作品タイトル不明
EP 10
【決着】閉店(更地)ガラガラ! カイトの強制開墾
「いっけぇぇぇぇぇぇッ!!」
月兎族の村長・キャルルの絶叫とともに、ポポロ村の夜空に複数の極大魔法が同時に解き放たれた。
キャルルの『超電光流星脚』が、パチンコ店のネオン看板を粉砕する。
女神ルチアナの『神罰の光』と魔王ラスティアの『終焉のブラックホール』が合わさり、店内の中央に配置された『CR異世界転生トラックでドン!』のシマごと、空間そのものを削り取る。
「お店も借用書も、ぜーんぶ『ただの土』になぁれぇ♡」
エルフの次期女王候補・ルナが世界樹の杖を振るうと、店の残骸と、裏路地に隠れていたヤミ金業者のテント(と借用書の山)が、無慈悲にもサラサラの黒土へと変換されていく。
「アカン……アカンで……! ワイの……ワイの完全無欠の搾取システムがァァァ!!」
ゴルド商会のニャングルとルナミス帝国の店長が、涙と鼻水を垂れ流しながら絶叫する。
だが、その悲鳴すらも圧倒的なエネルギーの奔流に飲み込まれていった。
カァァァァァァァァァァンッ……!!
数分後。
爆炎と土煙が晴れたあとに残っていたのは、見事なまでに平坦な【更地】であった。
パチンコ台も、ドル箱も、ドワーフのヤミ金業者も、そして「数億ポポロゴールドの借金」という事実すらも、この世から完全に消し飛んだのである。
「はぁ……はぁ……。やったわ。これでマスターの心を悩ませる『悪』は滅びたのよ……!」
「ええ。私たちのポートフォリオ(借金)も、これで完全にクリーン(自己破産)になりましたわ」
魔力と体力を使い果たし、ススだらけになったヒロインたちが、やり切った顔でハイタッチを交わす。
これぞ、強者のみに許された究極の借金踏み倒しメソッドである。
その時だった。
「おーい! みんなー! こんなところにいたんだ!」
更地の向こうから、麦わら帽子を被り、肩にクワを担いだS級農民・カイトが満面の笑みで走ってきた。
彼はここ数日、誰も畑に来てくれず、一人ぼっちで「ダイズラ豆」にズボンを下ろされるという孤独な戦いを強いられていたのだ。
「カイトさん……?」
「もう、探したんだよ! ずっと畑に来ないから心配し……って、あれ?」
カイトは、パチンコ店があったはずの【更地】を見渡し、目をパチクリとさせた。
「ここ、前までドーム型の変な建物が建ってなかったっけ? ……まあいいや!」
カイトの目が、足元の黒土を見た瞬間に「プロの農民」のそれに変わった。
「すごいよみんな! 魔法の熱で殺菌されてて、しかも適度に耕されてる! これ、ふっかふかの最高の土じゃないか!!」
パチンコ店を更地にした破壊の跡を、カイトは『最高の畑』だと誤認した。
「ちょうど『太陽芋』の作付け面積を広げたいと思ってたんだ! さあみんな、ずっと休んでた分、今日は夜通しで働いてもらうからね! そこの倒れてる猫の獣人さん(ニャングル)も、早くクワを持って!」
「えっ……ちょ、カイトさん!? 私たち、今すごく疲れてて……!」
キャルルが慌てて抗議しようとするが、カイトの「農業スイッチ」はすでに全開だった。
「はい、キャルルちゃんは 畝(うね) 作り! ルチアナさんとラスティアさんは水撒き! リベラさんは種芋の等間隔配置の計算お願いね! さぁ、ポポロ村の農業を再開するよ!!」
有無を言わさぬカイトの圧力(S級のオーラ)に、魔力切れのヒロインたちは逆らうことができなかった。
かくして、ルナミスパーラー跡地は、わずか数分で「カイト農場・第4エリア」へと強制的に再開発されてしまったのである。
◇
「あぁぁぁ……! 私のサバ缶の源泉が……! 銀玉が一個も落ちてないわぁぁぁ!」
翌朝。両手にガムテープを巻いたリーザが、一面の芋畑と化した土の上で号泣していた。
そんな彼女に、カイトが「はい、お弁当の焼き魚(本物)だよ」とシャケの切り身を渡し、リーザが「一生ついていきますぅぅ!」とひれ伏すという一幕もあった。
一方、BAR『鬼龍』。
「……静かになったな」
マスターの龍魔呂は、カウンターでグラスを磨きながら、窓の外の平和な村の景色を眺めていた。
泥だらけになりながら畑を耕す、いつもの村の女たちの姿がある。
(彼女たちを苦しめていた『何か』は、無事に解決したらしい。……やはり、カタギの人間は太陽の下で笑っているのが一番だ)
龍魔呂はふっと微笑み、マルボロ赤の煙を紫煙へと変えた。
自分が彼女たちを「パチンコ狂い」にさせ、さらには「パチンコ店破壊の引き金」を引いたという自覚は、この天然ジゴロの鬼神には1ミリも存在しなかった。
かくして、ポポロ村を襲った「パチンコ&ホスト狂い」の熱波は過ぎ去り、再び平和な(狂った)農業の日々が戻ってきたのである。