軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 5

【狂気】完成された「ホスト狂い」の図式

「――ってことがあったのよ! あのマスター、キャルルの頭を撫でて『お前は優しいな』ですって! 許せる!?」

「許せないわ! キャルルちゃんだけ抜け駆けなんてズルい!」

月兎族の恐るべき情報伝達ネットワーク(ただの女子の井戸端会議)により、キャルルの『お菓子=頭ポンポンの法則』は、たった一晩でポポロ村の女性陣全員に知れ渡っていた。

翌朝、午前10時。

ルナミスパーラー・ポポロ支店。

「……ひぃっ。な、なんだ今日の客層は……。空気が重すぎる……!」

店長(ルナミス役人)が、防犯カメラのモニターを見ながらガタガタと震えていた。

パチンコ店のメインストリート(一番目立つ通路)は、完全に異様なオーラに包み込まれていた。

そこに並んで座っているのは、ポポロ村が誇る最強(最凶)の女性陣である。

しかし、彼女たちの目は普段の輝きを失い、完全に「推しホストのバースデーイベントでタワーを入れるために血眼になる女」のそれへと変貌していた。

「回れ……回れぇ……! 今日こそ景品カウンターの『特上マカロンタワー』を交換して、マスターの頭ポンポンを10秒間独占するのよ……!」

キャルルが、ダブルトンファーを握る時よりも強い力でハンドルを握りしめ、ブツブツと呪文のように呟いている。

その隣では、金製の煙管(無臭タイプ)を吹かしながら、首席国際法務官の桜田リベラが魔導電卓を猛烈な勢いで叩いていた。

「……私の計算が正しければ、投資額5万ポポロゴールドに対し、マスターからの『頭ポンポン(約3秒間のスキンシップ)』がリターンとして確約される。キャバクラ嬢がホストに貢ぐ際の費用対効果を大きく上回る、極めて『ロウバスト(堅牢)な投資』ですわ……! 負けられません!」

普段は「罪を憎んで人を憎まず」を体現する敏腕弁護士が、その卓越した頭脳を「パチンコのボーダー理論とホストへの貢ぎ効率」に全振りしている。

「あーん、またリーチ外れたぁ! ねえラスティア、月人くんのオタ活もいいけど、龍魔呂って『実在(3D)』してるのよ!? 実際に触ってくれるのよ!? 貢ぐなら今でしょ!」

「言われなくても分かってるわよルチアナ! あんな渋いイケオジに『助かる。お前は優しいな』なんて言われたら、魔王の威厳も吹き飛ぶわ! 出なさい! 銀玉、ドバドバ出なさいよォォ!」

永遠の17歳コンビ(神と魔王)も、もはや完全に『鬼龍』という名のホストクラブの常連客(太客)と化していた。

そして、そのさらに隣の席では、最もやってはいけない物理法則の破壊が行われていた。

「えいっ♡ えいっ♡」

エルフの次期女王候補・ルナ・シンフォニアが、足元に拾い集めた『ただの小石』に杖を振り下ろしている。

「パチンコ玉が足りないならぁ、この小石を純金に変えちゃえばいいんですよねぇ♡ これをサンド(玉貸し機)に入れれば、無限に遊べますぅ♡ マスター、待っててねぇ! 私がお店のお菓子、ぜーんぶ買い占めてあげるからぁ!」

ピカーッ! と眩い光とともに、ただの小石が次々と高純度の金貨へと変成していく(※ただし3日後にただの石に戻る)。

ルナはそれを満面の笑みでサンドにねじ込み、強引に銀玉を錬成していた。3日後の店長(とルナミス帝国の経済)が破滅することは確定だが、天然の彼女に悪意は1ミリもない。

ジャラジャラジャラジャラッ!

キュインキュインキュイーーーーン!!

「「「出たァァァ! 大当たりよォォ!!」」」

「これでマスターに……マスターに貢げるゥゥ!!」

女性陣が、歓喜と狂気の入り混じった叫び声を上げる。

パチンコ店はもはや娯楽施設ではなかった。「愛しのマスター(龍魔呂)に貢ぐための、過酷な資金調達の戦場」へとその姿を変えてしまったのだ。

「フフフ……。お姉様方、派手にこぼしてくれてありがとう……!」

その狂騒の足元では、今日も両手に布ガムテープを巻いたリーザが、彼女たちの落とした銀玉をほふく前進でペチペチと回収し、サバ缶のノルマを着実に稼いでいたが、誰もそれに気づく余裕はない。

そしてその夜。

BAR『鬼龍』は、未だかつてない異常事態に見舞われていた。

「マスター! これ、今日の差し入れです! 特上マカロンタワー!」

「ずるいですわキャルル村長! マスター、私からは最高級のトリュフチョコですわ!」

「龍魔呂ぉ! 私たちからはメロンのフルーツ盛り合わせよぉ! さあ、褒めて! 撫でて!!」

カウンターには、パチンコ店の景品コーナーから根こそぎ交換されてきた高級お菓子の山が、天井に届かんばかりに積まれていた。

そして、カウンターの向かいには、目の下にうっすらとクマを作りながらも、期待に満ちた目で龍魔呂を見つめる女性陣がズラリと並んでいる。

「……ずいぶんと大量だな。みんなどうしたんだ?」

龍魔呂は困惑しながらも、マルボロ赤の煙を静かに吐き出した。

彼は本当に、純度100%で「何が起きているのか」分かっていないのだ。

「みんな、子供たちのために持ってきてくれたのか。……助かる。お前たちは優しいな」

ポンポン。ポンポン。

龍魔呂が、大きな手で順番にキャルル、リベラ、ルチアナたちの頭を優しく撫でていく。

「「「あぁぁぁぁぁ……っ♡」」」

その瞬間、女性陣全員の脳内で、とてつもない量の 脳内麻薬(エンドルフィン) が弾け飛んだ。

パチンコで何万PGを投資しようと、この瞬間の「ポンポン」ですべてが報われる。

彼女たちの瞳孔が開き、完全に「担当ホストの沼に落ちた目」へと仕上がった。

(もっと……もっとマスターに貢がなきゃ……!)

(明日も……明日も開店から並んで、お菓子を根こそぎ交換するわ……!!)

最強のヒロインたちが、一人の男の無自覚な優しさによって、パチンコ依存症へと完全に転落した夜。

しかし、彼女たちが全員パチンコ店に入り浸るということは、村にとって「ある致命的な事態」を引き起こすことを意味していた。

翌朝、村の中核である【カイト農場】にて、その悲劇は発覚する。