作品タイトル不明
EP 7
【破産】底をつく資金、そしてヤミ金へ
「ピピピッ。残高が不足しています」
ルナミスパーラー・ポポロ支店の店内に、無機質な電子音が響き渡った。
サンド(玉貸し機)に突っ込んだICカードが、無情にもエラーを吐き出している。
「あ、あれ……? おかしいですね。昨日、自警団の給料を全額チャージしたはずなのに……」
月兎族の村長・キャルルは、血走った目で何度もカードを抜き差ししていた。
彼女の目の下には、連日の徹夜遊技による深いクマが刻まれ、美しかったウサギの耳は力なく垂れ下がっている。
「キャルル、あんたも尽きたの……? 私もよ。手持ちの金貨、全部スっちゃったわ……」
隣の席から、フラフラと亡霊のように立ち上がったのは、魔王ラスティアであった。
「あぁっ……手が、手が震えるわ! 早く……早く大当たりして『特上マカロンタワー』を交換しないと……マスター(龍魔呂)の『頭ポンポン』が……愛の補充が切れて、死んじゃうゥゥ!」
女神ルチアナが、自らの両腕を掻き毟りながら禁断症状に苦しんでいる。
完全に「担当ホストに貢げなくて狂いそうなキャバ嬢」の末期症状であった。
「落ち着きなさい、あなたたち。……こんなこともあろうかと、私はすでに『次の 資金調達先(スキーム) 』を構築してありますわ」
金製の煙管をくわえた首席国際法務官・桜田リベラが、白目を剥きながら不敵に笑った。
彼女もまた、弁護士としての身だしなみはボロボロで、スーツにはタバコの灰がこびりついている。
「資金調達って……リベラ、あんたどうする気よ?」
「フフフ。この店の裏路地に、とっても『親切な金融機関』のテントが設営されているのを発見しましたの。さぁ、皆さんも行きましょう。投資を止めれば、そこでマスターへの愛は途切れるのですわ!」
理性を失ったヒロインたちは、フラフラとゾンビのような足取りでパチンコ店の裏路地へと向かった。
◇
裏路地の薄暗いテント。
そこには【ドンガン・ファイナンス(※即日融資! 審査なし! 金利:トゴ)】という怪しげな看板が掲げられ、サングラスをかけたドワーフの男が座っていた。
もちろん、ニャングルが裏で手を引いているヤミ金である。
「いらっしゃい。おや、ずいぶんと上玉の姉ちゃんたちじゃねえか。いくら借りたいんだ?」
ドワーフがニヤニヤと笑う。
「金貨1万枚(1億円)よ。今すぐ貸しなさい」
魔王ラスティアが、バンッ!とカウンターを叩いた。
「おいおい、いくらなんでも1万枚は……担保がなきゃ貸せねえぜ?」
「担保? ……これでどうかしら」
ラスティアは、懐から『アバロン魔皇国・国家予算引き出し権限(玉璽付き)』の巻物をドサリと置いた。
「アバロンの国庫の半分を抵当に入れるわ。……いい? 私は今から『朝倉月人コラボ台』で、推しの激アツリーチを見なきゃいけないの! その後にお菓子を交換して、龍魔呂に褒めてもらうのよ! 国の防衛費なんかより、私の脳汁(愛)の方がずっと重いのよォォ!」
「ひぃっ! 魔王が国を売りやがった!?」
ドワーフのヤミ金業者すらドン引きする、究極の横領(背任行為)であった。
「あ、じゃあ私も貸してくださいぃ〜」
エルフの次期女王候補・ルナ・シンフォニアが、ニコニコしながら契約書にサインする。
「おう、姉ちゃんは担保あるのか? さっき『石を純金に変える魔法』で誤魔化そうとしたからな、俺の目は誤魔化せねえぜ!」
「ふぇぇ、バレちゃってましたかぁ。じゃあ、これでどうですかぁ?」
ルナが提示したのは『世界樹の年金受給証明書(毎月純金100kg)』であった。
「私が毎月世界樹からもらってて、村の地下で塩漬けになってる純金、全部差し上げますからぁ! 今すぐ金貨1万枚ください! マスターに『高級フルーツ盛り合わせ』を持っていかないと、私のポジションが奪われちゃうんですぅ♡」
「エルフの女王候補が、年金担保融資(ヤミ金)に手を染めたァァ!?」
こうして、神も魔王もエルフも村長も、一切の躊躇なく「トゴ(10日で5割)」という違法金利の契約書に血の 署名(サイン) を交わした。
国家の未来も、村の平和も、すべてはパチンコ店という名の「ホストクラブの資金」へと吸い込まれていく。
数千万、数億という金が、彼女たちの狂った愛情によって湯水のように溶かされていく地獄絵図。
「フフフ……マスター。今行きますからね……。今日は、一番高い『ドン・ペリニヨン味のキャンディ』を貢ぎますわ……!」
リベラが、両手に札束(金貨の袋)を抱えながら、血走った目でパチンコ店へと舞い戻っていく。
狂乱の宴は、ついに引き返せない領域へと突入した。
しかし、この異常事態に、ついに「あの男」が気づくことになる。
彼女たちが身を滅ぼしてまで貢ごうとしている張本人、無自覚な鬼神・龍魔呂である。