯のおかわりを要求する。
「……相変わらず、お前の食材は規格外だな、カイト」
「へっ。お前の腕が良すぎるんだよ、たつまろ」
外で村人たちが素手で魔王軍の残党を無双しているというのに、最強の農民と最強の料理人は、互いのプロフェッショナルな仕事ぶりに満足げに頷き合っていた。
こうして、辺境ののどかなポポロ村は、住民全員が「魔王超えのステータス」を持つ、世界で最も恐ろしい物理特化の防塞都市へと進化を遂げたのである。