軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 6

【温泉】裸の付き合いと、ルナの羽振り

「極楽~……極楽だわぁ~……」

天魔窟の大浴場『デモンズ・スパ』。

その露天風呂エリアに、気の抜けた声が響いた。

湯煙の向こうで、三人の少女が温泉に浸かっていた。

強欲アイドル・リーザ。

月兎族の冒険者・キャルル。

そして、エルフの次期女王候補・ルナ。

「ふふ、いいお湯ね。肌がツルツルになるわ」

ルナが長い金髪をアップにまとめ、優雅に湯を掬う。

その肢体は、同性の目から見ても完璧だった。

出るべきところは出て、締まるべきところは締まっている。まさに女神の造形美だ。

「くっ……! 金持ちで、美人で、ナイスバディって……神様は不公平よ!」

リーザが自分の胸元を見下ろして嘆く。

アイドルとして決して悪くはないスタイルだが、ルナと並ぶとどうしても「庶民感」が出てしまう。

「あはは、リーザさんドンマイです! ……でも、私はルナさんの肌の白さが羨ましいなぁ」

キャルルがうさ耳をパタパタさせた。

彼女の身体は小柄で華奢だが、太ももからふくらはぎにかけての筋肉だけは、芸術的なまでに研ぎ澄まされていた。

「あら、キャルルさんのその脚、素敵よ? 瞬発力とバネを感じさせるわ」

ルナが褒める。

「えへへ、自慢の商売道具ですから! 毎日スクワット500回やってます!」

「ご、500回……! その可愛い顔で……」

リーザが引きつった。

温泉で温まった後は、お待ちかねの「サウナ」タイムだ。

サウナ好きのキャルルが、二人に作法をレクチャーする。

「いいですか? サウナ10分、水風呂1分、そして外気浴! これを3セット繰り返すことで、精神が解放される『ととのう』状態になるんです!」

「なるほどね。郷に入っては郷に従え、か」

三人は並んで高温サウナ室へ。

じっとりと汗をかき、我慢した後に飛び込む水風呂の快感。

そして、露天エリアのデッキチェアに横たわった瞬間――。

「「「………………」」」

世界が回る。

血液が全身を駆け巡り、脳内麻薬がドバドバと溢れ出す。

「……キタわ。これが『ととのう』ってやつね……」

リーザが虚空を見つめて呟く。

「ふあぁ……。天国……人参畑が見えますぅ……」

キャルルが脱力する。

「悪くないわね。魔力の循環も良くなった気がするわ」

ルナも満足げだ。

心地よい浮遊感の中、リーザがふと疑問を口にした。

「ねえ、ルナ。……あんたさ、なんでそんなにお金持ちなの?」

「ん?」

「ファミレスも、カラオケの弁償代も、ポンって払っちゃうし。……エルフの国ってそんなに景気いいの? それとも何か仕事してるの?」

リーザの問いに、キャルルも耳をそばだてた。

確かに、ルナの羽振りは異常だ。湯水のように金貨を使っている。

ルナは目を閉じたまま、ふふっと笑った。

「仕事? してないわよ。私は自由人だもの」

「じゃあ、あのお金は?」

「うーん、そうねぇ……。強いて言えば、『錬金術』みたいなものかしら?」

「れんきんじゅつ?」

「ええ。欲しいと思えば、手に入る。……私の魔力があれば、『石ころを価値あるものに変える』くらい、造作もないことよ」

ルナは悪気なく言った。

彼女にとっての「物質変換魔法」は、呼吸をするように自然なスキルなのだ。

だが、それを聞いた二人は盛大な勘違いをした。

(錬金術……つまり、株とか投資で資産を増やしてるってことね!? さすが富裕層!)

と、リーザ。

(『石ころを価値あるものに』……比喩表現ですね! 国の資源管理とか採掘権を持っているんだわ! さすが次期女王候補!)

と、キャルル。

「すごいですねぇルナさんは! 私もルナさんみたいに優雅な大人になりたいです!」

キャルルが尊敬の眼差しを向ける。

「あら、嬉しいわ。……じゃあ、湯上がりのフルーツ牛乳も、私が奢ってあげるわね」

「わーい! ごちそうさまです!」

三人はサウナを出て、腰に手を当てて冷たい牛乳を一気飲みした。

番台のおばちゃんに、ルナがまた一枚、「ピカピカの金貨」を渡す。

「はい、お釣りはいらないわ」

「あいよ! 毎度あり!」

誰も気づかない。

その金貨が、天魔窟の経済を揺るがす爆弾であることを。

そして、破滅の時(月末)が、すぐそこまで迫っていることを。