軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 8

【無自覚】カイトの「新種の大根」が相場をぶっ壊す

「……よし! 今日の土の具合も最高だね。Sランク肥料と、僕の魔力を少し混ぜて……と」

カイト農場の広大な畑。

世界中で血で血を洗うような金融戦争が繰り広げられ、縁側でリーザが白目を剥きながらファミコンのコントローラーを握りしめていることなど露知らず。

農民・カイトは、いつものように麦わら帽子を被り、のどかに土いじりをしていた。

「カイトさーん! あっちの 畝(うね) の大根、なんかピカピカ光って眩しいんですけどぉ!」

草むしりを手伝っていた武道家のキャルルが、目をパチパチさせながら声をあげた。

「ん? ああ、あれね。普通の『月見大根』に、ちょっと僕の豊穣スキルを過剰気味に注いで品種改良してみたんだ。そろそろ収穫のタイミングかな?」

カイトは、光を放つ畝の前にしゃがみ込み、葉っぱを掴んで「よいしょっ!」と引き抜いた。

――ピカァァァァァァァァァァァッ!!!!

抜けた瞬間、まるで太陽そのものが畑から出土したかのような、凄まじい黄金の光と魔力の波動が農場全体を包み込んだ。

「うわっ、眩しっ!」

カイトの手の中にあったのは、大根だった。

しかし、その身は純度100%の『黄金』のように輝き、濃密すぎる魔力がオーラとなって立ち上っている。

「やった! 新種の**『超純金・月見大根』**の収穫に成功だ! 試しにかじってみた時は、なんと『魔力の上限値が永続的にアップ』するおまけ付きだったんだよね。これがこの畝だけで、ざっと1万本は採れそうだよ!」

カイトが「えへへ、大豊作だー」と無邪気に笑う。

その凄まじい光と波動は、当然、地下室でモニターを睨んでいた極悪トリオの 目(センサー) にも飛び込んできた。

「……な、なんだあの光は!? 私の魔王センサーが振り切れているぞ!?」

魔族ルーベンスが、慌てて地上の監視カメラ映像をモニターに映し出す。

「ル、ルーベンス様……あれ、カイト様がまたとんでもない新種を……『魔力が永続アップする純金の大根』が、1万本ですって!?」

悪徳弁護士リベラも、冷静な仮面をかなぐり捨てて驚愕の声を上げた。

「……あいつ、アホなの!? いや、 天才(チート) なの!?」

女神ルチアナが、持っていたビール缶を落とす。

「ふふっ……ハハハハハハ!!!」

ルーベンスが、狂ったように笑い出した。

「素晴らしい! 素晴らしすぎるぞカイト! あの農民は、自覚なしに『世界の経済ルール』すら書き換えやがった!」

「どういうことですの!?」

「いいか、今の通貨『KG』は、あの農場の野菜を担保にした『Sランク野菜本位制』だ。つまり、カイトの畑に『魔力が永続アップする超純金大根が1万本発生した』ということは……市場の 常識(ファンダメンタルズ) に照らし合わせれば、『KGの裏付け資産(価値)が、突如として天文学的な数字に跳ね上がった』と同義なのだ!!」

ルーベンスの指が、キーボードを神速で叩き始める。

「リベラ! 今すぐルナミス新聞と全商業ギルドの魔導通信網に、この『超特大の好材料(IR情報)』を一斉送信しろ! ルナミス帝国の空売り砲など、世界中のVIPの『圧倒的な買い圧力』で飲み込んでやる!」

数分後。

マルクス皇帝の売り圧力によって、絶望的なナイアガラ落下を続けていたリーザのファミコン画面に、突如として『ニュース速報』のテロップが流れた。

【速報:カイト農場にて、魔力永続アップ効果を持つ『超純金大根』が1万本収穫される。※当大根の購入はKG決済のみ】

「……えっ?」

縁側で魂が抜けかけていたリーザが、ピクッと反応する。

その直後、世界中で魔導通信石を握りしめていた王族、貴族、大商人たちの欲望が爆発した。

『なんだとォォ!? 魔力が永続アップだとォォ!?』

『それを食えば、人間でもエルフや魔族に並べるのか!?』

『ルナミスの金貨などどうでもいい! 全財産をKGに換えろ! あの大根を絶対に手に入れろォォォ!!』

ズズンッ……!!

ファミコン画面の、底なし沼に沈んでいた真っ赤な大陰線が。

ピタリ、と止まった。

『ピロリン♪』

そして、小さな緑色の棒(買い)が生まれた。

それは次の瞬間には太い柱となり、さらに次の瞬間には、ルナミス帝国の売り圧力を全て薙ぎ払いながら、空高くへと突き進む『巨大な火柱(超特大陽線)』へと姿を変えたのだ!

ギュイィィィィィィィィィィィンッ!!!!

「あ……ああ……っ!!」

リーザの目から、大粒の涙が溢れ出した。

「反発した……! 私のナンピン買いのところで底を打って、反発したわァァァ!! 行けェェ! そのまま天まで突き抜けなさいィィィ!!」

カイトの「ただの豊作」が、世界の経済をひっくり返した瞬間だった。

そしてこれは、空売りを仕掛けていたルナミス帝国にとって「完全なる死刑宣告」を意味していた。