軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 2

【暴騰】Sランク野菜本位制! 世界経済がカイト村にひれ伏す

「はい、キャルルちゃん。今日の草むしりのお手伝い分、100 KG(カイト・ゴールド) ね! 後で甘~い『ハニーかぼちゃ』と交換しようか」

「わぁい! カイトさんとの愛のマイレージが貯まりましたぁ!」

快晴の空の下、農民・カイトはご機嫌な様子で、キラキラ光る小さな紙幣(ルチアナが徹夜で偽造防止の魔法をかけたもの)をキャルルに手渡していた。

カイトにとって、KGとはただの「ごっこ遊びの肩たたき券」。

村のみんながニコニコと野菜と交換してくれるだけで、彼の心はホッコリと満たされていた。

しかし、そのほのぼの空間からわずか数キロ離れた 天魔窟(ダンジョン) の入り口や、大陸各地の商業ギルドでは、かつてない規模の**「阿鼻叫喚のパニック」**が巻き起こっていた。

「ど、どういうことだ!? 今後、カイト農場の『Sランク野菜』は、金貨では一切買えなくなるだと!?」

大陸最大の流通ネットワークを持つ『ゴルド商会』の重役が、魔導通信石を握りしめながら泡を飛ばした。

「は、はい! カイト農場を影で牛耳る『KG運営委員会』からの公式声明です! 『当農場の全作物は、今後専用通貨【カイト・ゴールド(KG)】のみで決済を行う』と……!」

「馬鹿な! あの『肉椎茸』や『月見大根』なしで、どうやってうちのVIP顧客の舌を満足させろというのだ! あれを食べないと魔力も闘気も回復しない体になってる重度のジャンキー(貴族)が山ほどいるんだぞ!」

そう。カイトの作る規格外のSランク野菜は、すでに世界中の権力者たちの胃袋と細胞を完全に支配していた。

「美味い」のはもちろん、寿命延長やステータス爆増というチート効果の虜になったVIPたちは、もはや「カイトの野菜」なしでは生きていけない体になっていたのだ。

「ええい! ならばその『KG』とやらを両替しろ! レートはいくらだ!」

「現在、初期固定レートで【金貨1枚(1万円)=10000 KG】です!」

「よし! うちのギルドの全予算を突っ込んで、市場のKGを買い占めろォォォ!」

こうして、大陸中の金貨(ルナミス・ゴールド等)が、濁流のように「KG運営委員会」――すなわちカイト農場の地下室へと流れ込み始めた。

「ククク……。かかったな、愚かな 群衆(カモ) ども」

地下室で、山のように積まれていく金貨を前に、ルーベンスが皮肉な笑みを浮かべた。

彼の目の前には、ルチアナが作成した魔導モニターがあり、そこには『KG/ルナミス金貨』の為替チャートが映し出されている。

「ルーベンス様、VIPたちからのKG買い 注文(ロング) が殺到しておりますわ。完全に『Sランク野菜本位制』が市場に認識されました」

悪徳弁護士・リベラが、タブレット端末を弾きながら優雅に報告する。

「素晴らしい。 需要(ウォンツ) が 供給(サプライ) を圧倒的に上回った。……ならば、我々『中央銀行(運営)』がやるべきことは一つだ」

ルーベンスが、タバコを吹かしながら、キーボードをターンッ!と乱暴に叩いた。

「 流通制限(ロックアップ) 。そして……レートの吊り上げ(バンプ)だ」

その瞬間、魔導モニターのチャートが、まるでロケットが発射されたかのように、垂直に跳ね上がった。

【1 KG = 1円】だった価値が。

数分のうちに【1 KG = 10円】になり。

1時間後には【1 KG = 100円】を超え。

ついには【1 KG = 1000円(銀貨1枚分)】にまで大暴騰したのだ!

「ひゃーっはっはっは!! 見なさいよルーベンス! チャートが天を貫いてるわ! これで私の月人くんグッズ購入資金が、何もしなくても1000倍になったってことね!!」

女神ルチアナが、ビール缶を振り回しながら狂喜乱舞する。

「その通り(資本論)。カイトの野菜を人質に取っている限り、奴らはいくらレートが上がろうとKGを買わざるを得ない。我々は無限に湧き出る富を、ただ高みの見物で回収するだけだ」

ルーベンスが冷徹なファンドマネージャーの顔でほくそ笑む。

「あはは、カイトの純粋な善意が、まさかこんな凶悪な 金融兵器(マネーゲーム) の種になるなんて、あの農民は夢にも思っていないでしょうね(悪徳スマイル)」

極悪トリオの笑い声が地下室に響き渡る。

カイトのほのぼのポイントカードは、開始わずか半日にして、世界経済を狂わせる「魔の仮想通貨」へと変貌を遂げていた。

そして、その頃。

農場の縁側で、パンの耳を握りしめたまま熟睡していた貧乏神リーザの鼻が、ヒクヒクと動いた。

「むにゃ……? なんだか、空気が……甘い?」

リーザが目をパチクリと開ける。

極貧生活で研ぎ澄まされた彼女の 第六感(マネー・センサー) が、大気中に充満する『莫大な 金(ゴールド) が動く匂い』を確実にとらえていた。

「この匂い……どこかで、信じられないほど美味しい『儲け話』が転がってる匂いがするわ……!」

リーザの瞳孔が開き、両目にクッキリと『KG』のマークが浮かび上がる。

世界を巻き込む為替戦争に、最も相場に手を出してはいけない女(FX戦士)が、ついに参戦への産声を上げたのだった。