軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

EP 2

【驚愕】新オーナーは次期エルフ女王候補!?

「ふふ~ん♪ 地竜の素材が高く売れたから、これで更新料を払ってもお釣りが来るわね」

天魔窟ダンジョンの地上エリア。

キャルルは、管理事務所へと向かう道をスキップしていた。

彼女が住む「天魔窟マンション」は、セキュリティ万全、ダンジョン直結、温泉付きという好条件の物件だ。

その分、家賃と更新料は決して安くない。

「オーナーのキュルリンさん、元気かなぁ。また人参クッキー持っていこうっと」

前オーナーのキュルリンは、妖精種族で、話が合う良い管理人だった。

キャルルは「人参柄のハンカチ」で汗を拭きつつ、事務所のドアを開けた。

「こんにちは~! 203号室のキャルルです! 契約更新に来ま……」

言葉が止まった。

事務所の空気が、ガラリと変わっていたからだ。

以前はファンシーな雑貨で溢れていた室内が、今は高級なアンティーク家具で統一され、高貴な花の香りが漂っている。

そして、デスクの奥には――。

「あら。いらっしゃい」

優雅に紅茶を嗜む、絶世の美女が座っていた。

透き通るような金髪、長い耳、そして宝石のような瞳。

全身から溢れ出る魔力と気品は、ただの管理人ではないことを雄弁に物語っている。

「え……っと。あの、どちら様ですか? キュルリンさんは?」

キャルルが恐る恐る尋ねる。

美女はカップをコトクリと置くと、優雅に微笑んだ。

「キュルリン? ああ、あの子なら旅に出たわよ」

「は、旅!?」

「『ダンジョン運営も飽きたし、温泉巡りしてくる~! 後はよろしくねルナちゃん!』って、権利書を置いていったわ」

「えええええええっ!?」

キャルルのうさ耳がピーンと直立した。

あのマイペースなオーナーらしいと言えばらしいが、あまりにも唐突すぎる。

「というわけで、今日からここ『天魔窟』のオーナー兼管理人は、私、ルナ・シンフォニアが務めるわ。よろしくね、可愛いうさぎさん?」

「ル、ルナ・シンフォニア……!?」

キャルルは息を呑んだ。

その名は、エルフ族の次期女王候補として有名な、あの「ルナ」だ。

なぜそんなVIPが、こんな魔窟の管理人に?

「暇つぶしよ。……それに、ここには面白い人たちが集まっていると聞いたから」

ルナが悪戯っぽくウインクする。

キャルルは冷や汗をかいた。

(や、やばい……。この人、絶対タダモノじゃない。家賃の値上げとか言われたらどうしよう……!)

堅実なキャルルが、財布(貯金通帳)を握りしめて警戒した、その時だった。

バンッ!!

事務所のドアが勢いよく開け放たれた。

「頼むわ管理人さぁぁぁん!! 宿賃を! 宿賃をまけてぇぇぇ!!」

転がり込んできたのは、ボロボロの衣装を纏った少女――アイドル・リーザだった。

「今月の売上が! スーパーの半額セールで買いすぎちゃって! あと衣装代と、新曲のレッスン代でスッカラカンなのよぉぉ!」

リーザはルナがいることにも気づかず、カウンターに額を擦り付けて土下座した。

「お願いします! 廊下でいいから! いや、屋根裏でもいいから安く住まわせてぇぇ!」

「……あらあら」

ルナは驚くどころか、面白そうな玩具を見つけた子供のような顔をした。

そして、呆然としているキャルルと、土下座するリーザを交互に見比べる。

「ふふ……。面白くなってきたわね」

ルナがパンと手を叩いた。

「ねえ、貴女たち。……お金に困っているなら、『良い提案』があるのだけど?」

その提案が、キャルルの平穏な日常を崩壊させる引き金になるとは、まだ誰も知らなかった。