軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 5

【熱唱】カラオケボックスの惨劇と友情

「ごちそうさまでしたー! 美味しかったぁ!」

天魔窟ファミレスのレジ前。

お腹いっぱいになったリーザとキャルルが、満足げに腹をさすっていた。

会計は、ステーキや追加オーダーの山により、ファミレスとは思えない金額になっていた。

「お会計、金貨5枚と銀貨8枚になります」

店員(ゴブリン) が伝票を読み上げる。

リーザが一瞬ビクッとしたが、そこへルナが颯爽と進み出た。

「私が払うわ。釣りはいらないから、取っておいて」

ルナは 懐(マジックバッグ) から、ジャララッと無造作に金貨を取り出し、トレーに置いた。

キラリ。

照明を反射して、金貨が眩い輝きを放つ。

「あ、ありがとうございます! ……む?」

店員が金貨を手に取り、首をかしげた。

(……なんだこれ? 妙に『綺麗』だな……)

流通している金貨は、手垢がついたり、微細な傷があったりするのが普通だ。

だが、ルナが出した金貨は、まるで鋳造されたばかりのように傷一つなく、純度100%のような不自然な輝きを放っている。

しかも、デザインの彫り込みが、あまりにも精巧すぎた。

「何か問題でも?」

ルナが優雅に微笑む。

「い、いえ! 毎度ありがとうございます!」

店員は慌てて金貨をレジにしまい込んだ。

まあ、貴族様が持っている「未使用の新硬貨」なのだろう。そう自分を納得させたが、胸のざわつきは消えなかった。

「さあ、次はカラオケよ! 腹ごなしに歌うわよ!」

「お供します! 食後の運動ですね!」

何も知らない三人は、そのまま天魔窟の娯楽エリアにある「カラオケボックス・セイレーン」へと雪崩れ込んだ。

広いパーティールームに入った瞬間、リーザのスイッチが入った。

「見てなさい! これがプロのアイドルの喉よ!」

リーザがマイクを握る。

曲はもちろん、持ち歌の『Love & Money』だ。

『♪愛も富も一つの物~! どっちもちょーだい!』

「うまいっ! さすがリーザさん!」

キャルルがタンバリンを高速連打する。

プロの歌唱力と、強欲な歌詞のギャップ。リーザのリサイタルに、場が温まる。

「次は私です! アニソンいきます!」

キャルルがマイクを奪った。

選曲は、アップテンポな格闘アニメの主題歌だ。

『♪燃え上がれ闘志! 砕け鉄の 拳(コブシ) !』

キャルルのテンションが上がる。

サビに入ると、彼女は無意識にリズムを取り始め、自慢の『鉄芯入り安全靴』で床をステップした。

ダンッ! ガンッ! メキョッ!

「ああっ!? キャルルさん、床が! 床が凹んでるわよ!?」

リーザが叫ぶが、ゾーンに入ったキャルルには聞こえない。

彼女がステップを踏むたびに、防音床が悲鳴を上げ、亀裂が走っていく。

「ふふ、楽しそうね。……なら、私も一曲」

最後にマイクを持ったのはルナだ。

彼女は優雅に立ち上がり、『エルフの 古代魔術歌(オペラ) 』を選曲した。

『――♪アァァァァァァァ…………』

超高音域(ホイッスルボイス) 。

それはただの歌声ではない。魔力を乗せた「共鳴波」だ。

キィィィィィィィン……!!!

「み、耳がぁぁぁ!?」

「ガラスがぁぁぁ!?」

パリーンッ!!!

部屋中のグラスが砕け散り、カラオケのモニターがノイズを走らせて爆発した。

スピーカーから火花が散る。

「……あら? 壊れちゃったわ」

ルナがテヘッと舌を出す。

数分後。

店員(オーク) が真っ青な顔で伝票を持ってきた。

「お、お客様……機材の弁償代と、床の修繕費で……金貨20枚になります……」

「ええっ!? 20枚!?」

キャルルとリーザが顔面蒼白になる。

だが、ここでもルナが涼しい顔で動いた。

「ごめんなさいね、はしゃぎすぎちゃったわ。……これで足りるかしら?」

ルナは再び、あの「妙に綺麗な金貨」を山積みにした。

「は、はい! ありがとうございます!」

店員は金貨の輝きに目を奪われ、トラブルは金で解決された。

……かに見えた。

しかし、天魔窟の経済圏に、ルナが生み出した「不純物のない純金」が大量に流出したことは、確実に破滅へのカウントダウンを進めていた。

「ふぅ~! スッキリした! 次は温泉ね!」

「ルナさん太っ腹~! 一生ついていきます!」

無邪気に笑う三人。

その背後で、天魔窟の警備システムが、異常な金の純度を検知し始めていた。