軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 2

【初陣】撃ち合いの代償! 請求書は銃弾よりも重い

ポポロ村の東区画、レンガ造りの空き家が並ぶ市街地エリア。

特別代理戦争の開戦から数時間後、ついに両軍の斥候部隊が接触し、初の「武力衝突」が勃発した。

「撃てッ! 毛玉どもを一人たりとも近づかせるな!」

ルナミス帝国軍・近衛騎士団長キュロスの号令とともに、帝国兵たちが一斉に『魔導ライフル』の引き金を引く。

タロウムラ由来の魔導工学によって生み出された閃光が、轟音と共に石畳を削り、空き家の壁に無数の弾痕を穿っていく。

「フハハハッ! 当たらなければどうということはない! 行けェ、野性(俺たち)の力を見せてやれ!」

対するレオンハート獣人王国軍・近衛騎士団長ハガルが、鋭い牙を剥き出しにして咆哮する。

豹耳族や狼耳族の兵士たちは、時速100kmに迫る圧倒的な脚力で壁を三角飛びし、帝国の弾幕を神業で潜り抜ける。そして、ピンを抜いた『魔導手榴弾』を、帝国の陣取るバリケードへと容赦なく放り投げた。

ドゴォォォォォォォォォォォンッ!!!

凄まじい爆発が巻き起こり、村の美しいアスファルト道路が直径5メートルにわたって大きく陥没した。

粉塵が舞い上がり、両軍の闘気と魔力が激しくぶつかり合う。

まさに「大陸最高峰の軍隊」の名に恥じない、スペクタクルで熱い市街戦であった。

「チッ、やはり獣人の機動力は厄介だな。だが、ここまでは計算通りだ(戦争論)。総員、後退しつつ魔導地雷を散布しろ!」

キュロスが冷静に次の指示を出す。

「逃がすかよ! 一気に距離を詰めて肉弾戦に持ち込むぞ!」

ハガルが双剣を構え、追撃の号令をかけようとした、その時だった。

「はいはーい! 両軍とも、そこまでですわー!」

爆煙をパンパンと手で払いながら、戦場の中央に優雅に歩み出てきたのは、ポポロ村の法務担当・桜田リベラだった。

彼女は、タイトスカートにヒールという全く戦場にそぐわない出立ちのまま、手元のバインダー(と電卓)をカチャカチャと弾いている。

「な、なんだポポロ村の役人か! 邪魔だ、下がっていろ!」

ハガルが舌打ちをする。

「あら、邪魔なんて心外ですわ。私はただ、ルール⑤に基づく『精算』に参っただけですのよ」

リベラは美しい笑みを浮かべ、両軍の指揮官に向かって、ピラリと一枚の紙(請求書)を提示した。

「えー、只今の戦闘における『ポポロ村への損害賠償』の内訳を発表いたします」

リベラが、澄んだ通る声で読み上げ始めた。

「まず、魔導ライフルの乱射による空き家の壁およびガラスの損壊。こちらの修繕費が『金貨1000枚』。

次に、魔導手榴弾による村の公共道路の陥没。アスファルトの再舗装工事費として『金貨2000枚』」

「なっ……!?」

キュロスとハガルの顔から、スッと血の気が引いた。

「そして最後に……」

リベラは、爆発の余波で無惨に折れ曲がってしまった、道端の小さな花壇を指差した。

「キャルル村長が毎朝お水をあげて大事に育てていた、あの『ポピーのお花』が折れてしまったことに対する、村長の精神的慰謝料として『金貨2000枚』。

以上を合計いたしまして……ルナミス軍、レオンハート軍、両軍それぞれに【罰金(損害賠償)計・金貨5000枚】を、初期軍資金から強制天引きさせていただきますわ♡」

「「ご、ご、五千枚ィィィィィィッ!?」」

両指揮官の絶叫が、ポポロ村の空に木霊した。

「ふ、ふざけるな! たかが道端の花が折れただけで金貨2000枚(2000万円)だと!? 暴利にもほどがあるぞ!」

キュロスが激昂して抗議する。

「どんな悪徳裁判でも、そんな無茶苦茶な判決は出ねえぞ!」

ハガルも目を血走らせて吠える。

「あらあら。では、キャルル村長の涙は金貨2000枚の価値もないと? この賠償を不服として支払いを拒否される場合、ルール⑦に基づき『ガオガオン条約違反(村への悪意ある破壊工作)』とみなし、即刻、上空からのレーザー焼却処分となりますが、いかがなさいますか?」

リベラが、金の煙管をスッと取り出し、冷酷極まりない「弁護士の目」で二人を見据えた。

上空では、待機しているガオガオン(メカライオン)の砲門が、キュィィィン……と不気味なチャージ音を鳴らし始めている。

「「…………払います」」

両指揮官は、血の涙を流しながらその場で屈服した。

「毎度ありですわ♡ これにて、両軍の軍資金残高は【金貨1万5000枚】となります。引き続き、戦争をお楽しみくださいませ」

リベラは優雅に一礼し、カツカツとヒールの音を鳴らして去っていった。

取り残された両軍の精鋭たちに、絶望的な沈黙が降り下りた。

初期資金、金貨2万枚。

ニャングルのぼったくり価格のせいで、弾薬を一発撃つだけでも数万円が飛んでいく。

そして、派手に戦って村の備品を一つでも壊そうものなら、億単位の罰金(賠償請求)が強制的にむしり取られるのだ。

「……キュロス団長。我々は、この後どう戦えば……?」

ルナミスの副官が、震える声で尋ねた。

キュロスは、固く握りしめた拳をワナワナと震わせながら、部下たちに悲痛な命令を下した。

「……撃つな。もう、絶対に魔導ライフルを撃つな。壁に当たれば帝国が破産する」

「ハガル団長! 俺たちの手榴弾も……!」

レオンハートの部下たちも、絶望の表情で指示を仰ぐ。

「……投げるな。これからは魔法も爆薬も禁止だ。……石を投げろ! いや、その辺の石もポポロ村の備品かもしれん……素手だ! これからは絶対に物を壊さないよう、素手と関節技だけで戦え!!」

ここに、大陸最高峰の軍事力は完全に封殺された。

最強の兵士たちは、「資金ショート(自己破産)」の恐怖に怯えながら、銃を持ったまま素手で殴り合うという、史上最もみみっちい戦争を強いられることになったのである。