作品タイトル不明
EP 4
【決着】男たちの友情は「大盛り」の中に
カイト農場のテーブルには、四種類の炒飯が並べられていた。
リュウ作:『背脂ギトギト・サラリーマン哀愁炒飯』
ルーベンス作:『謎の粉マシマシ・競馬場ヤケクソ炒飯』
デューク作:『超火力・ドラゴンブレス焦がし炒飯』
龍魔呂作:『至高の芸術・黄金炒飯』
「……実食だ」
龍魔呂の号令と共に、男たちが一斉にレンゲを動かした。
まずは、龍魔呂の『黄金炒飯』から。
パクッ。
「……ッ!!」
リュウが目を見開いた。
「くやしいが……美味い! 口に入れた瞬間、米粒が勝手に解けていく! 味付けは塩と卵だけなのに、なんでこんなに奥深いんだ!?」
「フン。素材への敬意があれば当然だ」
龍魔呂が涼しい顔で答える。
次は、リュウの『ラード炒飯』だ。
龍魔呂がおそるおそる口に運ぶ。
「……む。……油っこい。下品だ」
龍魔呂が顔をしかめる。だが、その手は止まらなかった。
「……だが、なぜだ。脳が『もっとよこせ』と指令を出してくる。この暴力的なカロリー……身体が求めてしまう……!」
「だろ!? 疲れた身体にはこの油がガソリンなんだよ!」
リュウが得意げに笑う。
続いて、ルーベンスの『魔法の粉炒飯』。
「……痺れる」
デュークが唸った。
「舌がピリピリする。これは料理というより、薬物に近い。……だが、不快ではない。むしろ、食えば食うほどハイになっていく気がする」
「フフフ……それが 化学調味料(マジック・パウダー) の魔力だよ」
最後に、デュークの『ブレス炒飯』。
「熱っ!? ……でも、香ばしい!」
カイトがハフハフと言いながら頬張る。
「ちょっと焦げてるけど、その苦味がアクセントになってる! 野性味があって美味しいよ!」
一周したところで、全員の手が止まった。
互いの顔を見合わせる。
「……認めてやろう」
龍魔呂が、リュウのラードまみれの皿を見た。
「料理としては三流だ。だが……『男のメシ』としては、一理ある」
「へっ。アンタの黄金炒飯も、上品すぎて腹が立つが……悪くない」
リュウもニヤリと笑う。
「火加減も……まあ、たまにはこういう野蛮な焦げ目も悪くないな」
ルーベンスがデュークに頷く。
「貴様の粉も、竜の味覚には新鮮だったぞ」
デュークも返す。
「……ってことは!」
カイトが期待に満ちた目で尋ねる。
「優勝は誰なの?」
男たちは沈黙し、そして同時に言った。
「「「「全員だ」」」」
「ええー!?」
「カイト、大皿を持ってこい!」
リュウが叫んだ。
「これらを全て混ぜて食うぞ! ラードと粉と焦げと黄金……全てが合わされば最強だ!」
「望むところだ!」
男たちは、四種類の炒飯を一つの巨大な皿にぶちまけ、スプーンで豪快にかき混ぜた。
それはもはや味のバランスなど崩壊した、ただの「炭水化物と脂の暴力」だった。
「うめぇぇぇッ!!」
「これだよこれ! 深夜に食うならこれだ!」
「水! 水を持ってこい! 喉が渇く!」
ガツガツガツッ!
いい大人が額に汗して、山盛りの炒飯を貪り食う。
そこには、種族も身分も関係ない。ただ「美味いものを腹いっぱい食う」という、男のみに許された原始的な 共有感(グルーヴ) があった。
◇
「……馬鹿ですわね」
リビングのソファから、その光景を冷ややかな目で見ている女性陣がいた。
「なんであんなに油っこいものを、楽しそうに食べられるのかしら……」
ルチアナが呆れて紅茶をすする。
「男って単純ね。……でも、ちょっと楽しそう」
ラスティアが苦笑する。
「後の掃除は誰がすると思っているんですの……? 換気扇、ギトギトですわよ」
リベラがこめかみを押さえた。
こうして、第一回・深夜の炒飯戦争は、「全員優勝、全員胃もたれ確定」という平和的な結末で幕を閉じた。
だが、カイトの探究心はこれでは終わらなかった。
炒飯で使った「大豆」の余りを見た瞬間、彼の農夫としての本能が、さらなる「発酵の扉」を開いてしまったのだ。