軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 8

【飯テロ】降臨する激辛カップ麺と、ポポロ村のドーパミン中毒

カイト農場での過酷な(主にカイトが)午前中の農作業が終わり、待ちに待ったお昼休憩の時間。

「ふぇぇぇ……お腹ペコペコですぅ。カイトさん、今日のお昼ご飯はなんですかぁ?」

桃色ジャージを泥だらけにした見習い女神・リリスが、健康サンダルを引きずりながら軽トラの荷台に転がり込んできた。

「今日は弁当を作ってる暇がなかったんだ。適当にその辺のトマトでもかじっとけ」

「(カンペを読みながら)……ひどいですぅ! 乙女のランチがトマト一個だなんて、労働基準法違反ですぅ!(そして涙目で訴えかける)」

S級農民のカイトが冷たく言い放つと、リリスは頬を膨らませた。

「いいですぅ! カイトさんがご飯くれないなら、またエンジェルすまーとふぉんで『お取り寄せ』しますから!……でも、これ以上借金が増えると、またスーツケースが降ってくるし……」

リリスは珍しく学習し、うんうんと唸りながらスマホの画面をタップした。

「そうです! 日本の『かっぷめん』なら安いはずです! えーっと、『一番安くて、刺激的で、いっぱい入ってるカップ麺』を検索して……ぽちっとな!」

『ピピッ。検索条件に合致しました。【大魔王の業火・極辛デスインフェルノMAX(業務用100個入り)】を決済します。送料込みで3万ポポロゴールドを借金に加算しました』

「アババババッ!? やっぱり送料が高すぎますぅぅ!!」

リリスが絶叫すると同時、空から巨大な段ボール箱が軽トラの荷台にドスゥンッと落下してきた。

「お前、また何か買ったな!? なんだその禍々しいオーラを放つ箱は!」

カイトが恐る恐る段ボールを開けると、中には真っ赤なパッケージのカップ麺がぎっしり詰まっていた。

パッケージには、血文字のようなフォントで『※絶対に一人では食べないでください』『※お子様や胃腸の弱い方、前世の記憶がある方はご注意ください』と警告文が書かれている。

「カ、カイトさん……なんだかすごく辛そうなんですけど……」

「お前が『刺激的』なんてワードで検索するからだろ! こんなの劇薬指定だぞ!」

しかし、すでに買って(借金を増やして)しまったものは仕方ない。

カイトが魔法で沸かしたお湯を注ぎ、待つこと3分。

蓋を開けた瞬間、農場一帯に「眼球に染みるほどの強烈なカプサイシンの煙」が充満した。

「目がァァァ! 目がァァァ!!」

「ふぇぇぇん! 匂いだけでジャージが溶けそうですぅぅ!」

カイトとリリスがむせ返っていると、その異臭(スパイスの香り)を嗅ぎつけたポポロ村の住人たちが、どこからともなくワラワラと集まってきた。

「なんやなんや! カイトの兄ちゃん、ええ匂いさせとるやないか!」

「最近、村にパチンコ台がなくて刺激が足りなかったのよねぇ。それ、一口ちょうだい!」

かつてルナミスパーラーで全財産をスッた、刺激に飢えた村人たちである。

「やめとけ! これはただの食べ物じゃ……!」

カイトの制止も聞かず、村人たちは次々と「極辛デスインフェルノMAX」の麺をすすり上げた。

「「「ズズーッ…………ッ!!?」」」

次の瞬間。

村人たちの顔面から一切の血の気が引き、目と鼻と耳から同時に真っ赤な蒸気が噴き出した。

「ゴブァァァァァァァァァッ!!!!」

まるでドラゴンのブレスのように、村人たちが口から天に向かって炎(物理)を吹き出したのだ!

ポポロ村の青空を、何本もの火柱が焦がしていく。

「ヒィィィィッ!! 村人さんがドラゴンに進化しましたぁぁ!」

リリスがスマホを盾にして震え上がる。

「水だ! 早く水を飲ませろ!! 死人が出るぞ!」

カイトが慌てて水桶を運ぼうとした、その時だった。

「……はぁ、はぁ、はぁ……」

炎を吹き終わった村人たちが、地面にへたり込みながら、なぜか「恍惚とした表情」を浮かべていた。

「……なんや、これ。口ん中が痛くてたまらんのに……頭の奥が、ジンジンすんで……」

「そうよ……! パチンコで『聖獣群予告』を外した時の絶望と、その後に復活大当たりを引いた時の……あの強烈な『 脳汁(ドーパミン) 』が……溢れてくるわァァァッ!!」

「「「もう一口、くれェェェェッ!!!」」」

なんということだろう。

パチンコという 娯楽(ギャンブル) を失い、禁断症状に陥っていたポポロ村の住人たちは、この「致死量の激辛スパイスがもたらす痛覚」によって、脳内で強制的にドーパミンを分泌させる**「新たな刺激(合法麻薬)」**に目覚めてしまったのだ!

「アババババ! カイトさん、村人さんたちがゾンビみたいにおかわりを求めてきますぅ!」

「だーっ! お前のせいだろ! とりあえず全部配っちまえ! 俺は絶対に食わねぇからな!」

結局、100個あった「デスインフェルノMAX」は、ドーパミン中毒の村人たちによって瞬く間に消費され、ポポロ村には新たな「激辛ブーム(という名の痛覚依存)」が到来してしまった。

「えへへ……。カイトさん、見てください! 村のみんな、あんなに嬉しそうに火を吹いてますよ! 私、また女神としてみんなを幸せにしましたぁ!」

リリスは、燃え盛る村人たちを背景に、満面の笑みでダブルピースを決めた。

『ピピッ。激辛ブーム到来により、村人からの【お布施(投げ銭)】を受信しました。借金残高が500ポポロゴールド減額されました』

「わぁい! 借金が減りましたよカイトさん! これでスーツケースのサイズが少し小さくなりますぅ!」

「……残りの借金、まだ200万ゴールド以上あるんだぞ。先は長すぎるだろ……」

カイトは胃薬(持参)を水で流し込みながら、真っ赤に染まったポポロ村の惨状をただ静かに見つめることしかできなかった。