軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 4

【誤算】キャルルの大勝利と、龍魔呂の頭ポンポン

「……あ、あれ? また数字が揃いましたよ?」

ルナミスパーラー・ポポロ支店。

その一角で、ポポロ村村長にして月兎族の姫君、キャルルが首を傾げていた。

村の視察(という名目でサボっている連中の連れ戻し)に来た彼女だったが、空き台に座って適当にハンドルを握ったところ、恐るべき【ビギナーズラック】が発動してしまったのだ。

ピキピキピキィィン!

液晶画面に、神々しい黄金のメカライオンが現れる。

『激アツ!! 聖獣機神ガオガオン群予告!!』

「なっ……!? なんでキャルルちゃんの台にはガオガオンが来るのよォォ!」

数台隣で、全財産をスって放心状態になっていた女神ルチアナが血の涙を流して叫ぶ。

「あはは、ごめんなさぁい。なんだかよく分からないけど、玉がいっぱい出てきちゃって」

キャルルが苦笑いする足元には、カチ盛りされたドル箱がすでに十箱以上も積み上げられていた。

数十分後。

パチンコ店を出たキャルルは、両手いっぱいに抱えた景品の紙袋を見つめていた。

「すごいですね……少し座っただけなのに、こんなにたくさんの『高級焼き菓子詰め合わせ』と交換できちゃうなんて」

大勝利である。

しかし、真面目な村長である彼女は、自分一人でこのお菓子を食べる気にはなれなかった。

「そうだ。これ……あの方のところに持っていこうかな」

キャルルの足は、自然と村の裏通りにある一軒の店へと向かっていた。

昼は小料理屋、夜はBARを営む店――『鬼龍』である。

カラン、と控えめに扉を開ける。

店内には、J.S.バッハの『無伴奏チェロ組曲 第1番』が静かに、そして優雅に流れていた。

「いらっしゃい……ん、村長か」

カウンターの奥で、美しいダマスカス鋼の柳刃包丁を研いでいた男が、顔を上げた。

身長190cmの巨躯。黒をベースにした赤のレザージャケット。

かつて地下格闘場で『DEATH4(死を呼ぶ四番)』と恐れられ、今はポポロ村の子供たちにハーモニカを吹いてやる心優しき鬼神、** 龍魔呂(たつまろ) **である。

「こんにちは、マスター。仕込み中にお邪魔してごめんなさい。あの……これ、差し入れです!」

キャルルは少し頬を染めながら、パチンコ店で交換した高級焼き菓子の山をカウンターに置いた。

「ほう。ずいぶんと立派な菓子だな。どうしたんだ?」

「えへへ、実はさっき、新しくできたパチンコ店を覗いたら、たまたま大勝ちしちゃって。私一人じゃ食べきれないから、お裾分けです!」

龍魔呂は、カウンターに置かれたお菓子の箱と、少し照れたように笑うキャルルの顔を交互に見つめた。

そして、フッと口元を綻ばせる。

無自覚な天然ジゴロが放つ、破壊力抜群の大人の微笑みである。

「そうか。……助かる。ちょうど、孤児院の子供たちに甘い物を持っていこうと思ってたんだ」

龍魔呂はそう言うと、大きな手を伸ばし。

キャルルの頭の上にポンと乗せ、優しく、愛おしむように撫でた。

「お前は優しいな、キャルル」

「えっ……ぁ……っ」

――ドクンッ。

その瞬間、キャルルの月兎族としての高い聴覚が、自身の心臓の爆発的な鼓動を拾い上げた。

頭に置かれた、大きくて温かい手。

無愛想な彼が見せた、自分だけ(と勘違いする)への優しい笑顔。

「優しいな」という、甘く低い声。

キャルルの脳内で、ショートした思考回路が、ある一つの【危険な数式】を弾き出した。

(パチンコでお菓子を交換して……マスターに渡せば……頭を、撫でてもらえる……!?)

パチンコ勝つ = お菓子がもらえる = マスターに貢げる = 愛される(頭ポンポン)!!

「あ、あの! マスター! ま、またお菓子、持ってきますねッ!!」

「ん? ああ、無理はするなよ。だが、子供たちも喜ぶだろう」

「はいッ! 私、頑張りますッ!!」

キャルルは、顔を真っ赤にして茹でダコのように湯気を上げながら、猛ダッシュで『鬼龍』を飛び出していった。

龍魔呂は、その背中を見送りながら「元気なやつだ」と微笑み、真鍮製のオイルライターでマルボロ赤に火を点けた。

彼は全く気づいていなかった。己の「無自覚な頭ポンポン」が、一人の真面目な村長を【パチンコで稼いでホスト(龍魔呂)に貢ぐ狂女】へとクラスチェンジさせてしまったことに。

そして、この「お菓子を持っていけば龍魔呂に褒められる(頭を撫でられる)」という情報は、月兎族の恐るべきネットワークを通じて、ポポロ村の女性陣にあっという間に拡散されることになる。

真の『ホスト狂い地獄』が、静かに、しかし確実に幕を開けたのであった。