軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 10

【宴会】大団円と、ガオンの「トラクター就職」

『『『『合体解除コマンド、入力!!!』』』』

巨大死甲虫兵器の大爆発を背に、カイトと四神たちの「一秒でも早く別れたい」という想いが完全にシンクロした。

パァァァァッ!

ガオガオンの巨体が光に包まれ、五体の神獣へと瞬時に分離する。

コックピットから放り出された農民・カイトは、ドスッと柔らかい土の上に尻餅をついた。

「はぁ……はぁ……。お、終わった……。僕の 脳内(プライバシー) が、ようやく平和に……」

カイトが安堵の涙を流して天を仰ぐ。

しかし、分離した四神たちは、平原の上で再びいつものドロドロの昼ドラを開始していた。

「あーあ、せっかくの合体だったのにカイトの奴、すぐ解除しちゃうんだもん。ねえ白虎、私疲れちゃったから背中に乗せてって♡」

「おおっ! この白虎の背中、朱雀殿の専用シートとして永久指定させていただきますぞ!」

「チッ。白虎め、調子に乗りおって(孫子)。朱雀、後で天界の裏庭に来い。話がある(方法序説)」

「……みんなして私を置いていく。もういい。玄武シールドで引きこもる……」

「お前ら、いい加減にしろォォォォ!!!」

カイトの怒声が、農場に響き渡った。

「戦いは終わったんだ! さっさと天界(職場)に帰れ! 二度と僕の脳内にそのドロドロの恋愛模様を流し込むな!!」

「ヒッ!?」

S級農民のガチギレ(物理的な大地のプレッシャー付き)にビビった四神たちは、「お、お邪魔しましたー!」とそそくさと光の柱となって天界へと帰っていった。

サークルクラッシャーもメンヘラも、キレた農家には勝てないのだ。

「カイトさん! 大丈夫ですかぁ!」

そこへ、武道家のキャルルが猛ダッシュで駆け寄ってきた。

彼女の背中には、ボロボロの襤褸布を纏い、口にパンの耳を咥えたまま気絶している少女が背負われている。

「リーザちゃん! 無事だったんだね!」

「はい! ダンジョンの地下牢に捕まっていたところを救出してきました! 死蟲軍団がカイトさんに気を取られている隙に、音速で潜入したんですぅ!」

キャルルが誇らしげに胸を張る。

「むにゃ……。キャルル、家賃、来月出世払いで……」

気絶したまま寝言を呟くリーザ。その手には、ちゃっかりダンジョンからくすねてきたと思われる『親指大のオリハルコンの欠片』が一つ、握りしめられていた。

「本当にブレないね、この子は……」

カイトが呆れながらも、無事を喜んで優しく微笑んだ。

「……おい。害虫駆除(メインディッシュの前の余興)は終わったか?」

農場の奥から、真っ白なコックコートを身に纏い、巨大な中華鍋を片手に持った料理人・龍魔呂が現れた。

彼の背後には、長テーブルに並べられた信じられないほど豪華な料理の数々があった。

カイトが死守したSランクキャベツを使った『極上ホイコーロー』。

最高級トマトをふんだんに使用した『魔牛の特製ビーフシチュー』。

そして、フェンリルの氷でキンキンに冷やされた『世界樹のハチミツレモネード』。

「さあ、勝利の祝宴だ。カイトが手塩にかけて育てた野菜のポテンシャル、俺の料理で限界まで引き出してやったぞ。……冷めないうちに食え」

「「「いただきます(わ)!!!」」」

龍魔呂の言葉が終わるか終わらないかのうちに、魔王ラスティア、不死鳥フレア、創造神ルチアナ、そして匂いで覚醒した貧乏神リーザが、猛獣のようにテーブルへと群がった。

「んんんんん~~~~ッ!! 美味しいわぁぁぁ!」

リーザがホイコーローを山盛りご飯に乗せて掻き込む。

「空腹の限界を超えた胃袋に、カイトの甘いキャベツと龍魔呂の暴力的な旨味が染み渡るゥゥ!! 生きててよかったァァ!!」

農場に、いつもの騒がしくも平和な笑い声が戻ってきた。

カイトもキャルルと一緒に席につき、自慢のトマトシチューを頬張る。

「……あの、カイト。……いや、我がマスター(主)よ」

宴もたけなわとなった頃。

控えめな機械音声と共に、カイトの背後に巨大な影が落ちた。

分離して残っていたメカライオン・ガオンである。

「どうしたの、ガオン? 君も食べる?」

カイトが、龍魔呂に用意してもらった『特上肉のオイル焼き』を差し出す。

「ああ、いただく。……だが、その前に、正式な願いがある」

ガオンは、黄金の巨体をゆっくりと地面に伏せ、カイトに向かって深々と頭を下げた。

「俺は……もう天界には帰らん。あんなドロドロの職場に戻ったら、今度こそ俺のメインコア(胃)がショートしてしまう」

「まあ、気持ちは痛いほどわかったよ……」

「だから、約束通り俺を雇ってくれ! 見ろ、俺のこの姿を!」

ガオンが、背中の装甲をガシャコン!と変形させた。

なんと、その巨大な後脚の間に、どこから調達したのか『巨大な鉄のクワ(鋤)』が完璧なジョイントで接続されていたのだ。

「これぞ、我が新形態! 『聖獣トラクター・ガオン』だ! お前が望むなら、この強靭な脚力で農場を一日に一万ヘクタール耕して見せよう! 燃料は、龍魔呂の飯だけで構わん!! だから俺を、お前の農機具にしてくれぇぇ!!」

体長10メートルの神の獣が、涙ながらに「農機具就職」を懇願してくる。

「一万ヘクタールって……この農場、そんなに広くないんだけど……。まあ、いっか」

カイトは、ため息をつきながらも、どこか嬉しそうに笑った。

神、魔王、エルフ、人魚、貧乏神、処刑料理人。

これだけハチャメチャな連中が居候しているカイト農場だ。今更、巨大なメカライオンのトラクターが一台増えたところで、何も変わりはしない。

「よろしく頼むよ、ガオン。明日から早速、裏山の開墾を手伝ってもらうからね」

「おおお! 感謝するマスター! 私は生涯、お前の忠実な農機具だぁぁ!!」

ガオンが歓喜の咆哮(ただしボリューム控えめ)を上げる。

「さあさあ! 新入りのトラクターさんも一緒に、乾杯ですぅ!」

キャルルが、全員のグラスにレモネードを注いで回る。

「農場と、僕たちの平和な日常に!」

カイトがグラスを高く掲げた。

「「「乾杯!!!」」」

夕暮れの空の下。

カイト農場には、今日も世界最高峰のチートキャラたちの笑い声と、極上の飯の匂いが漂っている。

伝説のダンジョンや魔人の陰謀など、このドタバタな日常の前では、ただのスパイス(肥料)に過ぎないのだ。

カイトの異世界農業ライフは、巨大トラクター(神獣)という新たな家族を迎え、ますます賑やかに続いていくのだった。