軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 9

【圧】新人が龍魔呂に手を出すなんて!

翌朝。

小鳥のさえずりと共に目覚めたキャルルは、最高の気分だった。

「ん~っ! よく寝ました!」

昨夜の龍魔呂との「BARデート(と思い込んでいる食事)」の余韻がまだ残っている。

胃袋は満たされ、心はときめきで一杯だ。

「ふふ、今日も張り切って警備しちゃいますよ~! 龍魔呂さんのために!」

キャルルがスキップしながら農場の広場へ出ようとした、その時だった。

「……ちょっといいかしら? 新入りさん」

地獄の底から響くような、ドスの利いた声がした。

キャルルのうさ耳がピーンと凍りつく。

振り向くと、そこには農場の建物の影に佇む、四つの黒い影があった。

創造神ルチアナ。

魔王ラスティア。

不死鳥フレア。

そして、強欲アイドルリーザ。

彼女たちの背後には、ゴゴゴゴゴ……という擬音が聞こえそうなほどの、どす黒いオーラが立ち昇っていた。

「あ、あの……おはようございます? 皆さんお揃いで、どうされたんですか?」

キャルルが引きつった笑顔で尋ねる。

ルチアナが一歩前に出た。ジャージ姿だが、その瞳孔は開いており、神の 威圧(プレッシャー) が漏れ出ている。

「聞いたわよ。……昨日の夜、龍魔呂の『離れ』に入り浸ってたそうじゃない?」

「ひっ!?」

「しかも……『砂肝と人参のアヒージョ』に、『黄金出汁巻き卵』ですって?」

ラスティアがボキボキと指を鳴らす。

「私たちですら、月に一度予約が取れるかどうかのプレミアムコースを……入ったばかりの新人が、抜け駆けとはいい度胸ね?」

フレアが青い炎を揺らめかせながら微笑む(目が笑っていない)。

「私なんて! コンビニのおにぎりだったのに! あんただけズルいズルいズルい!!」

リーザがハンカチを噛んで悔しがる。

キャルルはカイトの後ろへ隠れたいが、カイトは畑の向こうだ。逃げ場はない。

「え、えっと! あれは戦勝祝いというか、龍魔呂さんが『褒美だ』って……!」

「ハァ? 褒美?」

ルチアナがキャルルの胸ぐら(パーカー)を掴み、壁際に追い込んだ。

ドンッ!!

創造神による、恐怖の壁ドンである。

「いい? よーくお聞きなさい、色ボケウサギ」

ルチアナの顔が至近距離に迫る。

「龍魔呂はね……私のもの(ターゲット)なのよ!」

「は、はいぃ!?」

「あの男の冷徹な視線! 罵倒! そして焦らしプレイ(料理のお預け)! ……あれは全て、私という高貴な存在に向けられた愛のムチなの! 貴女ごときが、横から色目を使っていい相手じゃないのよ!」

(……この人、何言ってるの? ドMなの?)

キャルルは混乱した。

「そうだよー。龍魔呂の飯を独占するなんて、魔王として見過ごせないなー」

ラスティアがジリジリと距離を詰める。

「新入りには教育が必要ですね。……まずはカイト様の人参畑の草むしり1000本ノックからかしら?」

フレアが優雅に提案する。

「あわわわ……!?」

キャルルは涙目になった。

怖い。リザードマンの軍勢より遥かに怖い。

食い物の恨みと、歪んだ 独占欲(ルチアナ) が混ざり合った女たちの嫉妬は、Sランク級の災害だ。

「ご、ごめんなさいぃぃ! 悪気はなかったんですぅぅ!」

キャルルはその場で土下座した。

しかし、彼女の脳裏にある「解決策」が閃いた。

(そうだ……! 皆さんが怒っているのは、龍魔呂さんを取られたから……。なら、別のターゲットを差し出せば!)

キャルルは顔を上げ、震える声で提案した。

「で、でもっ! 皆さんには、カイトさんがいらっしゃるじゃないですか!!」

その瞬間、場の空気がピタリと止まった。

「えっ?」

「私は龍魔呂さんが好きなんです! だから龍魔呂さんは私に譲ってください! その代わり、農場の主であるカイトさんは、皆さんのものってことで……どうですか!?」

キャルルは必死だった。

これぞ完璧な住み分け(ウィンウィン)。

カイトというSランク物件を譲れば、彼女たちも納得するはずだ。

しかし。

ルチアナたちは顔を見合わせ、そして一斉に「虚無の目」をした。

「…………は?」

まるで「明日地球が滅びる」と言われた時のような、乾いた反応だった。