作品タイトル不明
EP 3
【結成】家賃3万!? 夢のシェアハウス生活
「……へ? 『シェアハウス』、ですか?」
キャルルとリーザの声が重なった。
天魔窟マンションの管理事務所。
優雅に足を組んだ新オーナー、ルナ・シンフォニアは、悪魔的な(あるいは天使のような)微笑みを浮かべていた。
「ええ、そうよ。貴女たち、お金に困っているんでしょう?」
ルナは指先で空中に図面を投影した。
「このマンションの最上階に、オーナー専用の『4LDK・天然温泉露天風呂付きペントハウス』があるの。本来なら家賃は金貨50枚(50万円)クラスなんだけど……」
「ご、50枚!?」
リーザが白目を剥く。
「私、広い部屋に一人で住むのは寂しいのよね。だから、貴女たちと一緒に住もうと思って」
ルナはキャルルとリーザを交互に見つめた。
「3人で住めば、家賃は一人あたり……金貨3枚(3万円)でいいわ」
その瞬間、二人の脳内で激しい計算が始まった。
(き、金貨3枚……!?)
キャルルが素早く電卓(脳内)を叩く。
今の1Kの部屋が金貨6枚。
それが半額になり、しかも最上階のスイートに住める?
浮いた金貨3枚を毎月貯金すれば……結婚資金が倍のスピードで貯まる!
(――勝った! これで素敵な旦那様との新婚旅行はハワイ(異世界)確定よ!)
一方、リーザもまた、欲望の皮算用をしていた。
(3万円……! 今のボロアパートと変わらないけど、光熱費込み!? 露天風呂付き!?)
(浮いたお金で、半額じゃない『定価の肉』が買える……! 新しいステージ衣装も作れる……!)
二人の少女の瞳が、ギラリと輝いた。
そこに「見知らぬ他人と住むリスク」などという理性はない。「金」という絶対正義の前には些細な問題だ。
「やります!!」
リーザが食い気味に手を挙げた。
「私、掃除洗濯やります! アイドルだから愛想もいいです! だから住まわせて!」
「わ、私も契約します!」
キャルルも一歩前に出る。
「元近衛騎士候補なので、護衛も任せてください! 不審者はこの安全靴で排除しますから!」
「ふふ、決まりね」
ルナは満足げに契約書を取り出した。
「私はお金には困っていないけれど、『庶民の暮らし』というものに興味があったの。……楽しませて頂戴ね?」
「ええ、もちろん!」
「お任せください!」
サラサラとサインをする二人。
こうして、
「結婚資金を貯めたい堅実なウサギ」
「自転車操業の強欲アイドル」
「暇つぶしがしたい次期女王候補」
という、混ぜるな危険のトリオによる共同生活が幕を開けた。
「じゃあ、引っ越し祝いに行きましょうか」
ルナが立ち上がり、 財布(マジックバッグ) を持った。
「私の奢りで、『女子会』よ」
「「ゴチになりますッ!!」」
現金な二人の返事が、管理事務所に響き渡った。