軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 4

【農業】S級農家のメンタルケア! ガオン、カイトを「主」と認める

「ふぅ……。よし、こんなもんかな」

カイト農場、裏庭の広場。

農民・カイトは、泥だらけの手をタオルで拭いながら、満足げに頷いた。

彼の目の前には、仰向けにゴロンと寝転がった体長10メートルの巨大メカライオン――聖獣ガオンの姿があった。

墜落直後はボロボロで黒焦げだったガオンの全身には、現在、カイト特製の『S級肥料ブレンド・薬膳マッド(泥)パック』がたっぷりと塗り込まれている。

「おおお……あぁぁぁ……っ」

ガオンの口から、完全に骨抜きにされたオッサンのような、だらしない機械音声が漏れていた。

「す、すごいぞカイト……。お前がその泥を塗って撫でてくれるたびに、傷ついた装甲が自己修復し、ショートしていた回路が正常化していく……! 何より、ドロドロの社内恋愛で荒みきっていた私のメインコア(胃)が……ポカポカと温かい……っ!」

「あはは、よかった。土の力は偉大だからね。植物だけじゃなくて、疲れた心にも効くんだよ」

カイトが、麦わら帽子を直しながら優しく微笑む。

農業スキル【豊穣の息吹】を込めたカイトのマッサージは、金属のボディすらも癒やすチート級のヒーリング効果をもたらしていたのだ。

「……おい。機械のライオンだろうがなんだろうが、怪我人(獣)なら栄養を摂れ」

そこへ、食欲を暴力的に刺激する凄まじい匂いと共に、料理人・龍魔呂がやってきた。

彼が抱えている巨大な大皿には、熱々に熱された鉄板の上でジュージューと音を立てる『Sランク魔牛の極厚ステーキ』が乗っている。

「メカに肉など……私は天界の無味乾燥な高純度エネルギーしか摂取したことが……」

「いいから食え。機械油の代わりに、極上の牛脂と特製スパイスをたっぷり染み込ませてある。胃潰瘍(コアの痛み)にも優しい特製ソースだ」

龍魔呂が、ステーキの山をガオンの巨大な顎の前にドンッ!と置いた。

ガオンは恐る恐る鼻を近づけ……そして、一口でその肉塊を平らげた。

「…………ッッッ!!!!」

ガオンの 両目(カメラアイ) が、カッと黄金色に輝いた。

「う、美味ぁぁぁぁぁぁい!!!! なんだこの芳醇な香りと、口の中でとろける旨味の爆弾は!! 噛むたびに溢れ出す肉汁が、私の錆びついたシリンダーの隅々まで潤していくぅぅぅ!!」

ガオンは、猛然と巨大なステーキの山を平らげていく。

「あぁ……美味しい……。泥パックは温かいし、お前たちの笑顔は優しさに溢れている……」

ガオンの目から、再びオイルの涙が滝のように流れ落ちた。

しかし、それは先ほどの絶望の涙ではなく、歓喜と感動の涙だった。

「朱雀のように私を陥れる裏表もなく……。玄武のように重すぎる依存もなく……。ただ純粋に、無償の愛で私を包み込んでくれる……!」

ガオンが、子猫のようにカイトの足元に巨大な頭をすり寄せる。

「カイト! お前は、私の愛読する『星の王子様』のように純粋で美しい魂を持っている!」

「えっ、あ、うん。くすぐったいよガオン」

ガオンは不意に立ち上がると、その胸部の装甲をスライドさせた。

中から、一丁の神々しいレーザー銃――**『ガオンマグナム』**が飛び出し、カイトの足元にコトリと落ちた。

「それは、私と共に戦う 契約者(コマンダー) の証だ! カイト! 私の、いや、俺の 主(マスター) になってくれ!! 俺はもう、あのドロドロの職場(天界)には帰りたくない! お前の農場で、一生お前に仕えさせてくれぇぇ!!」

体長10メートルの神獣が、涙ながらに農民に就職(契約)を懇願する。

「ええっ!? 契約って……僕、ただの農民だよ? 武器なんて使えないし……」

カイトが戸惑いながらガオンマグナムを拾い上げる。

「構わん! お前が望むなら、畑の土を耕すトラクターにでも、肥料を撒く散布機にでもなってやる! だから、俺を見捨てないでくれ!」

「ト、トラクター代わりなら……まあ、助かる、かな?」

カイトが苦笑いしながら頷いた、その瞬間だった。

ピロロロロロンッ!!

ガオンの頭部のレーダーアンテナが激しく明滅し、けたたましい警告音が鳴り響いた。

「ど、どうしたのガオン!?」

カイトが驚いて尋ねる。

「……レーダーに、無数の巨大な生体反応! この禍々しい波長……間違いない。かつて我々が封印した、『死蟲軍団』だ!!」

ガオンの声が、歴戦の勇者のそれへと一瞬で切り替わる。

「死蟲軍団……?」

「最終ダンジョンから溢れ出した死蟲機たちが、この農場に向かって真っ直ぐに進軍してきている! 数は……数万!!」

ガオンの報告に、龍魔呂がタバコを揉み消して鋭い視線を向けた。

一方、その頃。

最終ダンジョンの最下層、一番安い人質の部屋(地下牢)では。

「むにゃ……カイトぉ、お肉……ステーキ……はっ!?」

気絶していたリーザが、空腹の限界で目を覚ました。

「な、なによここ!? 私の金銀財宝は!? っていうか、外からすっごい量のムシが湧き出てるんだけどォォォ!?」

リーザを「一番安いエサ」として利用した魔人ギアンの死蟲軍団が、カイト農場という最強のイレギュラー拠点へ向けて、ついにその牙を剥いたのだった。