軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 14

【オチ】勝者なき戦争と、搾取される人魚

「……あの時のお前がくれたパンの耳、最高に美味かったぜ」

「ふっ。借金をした甲斐があったというものだ」

夕暮れのポポロ村。

カイトのクワによって耕された畑の上で、ルナミス帝国軍のキュロスとレオンハート獣人王国軍のハガルは、泥だらけの手を固く握り合い、種族を超えた熱い友情を確かめ合っていた。

「パンパカパーン! はい、感動のエンディングのところ申し訳ありませんが、現実(お会計)のお時間ですわよー!」

二人の美しい空間を、拡声器を通した桜田リベラの冷酷な声がぶち壊した。

彼女の横には、黄金の算盤を持ったニャングルと、札束(金貨)の詰まった麻袋を抱えた女神ルチアナや魔王ラスティア、ルナたち「ポポロ極悪市民」がホクホク顔で並んでいる。

「まいどぉ! 両軍の指揮官はん、ええ戦い(ビジネス)やったで! おかげでワイらポポロ商会は、在庫の『飲む二郎』から乾パンまで完売や! ぼった……いや、適正価格で大儲けさせてもろたわ!」

ニャングルが煙管を吹かしながら、ゲスい笑いを浮かべる。

「ルナミス軍が朝倉月人くんの最前列チケット手配してくれたおかげで、私たちも大満足よ♡」

「私の火炎龍を買わなかったお詫びとして、レオンハート軍の軍用テント、全部もらっていきますからねぇ♡」

ルチアナとルナも、完全に「戦争特需」を食い尽くした勝者の顔である。

両軍に支給された初期軍資金・計4万金貨(約4億円)。

それはたった数日のうちに、ニャングルの武器・食料代、リベラの罰金(損害賠償)、そして極悪市民たちへの賄賂として、ポポロ村のブラックホールへと完全に吸い込まれていた。

「……構わん。もとより金など、この村で生き残るための一時的な命綱に過ぎなかった。我々は金よりも大切なもの(戦友)を見つけたのだからな」

キュロスが、達観した聖者のような微笑みを浮かべる。

「あーっはっはっは!! 見なさい! 私の稼ぎを!!」

そこへ、赤いハチマキを巻いたままの芋ジャージ人魚、リーザが狂喜乱舞しながら駆け込んできた。

彼女が抱えているリヤカーには、キュロスがドワーフ闇金から借金をして支払った「水とパンの耳の代金(金貨1000枚)」をはじめとする、莫大な運送料の金貨が山積みになっていた。

「勝った! 勝ったわ! 戦争で一番儲かるのは『死の商人』でも『勝者』でもない! インフラ(兵站)を独占した私よォォ! これでタワマンも、キャビアのプールも私のものよォォォ!!」

リーザが、金貨の山にダイブして恍惚の表情を浮かべる。

「……チッ。あの小娘、人の足元を見やがって」

ハガルが忌々しげに舌打ちをする。

しかし、リーザが絶頂の海を泳いでいた、まさにその時。

「コホン」

リベラが、わざとらしく咳払いをし、手元のバインダーから一枚の書類を取り出した。

「えー、ポポロ・イーツ(個人事業主)のリーザさん。今回の特別代理戦争における、あなたの莫大な利益、確かに確認いたしましたわ」

「えっ? は、はい! 私の努力とストライキの結晶ですから!」

「素晴らしいですわ。つきましては、ポポロ村税務局より【フリーランスの戦時特別不当利益に対する源泉徴収税・99.9%】を適用させていただきますわね♡」

「……は?」

リーザの動きがピタリと止まった。

「さらに、無許可での『ドワーフ闇金の斡旋手数料』の没収。および、村の広場にリヤカーを放置した『不法投棄の罰金』。それらをすべて差し引きまして……」

チリリリン♪

リベラの電卓が、無慈悲な最終結果を弾き出した。

「今回、リーザさんがお受け取りになる最終純利益は……【銅貨1枚(100円)】となりますわ! おめでとうございます!」

「……………………え?」

ジャラジャラジャラッ!

リベラの背後に控えていたポポロ村の 自警団(ダイヤたち) が、リーザの金貨の山を問答無用で没収していく。

後に残されたのは、リーザの震える手のひらにチョコンと乗せられた、たった1枚の銅貨だけだった。

「あ……ああ……私の、タワマン……キャビアのプールが……」

ポロッと銅貨が落ちる音。

「ふ、ふざけるなァァァ!! 私の 青春(ストライキ) と労働の結晶があぁぁぁ!!」

リーザは、リヤカーの上で虹色の泡を吹きながら白目を剥き、バタリと気絶した。

どんなに悪徳な商売をしても、最後は「システム(税金)」にすべてを毟り取られる。それがアナスタシア世界の絶対的な真理である。

「「「…………」」」

キュロスとハガル、そして両軍の兵士たちは、その光景を無言で見つめていた。

自分たちから巻き上げた金が、さらに税金として村に吸収されていくという、恐るべき搾取のエコシステム。

「……ハガル。俺たちも、笑っていられる立場ではないな。俺には、ドワーフ闇金の借金(金利50%)が残っている」

「……ああ。俺たちも、農場の『ダイズラ豆の収穫ノルマ』を達成するまで、国に帰れねえ」

エリート軍人たちの背中に、再び暗く重い絶望の影が落ちた。

そこへ。

「みんなー! 畑仕事(戦争)、本当にお疲れ様!」

愛用のひのきのクワを肩に担いだカイトが、S級農民の眩しすぎる笑顔で近づいてきた。その後ろには、山盛りの「まかない野菜」を持ったキャルルが続いている。

「今日はゆっくり休んで、明日の朝5時から、また『人参マンドラ』の追いかけっこ、よろしくね! みんなが頑張ってくれるから、ポポロ村の農業は安泰だよ!」

「「「イ、イエッサー!!」」」

大陸最強と謳われた二つの軍隊は、泣きながらカイトに向かって完璧な敬礼をした。

彼らはもう、立派なポポロ村の「農奴」である。

誇りも、資金も、兵站もすべてを奪い尽くす魔境、ポポロ村。

世界の命運を懸けた(はずの)特別代理戦争は、一人の農民の満面の笑みと、気絶した人魚のいびきと共に、今日も平和に(ブラックに)幕を閉じるのだった。