軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 6

【召喚】お取り寄せアプリの暴走と、S級農民の涙(軽トラ)

カイト農場・第4エリア。

ポポロ村の青空の下、泥だらけの畑のど真ん中に、昨日リリスが誤タップで購入してしまった【天界特製・超高級マッサージチェア(50万円)】が、シュールに鎮座していた。

「……どうすんだよ、これ。電源もないからただのデカい椅子じゃねーか」

S級農民のカイトは、マッサージチェアに座りながら遠い目をしていた。

その足元では、桃色ジャージ姿のリリスが「土下座」の体勢で震えている。

「ふぇぇぇん……ごめんなさいぃ。私、指が太いから、つい広告バナーを連打しちゃって……。でも、今日こそはカイトさんの役に立つものを『お取り寄せ』しますから!」

リリスはガバッと顔を上げ、泥だらけの『カンペ』を広げた。

「(ここで自信に満ちたドヤ顔で)……カイトさん! 日本の『ネット通販アプリ』で、最高に便利な農具を取り寄せますぅ! えーっと、『手押し車』を検索して……ぽちっとな!」

リリスがエンジェルすまーとふぉんをタップした、その瞬間。

『ピピッ。エラー:検索キーワード【手押し車(農用)】が文字化けしました。サジェスト機能により【農家の最強兵器(中古・走行距離5万キロ)】を検索・決済します』

『異世界特別配送料を含め、120万円をリリス様の借金残高に加算しました』

「アババババババババッ!!! また桁がおかしいですぅぅぅ!!」

リリスが絶叫すると同時に、上空に巨大な魔法陣が出現した。

まばゆい光とともに、空から「ドスゥゥゥンッ!!」と重低音を響かせて、巨大な白い鉄の塊が落下してきた。

「今度はなんだ!? またヤミ金のスーツケースか!?」

カイトがクワを構えて身構えるが、土煙が晴れた後に現れたのは、ポポロ村には似つかわしくない四輪の乗り物だった。

白い無骨なボディ。

2人乗りのキャビン。

後部に備えられた、泥汚れに強いフラットな荷台。

そして、フロントグリルに輝く『四駆(4WD)』のエンブレム。

「ふぇ? な、なんですかこの鉄の箱……。馬も引いてないのに、どうやって動くんですぅ?」

リリスが首を傾げた、その横で。

カイトの全身の震えが止まらなかった。

クワを取り落とし、フラフラと歩み寄り、その白い鉄のボディにそっと触れる。

「こ、これは……」

カイトの目から、大粒の涙がボロボロとこぼれ落ちた。

「カ、カイトさん!? ごめんなさい、また借金増やしちゃって! 怒らないでぇ!」

「怒るわけ……ないだろ」

カイトは涙を拭い、振り返った。その顔は、聖遺物を見つけた巡礼者のように清らかだった。

「これはな、リリス……。俺の故郷(前世)である日本が誇る、農業の完全究極体にして最強の相棒……**『軽トラック』**だ!!」

カイトは前世の記憶を爆発させ、軽トラのボンネットに頬ずりをした。

「見ろよこの荷台! これなら、今日収穫した『太陽芋』を一度に100箱は運べる! サスペンションも悪路仕様だ! しかもエアコン完備! ああ、なんという美しいフォルムだ……!」

「よ、喜んでくれてる……? えへへ! やりましたぁ! 私、女神としてカイトさんを笑顔にしましたよ!」

リリスはダブルピースをして跳び跳ねた。

「だが待てよ。この世界にはガソリンスタンドが無いぞ。どうやって動かすんだ?」

カイトが運転席を覗き込むと、ダッシュボードに一枚のメモが貼られていた。

『※天界エコ仕様:リリス様のエンジェルすまーとふぉんをUSB接続することで、リリス様の【カロリー(食欲)】を魔力変換して走ります』

「なるほど! 私がいっぱいご飯を食べれば、この『けーとら』が無限に走るんですね! まさにエコですぅ!」

「いや、お前の食費を考えたら世界一燃費が悪い高級車だろ!!」

カイトがツッコミを入れた直後。

『警告:次回のドナドナ・シークエンスのスーツケースが【コンテナ船サイズ】にアップグレードされました』

「ヒィィィィッ!! コンテナは嫌ですぅぅ!! カイトさぁん、早くこの軽トラで芋を売りに行きましょうぉぉ!!」

「おう! 任せろ! 俺のドライビングテクニックを見せてやる!」

カイトは嬉々として軽トラの運転席に乗り込み、リリスを助手席に押し込んだ。

ブルルンッ! と、ポポロ村で初めてエンジン音が轟く。

かくして、借金は【+120万円】という絶望的な額に膨れ上がったものの、カイト農場は「最強の機動力」を手に入れた。

助手席で団子を頬張りながらカロリーを供給する桃色ジャージの女神と、涙を流しながらギアをチェンジするS級農民。

カイトの農業ライフは、軽トラの登場により 新時代(ハイパーインフレ) へと突入したのである。