作品タイトル不明
EP 5
【侵攻】死蟲軍団、地上へ! カイト農場、防衛線開始
「キリキリキリキリ……ッ!!」
「ギュルルルルルッ!!」
カイト農場を囲む平原は、異様な金属音と羽音で完全に支配されていた。
地平線の彼方から、黒い津波のように押し寄せてくる数万の蟲の群れ。太陽の光を不気味に反射するその軍勢は、紛れもなくサルバロスの生み出した生体メカニック『死蟲軍団』だった。
「ひぃぃ……っ! なんだあのおぞましい数の虫は! 殺虫剤じゃ絶対効かないサイズだよ!?」
農民・カイトが、ガオンの背中に隠れながら悲鳴を上げる。
「任せてください、カイトさん! 愛の巣(農場)に害虫は一匹たりとも入れませんぅ!!」
先陣を切って飛び出したのは、武道家のキャルルだった。
彼女は特注の強化靴(雷竜石入り)に魔力を込め、月影流の構えをとる。
「はぁぁぁぁッ! 『月影流・乱れ鐘打ち』!!」
マッハの脚力から放たれる連続回し蹴りが、最前線を走る重装甲の『 死甲虫(ビートル) 型』たちに炸裂する。
ドゴォォォンッ!! と凄まじい衝撃音が響くが、死甲虫たちは分厚い装甲を凹ませながらも、歩みを止めない。
「えっ!? 私の蹴りで砕けないなんて……硬すぎですぅ!」
キャルルが驚愕する。
「物理が駄目なら魔法よ! ブラックホールで塵も残さず吸い込んであげるわ!」
魔王ラスティアが空中に浮かび上がり、両手から極大の重力魔法を放った。
「全てを燃やし尽くしなさい、不死鳥紅蓮の舞い!」
不死鳥フレアも、上空から灼熱の炎龍を降らせる。
魔王と調停者の合体攻撃。普通なら軍隊すら一瞬で消し飛ぶオーバーキルだ。
しかし。
「ギィィィィッ!!」
上空を飛び回っていた無数の『 死蛾(モス) 型』が、一斉に特異な 鱗粉(チャフ) をばら撒いた。
その鱗粉は、魔力を中和・拡散させるアンチ・マジックのフィールドを形成し、ブラックホールと紅蓮の炎を、着弾する前にシュウゥゥ……と掻き消してしまったのだ。
「な、なんだと!? 私の魔王魔法が霧散しただと!?」
ラスティアが目を見開く。
「そんな……私の炎が効かないなんて!」
フレアも焦りの声を上げた。
「甘いぞ! 奴らはただの魔物ではない!」
カイトの隣で、メカライオンのガオンが苦々しく叫んだ。
「死蟲軍団は、創世の『神蟲魔大戦』を生き抜いたバケモノの軍勢だ! 奴らは数万年かけて、我々『神』や『魔王』の魔力波長を完全に解析し、 対策(アップデート) を済ませているのだ! 力任せの魔法や物理攻撃では突破できん!」
ガオンの警告を証明するように、死蟲軍の反撃が始まった。
「シュガァァァッ!!」
後方に控えていた『 死蜘蛛(スパイダー) 型』が、魔力を帯びた粘着性の特殊ワイヤーを吐き出した。
それは網のように広がり、空中にいたラスティアとフレアの手足を絡め取っていく。
「きゃああっ!? なによこの糸、魔力で切れないわ!?」
「くっ……体が、動かん!」
さらに、上空から『 死蟷螂(マンティス) 型』が急降下し、超振動する高周波ブレードの両腕で、魔法の防壁ごとキャルルたちを分断していく。
「あわわわ! お友達(植物)の結界も、酸で溶かされちゃいますぅ!」
エルフのルナが展開した防衛網も、無数の『 死蟻(アント) 型』が吐き出す強力な酸によって、みるみるうちに突破されていく。
「マズいわね。まさか神の 力(チート) をメタってくる軍隊が存在したなんて……」
酒瓶を持ったままの創造神ルチアナも、冷や汗を流して顔を引きつらせた。
カイト農場に寄生する規格外のチートヒロインたち。
彼女たちの「個人の暴力」を、敵は「徹底的なメタ対策と数の暴力(システマチックな連携)」で完全に封じ込めてしまったのだ。
「みんな! 下がって!」
カイトが叫ぶが、分断されたキャルルたちは防戦一方で後退することしかできない。
ジリジリと、死蟲軍の最前線がカイトの愛する畑へと迫ってくる。
「……クククッ。素晴らしい。圧倒的な強者が、理不尽な力の前に絶望へと沈んでいく顔……。ああ、これこそが極上の『群衆心理』というやつだね」
不意に、戦場に不気味な声が響き渡った。
死蟲軍がスッと道を空け、その中心から、巨大な 鎌(デスサイズ) を引きずりながら、道化師の仮面を被った男が現れた。
「初めまして、カイト農場の皆さん。私は死蟲軍指揮官、魔人ギアン。……さあ、絶望のショー(収穫祭)を始めようか」
最悪の指揮官が、ついにカイトたちの前にその姿を現した。