軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 9

【決着】ショートスクイーズ! 帝国崩壊と極悪トリオの高笑い

「……オルウェル。これは、どういうことだ。我が帝国の魔導モニターが、故障でもしたのか?」

ルナミス帝国の白亜の宮殿、皇帝執務室。

少し前まで『国富論』の体現者のように余裕を構えていたマルクス皇帝の声が、微かに震えていた。

彼の目の前にある巨大な為替チャート画面。そこには、ルナミス帝国が国家予算を投じて押し下げたはずの真っ赤な陰線を、一本の『巨大すぎる緑色の陽線』が下から串刺しにするように突き抜けていく光景が映し出されていた。

「こ、故障ではありません、陛下……! 『超純金大根1万本収穫』という異常なニュースを受け、世界中のVIPが手持ちの資産を全て KG(カイト・ゴールド) に両替し、全力で『買い注文』を入れています!」

冷静沈着な内務卿オルウェルですら、モノクルをズレさせながら冷や汗を滝のように流していた。

「馬鹿な! たかが大根のニュース一つで、帝国の国家予算を上回る買いが入るだと!? ええい、売りだ! さらに売り(ショート)を追加して、強引に叩き落とせ!」

「む、無理です陛下! これ以上は……『あれ』が起きてしまいます!」

「あれだと……?」

「**『ショートスクイーズ(踏み上げ)』**です!!」

オルウェルが悲鳴のような声を上げた。

空売り(ショート)とは、「借りた通貨を高値で売り、安値で買い戻す」という手法である。しかし、もし逆に価格が急騰し続けると、空売りを仕掛けた者は「損失が無限大」に膨れ上がる恐怖に直面する。そして、これ以上の損失を防ぐために、高い値段でも泣く泣く「買い戻し(損切り決済)」を強制されるのだ。

「ルナミス帝国が空売りを損切りして『買い』を入れる! その『買い』がさらに相場を押し上げ、他の空売り勢も連鎖的に巻き込んで『強制的な買い戻し』を誘発する! まさに、相場が相場を食い荒らす火柱ですッ!!」

『ピィィィィィィィィィィィッ!!!!』

執務室に、帝国が誇るスーパーコンピューター群から、レッドアラートがけたたましく鳴り響いた。

【警告:ルナミス国家ファンド、証拠金維持率0%を下回りました。強制ロスカット(買い戻し決済)を執行します】

「ああああああっ!! 帝国の……我がルナミス帝国の国家予算がァァァ!!」

オルウェルが頭を抱えて崩れ落ちた。

ズギュォォォォォォォォォォォォン!!!!

チャート上で、強制ロスカットによる「天文学的な買い注文」が炸裂。緑色の火柱がモニターの枠を突き破り、天井知らずの高みへと消えていった。

「『見えざる手』……いや、これは……農民の……悪魔の手だ……ッ!」

マルクス皇帝は、自らの『L-Pay経済圏』が、農村のポイントカードに完全に敗北したことを悟り、その場で「ガハッ!」と血を吐いて倒れ伏した。

同じ頃、カイト農場の地下室。

「ハァーーッハッハッハ!! 見ろリベラ! ルナミス帝国が焼かれていくぞ! 空売り勢の悲鳴がチャートの燃料となって、美しい 花火(ショートスクイーズ) を打ち上げている!」

魔族の貴公子ルーベンスが、最高級のワイングラスを片手に、狂ったような高笑いを上げていた。

「ええ、ルーベンス様。帝国の国家予算、そして便乗して空売りを仕掛けていた他国のファンドの資金も、すべて『KG運営委員会(我々)』の口座に合法的に吸い込まれましたわ。利用規約第48条に基づく、完璧な強制決済です(ニッコリ)」

悪徳弁護士リベラも、美しい顔に極悪非道な笑みを張り付けている。

「ひゃーっはっはっは! ルーベンス、あんた最高よ! この莫大な利益があれば、月人くんの所属事務所ごと買収できるわァァ!!」

ジャージ姿の女神ルチアナが、 札束(のホログラム) の雨の中でブレイクダンスを踊っていた。

彼ら【極悪トリオ】は、手を下すことなく、カイトの「ただの豊作」を利用して、世界経済の覇権を握ってしまったのだ。

そして、農場の縁側。

「……あ、あは……あはははははっ!!」

貧乏神リーザは、ファミコン型端末の画面を見上げながら、全身の震えが止まらずにいた。

彼女の放った『借金してのナンピン・フルレバ買い』。

通常なら一瞬で死に至る最悪の悪手だったが、直後の大根ニュースとルナミス帝国のショートスクイーズという「奇跡のタイミング」にガッチリと噛み合ってしまった。

『ピロリン♪ ピロリン♪ ピロリン♪』

ファミコンの画面では、含み益の数字がスロットマシンのように高速回転し、桁がバグったように増え続けていた。

金貨1000枚……5000枚……1万枚……10万枚……!!

「勝った……! 勝ったわ! 国家に! 世界に!! 私の 握力(ガチホ) が、大勝利を掴んだのよォォォ!! タワマンどころか、お城が買えるわァァァ!!」

リーザは虹色の吐瀉物まみれの服のまま立ち上がり、神に感謝の祈りを捧げるように両手を天に突き上げた。

極悪トリオの陰謀、帝国の崩壊、そしてFX戦士の奇跡の大逆転。

すべてが 最高潮(クライマックス) に達し、カイト・ゴールド(KG)ショックは幕を閉じた……かに見えた。

そう、これが『アナスタシア世界』のコメディでなければ、リーザは億万長者になれたかもしれない。

だが、この物語には必ず「ざまぁ」のオチが待っているのだ。