軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 6

【崩壊】誰もいない畑と、孤独なS級農民

ポポロ村の朝は早い。

鳥たちがさえずり、朝日が広大な畑を黄金色に染め上げる午前6時。

S級農民・カイトは、麦わら帽子を被り、首にタオルを巻いて意気揚々と農場へやってきた。

「よーし! 今日は『太陽芋』の収穫と、『ダイズラ豆』の手入れをするぞー! みんな、おはよう!」

カイトは元気よく挨拶をした。

……が、返事はなかった。

「あれ?」

カイトは首を傾げた。

いつもなら、村長のキャルルが「カイトさん、お手伝いします!」と一番に駆けつけてくるはずだ。

さらに、自警団の面々や、サボり魔のフェンリル、朝のコーヒーを飲みに来るルーベンスなど、カイトの農場は常に誰かしら集まってくる賑やかな場所だった。

しかし今日、見渡す限りの広大な畑に立っているのは、カイトただ一人であった。

「おかしいな……今日はお祭りか何かだったっけ?」

カイトは首を傾げながらも、「まあ、みんな忙しいんだろう」と持ち前のポジティブさで農作業を開始した。

まずは『人参マンドラ』のエリアである。

カイトは葉っぱを掴み、勢いよく引っこ抜いた。

「ギィィィヤァァァァァァァァァッ!!」

抜かれた人参マンドラが悲鳴を上げ、短い足で猛ダッシュして逃げ出す。

いつもなら、ここでレオンハートの獣人兵士や村人たちが「待てェ! 今日の晩飯ィィ!」と大騒ぎしながら追いかけ回す、ポポロ村の朝の風物詩(ドタバタ劇)が展開されるはずだ。

「……そりゃっ」

カイトは一人、無言でタモ網を振り下ろし、時速100kmで逃げる人参マンドラをあっさりと捕獲した。

「……うん。捕まえた」

カイトの声だけが、静かな畑に虚しく響く。

誰も「さすがカイトさん!」と褒めてくれない。誰も転んで泥だらけにならない。

圧倒的な、孤独。

「……次、『ダイズラ豆』の収穫、行こうか」

少しだけ寂しさを感じながら、カイトはダイズラ豆のツルに手を伸ばした。

プチッ、とサヤをもぎ取る。

スコンッ。

カイトのズボンが、重力を無視して足首までずり落ちた。見事な純白のパンツ一丁である。

いつもなら、ここでルナミス帝国の騎士たちが「ひぃぃ! ズボンがァァ!」と泣き叫び、キャルルが「もう、恥ずかしい野菜ですね!」と怒るという、完璧なギャグの 連携(ツッコミ) が発生する。

しかし、今は誰もいない。

ポポロ村の広大な大地のど真ん中で、20歳の元日本人の青年が、一人パンツ丸出しで立ち尽くしているだけである。

「…………スースーするなぁ」

冷たい朝の風が、カイトのむき出しの足元を吹き抜けていく。

ボケても誰もツッコんでくれない。これはギャグ時空の住人にとって、死に等しい苦痛であった。

カイト農場から人が消えた。

すなわち、ポポロ村における【第一産業(農業)の完全崩壊】である。

その頃。

ポポロ村の公民館の裏にある、豪華なテントの奥深く。

「ガハハハハハ!! 笑いが止まらへんでェ!!」

村の財務担当にしてゴルド商会の凄腕商人・ニャングルが、山のように積まれた『 PG(ポポロゴールド) 』の海で泳いでいた。

その隣では、ルナミスパーラーの店長(ルナミス役人)が、汗を拭きながら売上帳簿を報告している。

「ニ、ニャングル様! 今日の売上も前日比300%増です! 特にポポロ村の女性陣の投資スピードが異常で……朝から晩までサンド(玉貸し機)に金貨を突っ込み続けています!」

「せやろせやろ! ワイが仕掛けた『景品の高級お菓子』が、完全にあの女たちの【ホスト貢ぎ心】に火をつけたんや! パチンコ店の利益率は今や、カイトはんの畑の収益を軽く凌駕しとるで!」

ニャングルは、黄金の算盤をチャッチャカと弾きながら、ゲスい笑みを隠そうともしなかった。

村の皆がパチンコに狂えば狂うほど、すべての富は胴元である彼とルナミス帝国の懐へと吸い込まれていく。完全なる搾取のシステムだ。

「しかしニャングル様。誰も畑仕事をしないということは、村の特産品(野菜)の出荷が止まり、村全体の経済がストップするということでは……?」

店長が懸念を口にするが、ニャングルは鼻で笑った。

「アホやな。経済がストップしたら、あの女たちの『軍資金』が尽きるっちゅうことや」

「は、はい。軍資金が尽きれば、パチンコも打てなくなりますが……」

「ちゃうちゃう! 依存症っちゅうのはな、金が尽きてからが『本番』なんや!」

ニャングルは、煙管の煙をふーっと吐き出し、悪魔のように目を細めた。

「金が尽きたら、次はどうする?…… 借金(ヤミキン) や。ワイらは、ドワーフの地下ファイナンスと提携して、あいつらに法外な利子で金を貸し付ける。パチンコで金を巻き上げ、利子でさらに搾り取る。骨の髄までしゃぶり尽くすんや!!」

「ひぃっ……! な、なんという悪魔の所業……!」

ルナミスの役人すらドン引きする、究極の貧困ビジネスである。

ニャングルの予言通り、事態は最悪の方向へと転がり始めていた。

連日の「開店から閉店までのフル稼働」により、ヒロインたちの手持ちの金貨は、見事なまでに底をつきかけていたのだ。

『鬼龍』のマスター(龍魔呂)に「頭をポンポン」してもらうため。

そのたった数秒の快楽のために、最強の女たちがついに「越えてはいけない一線(多重債務)」を越えようとしていた。