作品タイトル不明
EP 9
【期限】絶望の巨大コンテナと、輝けるS級幻獣「黄金芋」
カイト農場。
毎月25日は、ポポロ村に住む誰もが恐怖する日――天界ヤミ金【オリンパス・プラチナ・デッドマスター】の月次ローン支払日である。
「カ、カイトさぁん……。今日、25日ですぅ……」
リリスが震えながら、カイトの背中に隠れていた。
「分かってるよ。だが安心しろ。あのクソ 猫(ニャングル) が置いていった『黄金の土(10トンの牛糞)』と軽トラのおかげで、農場の生産性は爆上がりした。今月分の利息くらい、俺が育てた作物で払えるはずだ」
カイトは自信満々に腕を組んだ。
しかし、リリスが差し出した『エンジェルすまーとふぉん』の画面を見た瞬間、その自信は粉々に砕け散った。
【今月の請求額(利息含む):250万ポポロゴールド】
【内訳:軽トラ120万、黄金の土50万、ルチアナ様・推し活代(追加)、その他リリス様のつまみ食い代】
「高ぇぇぇ!! ふざけんな、なんで先月より爆増してんだよ!」
「ふぇぇぇん! だって、ルチアナ先輩が『リボ払いにすれば月々の支払いの見栄えは良くなるわよ?』って言うから、ぽちっとしちゃってぇ……!」
「それを借金地獄って言うんだよバカ女神!!」
カイトがツッコミを入れた瞬間。
キュインキュインキュイーーーン!!!
スマホから、死の宣告である「パチンコ大当たり音」が鳴り響いた。
上空の空間がメリメリと音を立てて歪み、巨大な影が農場を覆い尽くす。
「ふぇ……? カイトさん、空が真っ暗になりましたよぉ……」
見上げると、そこには以前の「機内持ち込みサイズ」とは次元が違う、**【コンテナ船サイズの特大スーツケース】**が、重力に逆らって浮遊していた。
ドゴォォォォンッ!! と大地を揺らして着陸する。
「デカすぎるだろ!? 中からなんか出てきたぞ!」
パカッと開いたコンテナの扉から、マグローザ漁船のタコ部屋の臭い(潮と汗と絶望の匂い)と共に、電柱ほどもある極太の「黒い手」がワラワラと這い出してきた。
「アバババババッ!! 来ますぅぅ! 私のジャージが、正装がァァァ!!」
シュウゥゥゥ……!
黒い手がリリスに触れた瞬間、彼女の桃色ジャージが光の粒子となって消滅していく。第一段階【強制剥奪(差し押さえ)】である。
「ひぃぃ! スースーしますぅ! 全裸になっちゃいますぅぅ!!」
黒い手は、下着姿(謎の神聖な光でギリギリ見えない)となったリリスを、容赦なくコンテナの中へ引きずり込もうとする。
「カイトさぁん! 助けてぇぇ!(カンペを片手で必死に広げながら)……『ここでヒロインは、涙ながらに主人公の名を呼ぶ』……助けてぇぇぇ!!」
「そんな時までカンペ読んでんじゃねえ!!」
カイトは猛ダッシュで第5エリアの特別ビニールハウスへ向かい、一輪車(軽トラはデカすぎてハウスに入らないため)に「光り輝く巨大な物体」を乗せて戻ってきた。
「オラァァァッ! 天界のクソ借金取り共! 俺の最高傑作を食らいやがれ!!」
カイトがコンテナの口に放り込んだのは、黄金のオーラを放つ、神々しいまでのサツマイモだった。
ニャングルの残した「最高級発酵牛糞」と、ポポロ村の狂った土壌、そしてカイトのS級農業スキルが奇跡の融合を果たして生まれた【S級幻獣指定・黄金芋】である!
コンテナから伸びていた黒い手がピタッと止まり、巨大な赤いスキャナーの光が黄金芋を包み込んだ。
『ピピッ……。査定中……。対象オブジェクトから、神レベルのアミノ酸と圧倒的な糖度を検知。……これ、マジで美味そうだな(システム音声が思わず素になる)』
「システムが素に返ったぞ!?」
『査定完了。S級幻獣指定・黄金芋の価値を【300万ポポロゴールド】と算出。今月の請求額250万を相殺し、お釣りの50万を口座に返還します』
ポロッ……。
黒い手がリリスを丁寧に地面に下ろし、黄金芋を大事そうに抱えてコンテナの中へと引っ込んでいった。
バタンッ! と扉が閉まり、コンテナは空の彼方へと消え去る。
「……た、助かりましたぁ……。カイトさぁん……」
ボロボロになったリリスが、涙目でカイトにすがりつく。
「ああっ……俺の……市場に出せば国宝になれるレベルの黄金芋が……また借金の利息で消えた……」
カイトはその場に膝から崩れ落ち、虚空を見つめていた。
「でもでも! お釣りで50万ゴールド戻ってきましたよ! これで美味しいお肉が食べられますぅ!」
リリスが嬉しそうにスマホの画面を見せる。
「……そうだな。たまには美味い肉でも食うか……」
カイトが安堵の息をついた、その時だった。
『ピピッ。家族会員のルチアナ様が【朝倉月人・等身大純金フィギュア(50万ゴールド)】を購入しました。お釣りは全額消費されました』
「「……は?」」
『警告:次回の支払日に向けて、元本は全く減っていません。引き続き労働に励んでください。サラダバー!』
「ルチアナァァァァァァァァッ!!!」
カイトの血を吐くような絶叫が、ポポロ村の夕暮れに響き渡った。
「アババババ……また残高ゼロですぅぅ……」
かくして、最大のピンチを退けたものの、リリス(とカイト)の借金地獄は、先輩女神の尽きせぬ欲望によって「永遠に終わらない」ことが確定したのである。