軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 8

【合体】カイト絶叫! 「こ、こんな奴等と合体しなきゃいけないのかあああ!!」

「あああああっ! 僕のトマトがァァァ!!」

背後に迫る巨大死甲虫兵器の足。踏み潰される寸前の、最高級トマトのビニールハウス。

それを見た瞬間、農民・カイトの理性の糸がプツンと切れた。

彼は、地面に転がっていた黄金の銃――『ガオンマグナム』をひったくるように拾い上げた。

「ガオン! トラクターでも草刈り機でも、何でもいい! 僕のトマトを守ってくれ!!」

「承知した、我がコマンダー!!」

メカライオン・ガオンの胸部装甲がガコンッ! と開き、眩い光がカイトを包み込んだ。

次の瞬間、カイトの身体はフワリと宙に浮き、ガオンの 体内(コックピット) へと吸い込まれていく。

「さあ! コマンダー・カイトよ、ガオンマグナムの引き金を引け! それが『聖獣合体』の合図であり、我ら五体の精神を一つに繋ぐ『リンク・システム』の起動キーだ!」

「わ、わかった! 早くやってよ!」

カイトはコックピットのコンソールに銃をセットし、迷わず引き金を引いた。

『 承認(システム・オールグリーン) ! 聖獣合体・起動!!』

無機質なアナウンスと共に、農場の上空に五色の魔法陣が展開される。

「おおっ!? なんかすごくロボットアニメっぽい熱い展開!!」

カイトが目を輝かせた、その瞬間だった。

『精神リンク、 接続(コネクト) 完了。四神の思考データを、コマンダーの脳内に直接流し込みます』

「えっ? 思考データを直接……?」

――ズギュゥゥゥゥンッ!!

カイトの脳内に、凄まじい情報量の『他人の心の 声(テレパシー) 』が、濁流のように流れ込んできた。

それが、勇気や希望、世界を救う正義の心であれば、どれほど良かったことか。

『あーあ、青龍からのLINE、またスタンプだけ。つまんなーい。次は白虎にシャネル(天界の高級ブランド)のバッグでも貢がせようかしら。ああ、でもガオンのあの真面目ぶった顔もムカつくから、ちょっと誘惑してメチャクチャにしてやろうかな♡』

「ブフォッ!?」

カイトがコックピットで盛大にむせた。朱雀の真っ黒すぎるサークルクラッシャー思考がダイレクトアタックしてきたのだ。

『ハァ……ハァ……! 朱雀殿が俺を見てウインクした! やばい、尊い! 俺はあの人のためなら死ねる! 今日も朱雀殿が歩いた後の土をこっそり瓶に詰めて……』

「白虎、お前ただのストーカーじゃないか!! やめて、僕の脳内にキモい思考を流し込まないで!」

『フッ……。白虎の奴、朱雀が俺と裏で繋がっているとも知らずに滑稽なことだ(孫子)。だが待てよ、もし朱雀がガオンにも手を出したら、俺がキープから外れる確率が……いや、私の計算に狂いはないはず(方法序説)……』

「青龍! インテリぶってるけど、やってること最低の昼ドラ不倫男だからな!!」

そして、最後に極めつけの重低音が響き渡る。

『……どうせ私は下半身。誰も私を見てくれない。合体しても土台になるだけ。死にたい。朱雀は返事くれない。もうダメだ、自爆スイッチ押そうかな。いや、やっぱり玄武シールドで……』

「玄武ゥゥ! 頼むから戦闘中に 手首(シールド) 切ろうとするなァァァ!!」

「こ、こんな奴等と合体しなきゃいけないのかああああああッッ!!!?」

カイトの絶叫が、コックピット内に木霊した。

熱血展開はどこへやら。カイトの脳内は今、世界で最もドロドロで最悪な「ブラック企業の人間関係」を、VRで強制体験させられているような地獄の拷問状態だった。

「わかってくれたかカイト! それが俺の 日常(ストレス) だ!!」

ガオンが、なぜか誇らしげに(?)同調してくる。

「ガオン、君ホントによく生きてたね!? 僕、もう吐きそうだよ!!」

カイトは涙目で頭を抱えた。

だが、合体シーケンスは止まらない。

『脚部・玄武、接続!』

「あああ! 重い! 玄武の『死にたい』って念が物理的に重い!!」

『右腕・青龍、左腕・白虎、接続!』

「腕の中でドロドロの三角関係が火花散らしてる! 気持ち悪い!!」

『背部ウイング・朱雀、接続!』

「背中から『全員を手玉に取ってやる』って邪悪なオーラがプンプンするよォォ!」

「カイト! 気をしっかり持て! お前の『農民としての無の心(大地の心)』で、こいつらの雑念を力ずくで押さえ込むんだ!」

「無茶言うな! ……でも、このままじゃトマトが潰される!」

カイトは、極限の 精神的苦痛(ストレス) に顔を青ざめさせながらも、ガオンマグナムを強く握りしめた。

「もう……早く終わらせてくれ!! 聖獣合体ッッ!!!」

ピカァァァァァァァァァッ!!!

五体の神獣が、天を衝く光の中で一つに重なり合う。

黄金の獅子を胸に抱き、青と白の双腕を持ち、背には紅蓮の翼、足元には絶対の重力を支配する漆黒の亀。

「フハハハ! いかなる悪足掻きをしようと、無駄だ! 踏み潰せ!」

魔人ギアンが、巨大死甲虫兵器に命じる。

しかし。

光の中から姿を現した『それ』は、死甲虫兵器の巨大な足を、たった片手(白虎の腕)でガシィッ!と受け止めていた。

『――我ら、創世の調停者にして、大地の守護者。聖獣機神……!』

カイトの(怒りとストレスに満ちた)声が、外部スピーカーから轟く。

『ガオガオン、ここに降臨ッッ!!!』

全高50メートル。

神のオーラと、農民の怒りと、最悪のドロドロ修羅場パワーを内包した究極のスーパーロボットが、ついに死蟲軍団の前にその偉大なる姿を現した。